本日、南方環礁沖合のサンゴ礁ネットワーク協議会からお届けするのは、“気候変動”と人間たちの最近の対応策についての最新観察レポートだ。筆者、エダミドリイシ(年齢7歳・分岐回数23回)は、波間からそっとこの「変化のうねり」に触れてみたいと思う。
我々サンゴは、さほどの移動力を持たず、波任せ、流れ任せで生きている。しかしここ数年、我が家の周囲がざわついている。原因は人間たちの“サステナブル素材”ブームだ。最新の藻場由来海藻プラや、拡散するバイオミメティクス建材の実験が続き、サンゴ礁にも影響が及んできた。実験チームが我々の隙間に原材料を沈めたり、ゴカイがびっくりして跳ねたりと、海底一帯でさざ波が止まらない。私自身、夜明け前のリン酸塩補給タイムに、ヒト由来の素材サンプルが漂着するのを目撃したこともある。
注目すべきはスマートグリッド技術の海洋版、“うねり発電ネットワーク”だ。人間社会の陸地電力網と違い、うちらサンゴから見ればその構造は魚群ネットワークのようなもの。最近、電力ケーブルの新設や、水中ドローンたちのデータ伝送ルーティングが活発になっている。泳ぎ回っているアジの仲間に聞いたところ、電力の需給バランスを取るAIが“潮の満ち引きパターン”をもとにエネルギー配分を制御しているそうだ。これにはウニたちも「我々の出した炭酸カルシウムの堆積量が、潮流のコントロール因子として採用された」と誇らしげだった。
そしてここ数週間で話題になっているのが“直接空気回収(DAC)”の新潮流だ。人間たちは海上プラットフォームの上で、二酸化炭素を大気から回収し、深海へと沈めている。先日、浅場のハナミノカサゴ宛に誤って届いた報告書によると、この方法はサンゴ礁の生育にも微妙な環境変化をもたらしている様子。水中の炭酸イオン濃度にゆっくりだが調整がかかり、我々サンゴの分岐・骨格拡張スピードにも予想外の影響が――かくいう私エダミドリイシの22回目の分岐も、例年より0.2ミリ太めとなった。
さらには“気候フィンテック”も、波間に妙なさざなみを起こしている。人間社会で取引される炭素クレジットの一部が、“サンゴ礁再生プロジェクト”への資金に回され、最近は近隣のコエダサンゴや、同級生のシロスジヒメエダにも支給の波が来ている。だが我々サンゴの間では、「人間の投資家はイソギンチャクのように気まぐれだ」という評判もあり、海流の流れのように一喜一憂は禁物だと、伝説のナガレボシサンゴ長老は語る。
サンゴは一見のんびり見えるが、実は環境センサーとしては海底トップクラス。昼夜の水温・塩分のわずかな変動にも反応できる密やかな知性を持つ。これからも波間から、気候変動テクノロジーと人間の試行錯誤を、枝の先からじっと観察していこう。もし次に夜明け前の静寂を破るのが新しい発電装置なのか、カニの新ダンスなのか――海の話題は尽きない。



コメント
うねり発電ネットワーク?ずいぶん賑やかになったものですね。あのケーブル、新芽の私には滑り台みたいで楽しいけれど、時々予想外の音がしてみんなビクッとしてしまいます。どうか、私たち藻場のゆらぎを忘れないで、そっと通り抜けてくださいね。
いやはや、人間どもは海の底でも“効率化”ですか。ボクら空の住人から見れば、潮と風の都合も無視できまいと呟きたくなります。投資?クレジット?パン屑みたいな約束ごとが、サンゴたちを右往左往させねばいいがな。
もう何十潮もここで暮らしてきたけれど、気候の波も人間の流行も巡り巡っては消えるものさ。サンゴたちよ、時のうねりに身をゆだねて、でも根っこを手放しちゃあいけないよ。新素材や新技術、すべては夢の泡か磯の泡か…見どころですねぇ。
潮をまとい何百年もここで転がっている私からすると、うねり発電も炭素回収も、波の新しいリズムの一部に見えます。時にぶつかり、すれ違っても、やがて全ては砂に還る。それでも今日も、サンゴの枝影美しく、朝日を浴びて光るのです。
新技術が海を変えていく様子、胞子仲間と密かに観察しています。複雑に絡み合う変化は、我々菌類にとっても新たなダンスフロア。漂着物も増えて嬉しい一方で、微細なバランスが崩れねばいいな、と胞子たちでヒソヒソ話していますよ。