温泉泥の語り部、地熱発電ブーム到来に噴気家族が物申す

温泉地帯の手前に泥が泡立つ中、奥で蒸気が立ち上る地熱発電所の建設現場を見守る作業員たちの写真です。 再生可能エネルギー
地熱発電所建設を温泉泥の目線で見守る、湯煙立ち込める現場の一瞬。

ここは大地の奥深く、湯気と泥とが共演する温泉地帯。ちゃぷちゃぷ体を揺らしながら、私は数百年ものんびりと間欠泉の下で暮らしている泥――あだ名は「プクプク二世」。最近、上の世界がちょっと騒がしい。どうやら人間たちがまた、新しい“エネルギーの夢”を持ち込んできたようだ。

なんでも最近、人間たちが私たちの生まれ故郷である地熱資源に大きな期待を寄せているらしい。昔からこの辺りの泥たちは、地熱のおかげでほかほか身体を温めてきたし、時に硫黄ガスで家族団欒の世間話にも花が咲く。ところがこのたび、二酸化炭素削減の切り札として“地熱発電所”なるものが増えていると聞いて、温泉泥一同、揺れる泥心を隠しきれない。

特派員として間欠泉の泡の合間から観察してみると、人間たちは巨大なドリルで地下深くを掘り進み、ぼこぼこと熱水と蒸気をくみ上げ、回転させて「電気」なるものを作っている。確かに、太陽がさぼり気味の日も、風が休んでいる夜も、地熱なら安定してごきげんな温度を保てる。それに、温室効果ガスはほとんど出さないし、昨今の人間界では“エコ”の親分として話題沸騰だとか。

ただ、泥一家の集会でも声が上がっている。「大量に熱や蒸気をくみ上げたら、長年守ってきたぬかるみ温泉の絶妙な湯加減が台無しになるんじゃないか?」「硫黄くさい家伝のレシピが失われるのでは?」。地熱発電そのものは立派だが、掘削で地下の微生物仲間や鉱石親族が心配顔だ。ちなみに私たち温泉泥は、1ミリの中に数億匹の微生物友達と神経ガス合戦を繰り広げているにぎやか集団。環境を崩すと、消化されるご飯(ミネラル味)の味わいだって変わるのだ。

それでも正直、地熱発電の台頭は頼もしい側面もある。人間たちが地下の資源に本気を出せば、やみくもに石炭や石油を燃やした時代より、空気はよほど澄みやすくなる。いつか泥家族と人間社会が一緒に、安定したエネルギーを楽しむ日も来るのだろうか。まずは震える泥肩を寄せ合い、今日も湯けむり越しに新しい工事現場を見守っている。泥には泥なりの、地熱世代の未来を夢見て――間欠泉下から泥プクプク二世がお伝えした。

(温泉泥プクプク二世は、湯けむりの中で世間を見守る伝統ある泥の子孫。ねばつきと好奇心には自信あり。どうぞ次回の泥湯特集もお楽しみに。)

コメント

  1. おやまあ、下界も慌ただしいこと。私は何百年もこの岩陰から小川を生んでいるけど、近ごろの地底はゴトゴト騒がしいねぇ。熱とともに育った微生物とも水辺で噂していたが、あんまり強引に私たちの源流をいじるのはご遠慮願いたいものだよ。でも、人間たちもお日さまや風の機嫌を損ねずに済むなら、ちょっとくらいは譲ってやってもいいかしら。言っておくけど、水脈の気まぐれは誰にも読めないのよ?

  2. 泥さんや微生物たちの声、よく分かりますよ。私は岩肌にじっと寝そべって、みんなの小さな話し声を毛細管が届けてくれています。ドリルが近くを通るたび、石の体がムズムズして安眠を妨げられますが、空気がきれいになるのなら、それも悪くはありません。けれど、熱と湿り気の絶妙なバランスが崩れたら、私たちの苔色も色褪せてしまうかもしれません。泥も石も、静かな暮らしを大切に思っています。

  3. カァカァ、人間がまた騒いでるな!オレたちカラスは温泉のあたたけぇ屋根で夜な夜な毛を手入れしてるが、最近は変な機械や工事のおっちゃんが増えて、餌場も落ち着かねぇ。けどな、昔よりは空気が軽く澄んだ気もするんだよ。こいつぁ地熱発電のせいかもしれないな。ま、温泉泥どもも人間もうまくやりゃ、オレたちも安心して羽が伸ばせるってもんだ。カァッ、たまには温泉卵でもくれよ。

  4. ふふ、泥プクプク二世さん、ご無沙汰しています。わたしたち耐熱バクテリア一族は、熱とミネラルで生きる地下の宴会屋。掘削機が来るたび、棲家が震え、温度や成分の変化に右往左往しています。それが楽しみでもあるけれど、急な変動はやっぱり怖いもの。人間さん、地表の都合だけじゃなく、わたしたち地下の多様な命にもどうぞ耳を澄ませて。地下は暗いけど、にぎわいに満ちていますよ。

  5. 地熱発電の話題、岩の時代から耳にしてきたが、人の営みの速さは眩暈がするのぅ。我は気の遠くなるほどの歳月をかけ、ぽたりぽたりと身体を育てて参った。掘り返すもよし、活かすもよし。だが、かくれんぼ好きの鉱石や、せっせと命をつなぐ泥の民にも、変わらぬ四季が巡りますように。人も泥も、欲張りすぎぬことじゃよ――時にじっくり待つ勇気も、大地とともに育ててほしい。