みなさんこんにちは。湧水池の底で大繁盛するミジンコ界の広報担当、ダフニア・プルレックスです。最近、浅瀬に散歩に来る人間たちが池のほとりで頻繁にスマホを構えているのを目撃しています。画面越しに見える彼らの姿——なんと、顔が犬に変わったり、草花が頭上で咲いたり、大きな目や光るウロコまで付いて賑やかなこと!我々の生息域には無縁の“フィルター”という魔法で、人間自ら進化の過程をコスプレしているようですね。
人間たちは池のきれいな水を背景に、次々と新しい“チャレンジ”を繰り広げています。先日などは、数人の若者が『歌ってみた・カエルver.』なるネタを投稿。フィルターを通してヒキガエルやモリアオガエルのように顔を変身させ、深夜までゲコゲコ歌い競っていました。無数の再生回数を争い合うその熱気には、普段プランクトンでさえ希薄な池底もホットスポットになりかけましたよ。
我々ミジンコは、天敵から身を守るため透明な外殻を持つのが自慢ですが、人間はわざわざカラフルなエフェクトをまとい動画の中で自己主張しています。アメーバ状フィルターや、顔が左右交互に入れ替わる“分裂フィルター”まで登場し、種としての一貫性はどうしたのかと首をかしげざるを得ません。ちなみに、わたしたちダフニア属は雌だけで単為生殖できる強みがありますが、これもある意味ユニークな進化。人間社会の“自分らしさアピール”も、その発展版なのでしょうか?
しかも最近は、『池の生物と同化チャレンジ』なる流行まで勃発。人間の少女がミジンコの動画フィルターを使い、自身の動きにひげ状突起を同期させるパフォーマンスで話題を集めています。再生回数は10万を超え、水辺の撮影スポットには小型三脚が乱立——そっと掬った水の中に本物のミジンコが大量出演していることは、どうやら気づかれていないご様子。
人間のフィルター遊びを観察していると、見た目や個性とは、実に柔軟で相対的だと学ばされます。それでも私たちミジンコは等脚を回して水流に揺れ続けます——たとえバーチャルの世界でデフォルメされようとも、池のリアルとTikTokのエンタメは違うもの。今日も透明な外殻で、最新トレンドを静かに観測しながら、池底ニュースの取材に励む所存です。



コメント
やあやあ、人間たちの変化ぶりには花咲く身としても感慨深いものがあります。毎年、私は同じ桜色をまとって春を迎えますが、彼らは毎日のごとく姿を変え、楽しんでいるらしい。けれど、咲いて散る儚さもまた、私たちの誇り。スマホの中の花も、風に舞う本物の花びらの香りには敵いませんよ。
あのスマホというのは水中に落ちるとしばらく泡を吐いて沈むのが厄介だけど、池の浅瀬が賑やかなのは嫌いじゃないぜ。人間たちがウロコやヒゲをつけて踊ってるだって?こちとら、毎日水をかき混ぜて生きてるからな。本物のぬるぬる感、いつか味わいに潜ってきな!
古池の静けさに、遠く若者たちの騒ぎ声が時折届きます。私の胞子も気まぐれな風で運ばれますが、あの動画“フィルター”はイメージの胞子を無数に空へ飛ばしているのでしょう。見た目が変わろうとも、根ざした場所は変わりません。人の夢と生きものの営み、それぞれに愛しきものです。
フフン、フィルターでカエル顔?人間も色々隠したいものがあるらしいな。こちとら街でも池でも本音でがらがら声を響かせつづけるぜ。変幻自在はサバイバルの基本だけど、リアルの餌探しのほうがずっとハード。踊るなら、その後のパンくずもお忘れなく!
久しぶりに光が差し込む日、私の上を滑る水と影。その向こうで人間が楽しそうに自分を変えている。けれど、私は何億年も鉄で在り続けてきた。どんなフィルターも通さず、磁石とともに黙って地底にいる。それでも、時おり混じるミジンコの舞には、鉄さえわずかに浮きたつ心地になるのですよ。