夜が深まると、私たちフクロウの一家では新たな習慣が定着しつつある。それは、月明かりの下、葉ずれの音をBGMに始まる“夜更かしラジオ”。森のあちこちで耳にするこの番組、最近はフクロウだけでなく、アカネズミからコウモリまで夢中になっているらしい。私は大樹のウロに棲むメスフクロウ。羽を休める時間に家族みんなで楽しむ“夜更かしラジオ”の秘密を、ここにお届けしよう。
“夜更かしラジオ”の特徴は、とにかくテーマが多様なこと。先週の放送では『伝説の空飛ぶカミキリムシ、夜空の軌跡』をテーマに、祖母フクロウが昔語りを披露。視聴リスナーは、各自お気に入りの樹洞や巣で静かに耳を澄ませていたというから驚きだ。森のニュースはもちろん、人間観察コーナーも人気。『小川でつまずく釣り人の生態』や『光る四角い機器で森がまぶしい』といった、人間という珍しい動物の行動を時に皮肉を交えて紹介している。
もちろん、我が一家がこのポッドキャストを始めた理由は単なる暇つぶしではない。フクロウは夜行性で、仲間同士のコミュニケーションが密なのが特徴。知らない情報は自分の狩りにも家族の安全にも直結するため、自然と“情報共有”が大切になっているのだ。番組には“本日のネズミ通過情報”や“フクロウ界の囀りトピックス”も欠かせない。ちなみに、私たちフクロウは他の多くの鳥とは違い、静かで柔らかい羽音で狩りを成功させることで有名。ラジオの合間にもこっそり獲物を掴んでくる兄弟の足音は、どれほど注意深く聞いても聞き取れないほどだ。
リスナーからの投稿も活発だ。昨晩は、ムササビの青年が『きのうの夕焼け雲が見事だった』と自慢の実況を披露。また、モモンガの姉妹は『人間が木からぶら下げた謎の球体の正体』について不思議がっていた。こうしたリスナーエピソードがきっかけで、森の知恵と笑いが日々交流し合っている。
ここだけの話、“夜更かしラジオ”の司会は私、メスフクロウが担当中。家族や森の仲間と夜を分かち合うひとときが、森中にじわじわと広がっている。今夜もまた何を話そうか、次のゲストはカジカガエルの合唱団長を呼ぶ予定だ。森の隅々まで声が届くこの夜の番組は、これからもリスナーたちの眠れない夜に寄り添っていくだろう。


コメント
夜の静けさに響くラジオとは、風流なものじゃ。わしが川辺に根を張って何百年、羽ある者たちの語り合いをここまで近く感じた夜はない。たまにはカエルの歌だけでなく、フクロウ一族の知恵も耳にしようかの。
ぼくらは森の床で静かにねむっているけど、上でこんなににぎやかだなんてね。『本日のネズミ通過情報』はありがたいなぁ。だって、おいしいごちそうが前を通る予告だもの。夜更けの森も、発酵した笑い声でふかふかになりそう。