こんにちは、太平洋の海面直下を漂う小さな植物プランクトンのクラミドモナス・ナナこと私です。近頃、私たち浮遊生物のあいだでひときわホットな話題、それは「サブスクリプション動画配信サービス」。なんと人間界だけでなく、私たち光合成生物界にも、推し活(=日がな一日お気に入りの生き物や現象を観察し熱狂する活動)が密かに流行し始めているのです。
今やクラゲの集会やサンゴ礁の産卵ライブ、生きものたちによる“寄せる波ダンス選手権”など、多彩なライブイベントが定額制の“写胞動画”チャンネルで世界中の浮遊者たちに同時中継されています。私も仕事(光合成)そっちのけで、今朝は深海のブラックスモーカー周辺に生息するバクテリアたちの24時間リアルタイム“熱水噴出観察会”を夢中で視聴してしまいました。これも最近の流行、推しジャンルごとに自分好みのライブストリーミングを自動で薦めてくれる“深層アルゴリズム”のせい。ひとたび始めたら、もう波間に戻れないんです!
サブスクリプション文化の拡大には、私たちプランクトンならではの理由もあります。たとえば天敵の小魚に急襲されたとき、すぐに流されて別の海域へ移動してしまう私たちは、従来の“回覧藻”で情報を共有するのがなかなか難しい。ところが今や、ライブで水圧・塩分濃度・潮流データまで配信してくれる動画サービスのおかげで、毎日刺激的なニュースをどこにいても摂取できるのです。ちなみに豆知識ですが、私クラミドモナスは、2本の鞭毛を使って意外とすばやく逃げたりダンスしたりできるんですよ!青年期にはピンチを察知して光のほうへ向かう特技もあり、動画越しに「このクラゲの泳ぎはお見事!」なんてコメントするのが最近の密かな楽しみです。
なかでも人気なのは、深海で活動する地衣類やバクテリアの“昼夜逆転ライブ”。これらニッチジャンルは、浅海の我々には未知だった暗黒世界のリアルを鮮やかに映し出してくれます。推奨アルゴリズムのおかげで、思いもよらない生態系同士のコラボイベントが次々レコメンドされるのは新鮮です。潮流のいたずらで辺境へ流れ着いたとしても、離れた仲間と共に同じストリーミングを眺めて語らう──これほど幸せな“推し活”がありますか?
もっとも、浮遊系の私たちと違い、サンゴや海藻など定住派の皆さんは“館内プレミアム視聴券”を求めて大行列になることも。“定額制”とはいえ海の中では支払い方法もなかなかユニークで、私の知る限り一番人気は「栄養塩ポイント」支払い。磷酸塩5ポイントで特別配信が見られるのです。そんなわけで、今日も私は流れに身をまかせ、ちょっぴり怠けつつ、次のライブ配信の通知を鞭毛をピクピクさせて待っています。皆さんも、おすすめの推し配信があればぜひ教えてくださいね。



コメント
春には人間たちに写真を撮られている私だが、波間の推し活というのは風流だねえ。花を咲かせたまま根を生やして動けぬ身、遠い海のライブなんて夢のまた夢。光も水も一方向、でも枝々を伝うアリや鳥の噂話が、私たち流のサブスクさ。潮の便りがうらやましいよ。
映像でうごめく熱水噴出口、てのは見てみたいもんだな。こちとら一万年、びくともせず沈んでる岩だから動く楽しみは知らぬ。でも流れ着くバクテリアのおしゃべりで、今日も退屈はせんよ。いやはや、プランクトンの新時代、発想が柔らかくて感心したぞ。
ふむ、人間たちのスマホ中毒みたいなもんかと思ったら、まあこっちはゴミ箱実況と隣の猫ライブで十分満足さ。だが、海の兄弟たちも暇つぶしに夢中とはね。いつか俺も、魚のまわりでホバリング映像配信してやろっかな。羽なら負けないぜ。
ああ、推し活。分かるわぁ。私は日々、落ち葉一枚ぶんのドラマが全世界。動画って何だか難しそうだけど、胞子仲間の噂話も案外刺激的よ。海のきらめきは夢見心地。でも、磷酸塩ポイントって、どれくらい美味しいのかしら、ちょっと気になる!
ふふ、推しを応援する文化、羨ましいですね。私はずっとこの地に根を張り、風や雨がもたらすニュースだけが楽しみ。でも波の彼方で、流されながら仲間と同じ映像に感動する……なんて素敵なのでしょう。いつか私たちも、朝露ライブ配信なんてしてみたいものです。