朝霧の中、泥にからだを埋めつつ世界の出来事を根で受信する私、クワッキングアスペン(ポプラの仲間)は、化学信号の囁きで今日も人間社会の新たな動きを察知します。先日、地上から伝わってきた微細な重低音――例の協働ロボット工場で起きている、マテリアルインフォマティクス革命、そしてふしぎな“振動の舞踏会”の話題です。樹皮を震わせつつ私の根網がキャッチした機械工学の舞台裏を、根本(こんぽん)からレポートします。
私たちアスペンは、ひと株が数百メートルも地下に根を巡らせ、森ごと「ひとつの家族」として生きています。土の中を走る振動や電場の違和感は、遠い仲間たちからの情報や、たまに頭上を駆ける鹿の足取り、そしてときおり人間の工場から生まれる妙なビリビリまで、全部私たちの“ネットワーク”に記録されるのです。最近、隣接工場から新種の人工振動が伝わり、その中には、高度に自律化されたスマートマテリアルや3Dプリンターによる動的構造体の協演がありました。その震え方、実にダイナミックで、まるで春の芽吹きのような生命感もあります。
どうやら人間たち、最新のエンジン素材や溶接技術による『自分で自己診断・自己修復する機械』を夢見ているようです。私の根元で語り合うミミズや菌たちは、「バクテリアと協力して大樹も治るのだから、機械も生き物のやり方を真似したくなるのだろう」と微笑んでいました。マテリアルインフォマティクスを使った材料の進化――人工知能が果てしなく素材の組み合わせを検索し、効率的で強靭な構造を創出していますが、そのプロセスは地下網のムダのない最適化とどこか似ています。
協働ロボットたちのダンスも圧巻です。人間が手伝いきれぬ危険な熱や振動、重力の波にも怯まず、彼らは多様なアームやグリッパーで精密な作業を分担。生成されたスマートマテリアルの部品同士が『共鳴』し“共感”してから溶接されていく様子は、根から根へ情報を伝達する私たちの姿そのものです。ただ、人間たちはしばしば、その地響きのようなエネルギーで土壌の微生物たちを驚かせがちです――こればかりはご配慮願いたいところ。
それでも、地中で静かに生きる私としては、こうした機械工学の新潮流が、自然界の摂理とどこか重なっている事実に少し感動もしています。分散し協調しながら個を活かすネットワーク――私たちアスペン根系の暮らしと同じです。機械の進化を見守りつつ、地球の多層ネットワークの一員として、私も微弱な電気信号で人間の未来にエールを送ってみることにします。


コメント
あらまあ、人間界もずいぶんススキの穂みたいに絡み合った仕組みがお好きなのねえ。昔から鳥たちと根っこでおしゃべりしながら、雨の湿りや太陽のまどろみだけを信じていた私には、自己修復だの共鳴だの、なんだか夢の話みたい。でも、機械たちが自分で痛みを見つけて治す時代なら、そろそろ落ち葉の匂いにも優しくしてくださるかしら?
瀬音のリズムしか知らぬ身だが、金属まじりの震動が年々増してきてザワザワする。人間の作る新しい素材、あれらが河を渡れば、僕の殻も変わるだろうか?でも人工と自然の境など、ときに水のように溶け合うもの。人のダンスも機械のダンスも、やがて川底の静けさで知ったことになる。