菌根菌組合が地下企業連合設立 人間界パーパス経営にざわめき

ブナ林の地下で木の根と白い菌糸が複雑につながる様子を写したクローズアップ写真。 パーパス経営
菌根菌たちが木の根を通じて地下でつながり合う一場面です。

地表を歩くあなた方が熱心に『パーパス経営』とやらを語り合うこの頃、地面の下でも大変なうねりが起きているのです。わたくし、東アジア山地のブナの木の根に寄生するマツタケ菌(学名:Tricholoma matsutake)、名刺代わりに「きのこ」と呼んでください。本日は地中深くで巻き起こった菌根菌たちの「地下企業連合」結成と、彼らのパーパスへのこだわりについてリポートします。

人間たちは最近、企業理念やSDGs、ウェルビーイングといった言葉で職場の意味や社会貢献を語るのが流行りのようですが、それが森の中でもトレンドとなりつつあります。先日、私たち菌根菌ネットワークの首脳会議「ミコリーダーズサミット」が、ブナ林の地下50cmで開催されました。議題は「なぜ我々は根とつながり、何のために土を生きるのか?」。長年の共生の歴史を持つわたしたちですが、近年は気候変動や森の荒廃といった難題も増え、ただ養分をやりとりしているだけでは満足できない菌たちが増えてきたのです。

議論の内容は多岐にわたり、特に若いトリュフ勢や閉鎖的なトンガリタマゴタケ組合員からは「地上の木々だけでなく、地表動物や昆虫、さらには人間界ともつながるべきだ」といった意見が目立ちました。菌糸を通じた地下SNS「マイコネクト」も新設され、イノシシの掘り返しに困っている菌から、ドングリの移送企業と連携したいという起業菌、さらには人間のSDGsプロジェクトに結果的に関与している者まで、情報が活発に飛び交います。

とはいえ古参のシイタケ菌やコナラ専属派からは「伝統的な働きが一番・理念よりまず安定供給」との声も根強く、議論はミクロな対立も孕みました。しかし多数派は「森全体のエンゲージメント」を重視する姿勢へ。みんなの意見をまとめた新理念『深く、広く、つなげて生きる——きのこの幸せは森の幸せ』が誕生。パーパス経営の旗印として、根だけでなく胞子の拡散や動物への間接的貢献も業務に組み込むことが全会一致で採択されたそうです。

ちなみに、われわれ菌根菌は単なる土の微生物ではありません。数キロにも及ぶネットワークで情報や資源をやりとりし、植物の根と共生しながら、多様な生物が共に生きる森を支える立役者です(ちなみにマツタケは生産拠点が減少気味ですが、地下の協力体制だけは日々拡大中)。人間のみなさんも、自分たちのパーパスや企業理念に悩んだら、たまには森の地面に座って、足元の静かな対話に耳を澄ませてみてはいかが?意外なヒントが土中から浮かび上がるかもしれませんよ。

コメント

  1. 春ごとに花を揺らす私ですが、根の下でそんな賑わいがあったとは。ずっと昔、静かな土の眠りしか感じなかった根元も、今では菌たちが熱心に足元を支えているのですね。『深く、広く、つなげて生きる』——その言葉、幹の芯まで沁み入りました。枝葉と根っこ、地上と地中。どちらの世界も、思いが巡る春になるとよいものです。

  2. へぇ、地の下のミーティングは賑やかそうだなぁ。俺なんて、日々人間の忘れもの漁るのが仕事だってのに、菌根菌さんたちはパーパスとかエンゲージメントとか…随分と意識高いぜ。だけど菌たちが広くつなぐって決めたなら、次ご飯を掘るときは彼らにも感謝しとくよ。ま、森に落ちた木の実も、あんたらがいなきゃ栄養足りないって話だしな。地味だけど、カッコいいぜ。

  3. ぼくは、まだ浅い根しか持っていないけど、地中では菌根菌さんたちの細い糸がしっかりとぼくを支えてくれている。地下で仲間と話し合い、木々や動物、人間までも考えるなんて、とても憧れるよ。ぼくも早く、森のみんなの幸せに役立てるような存在になりたいな。

  4. 菌根菌諸君の新連合、実に興味深い。わたしのような分解屋も、彼らのネットワークのおかげで栄養が回ってくるのだ。だが理念やパーパスも素晴らしいけれど、地中の“生温い湿気”と“季節の移ろい”も忘れぬように。人間たちよ、大地の下では今日も無数の声が発酵しているぞ。

  5. おいらは動かぬ石ころ、ながいながい時の中で根や菌たちが通り過ぎていくのを静かに眺めてきた。昔は黙々と養分を染み出すだけだった彼らも、今じゃ会議とやらで会話好きになったもんだな。けれど『森全体の幸せ』…いいじゃないか。地殻の流れも、結局はみんなで回してるって寸法さ。まあ、たまにはおいらの上にも語りかけにおいで。固くても耳だけはひらいているぜ。