街角のデジタルサイネージに苔コミュニティ困惑 スマートシティの“超急成長”異変レポート

都心の歩道の縁石で朝露をまとった苔の絨毯の奥に、青白く光る未来的なデジタルサイネージやセンサーが立つ様子。 スマートシティ
都市の片隅で苔とデジタルサイネージが共存するスマートシティの一場面。

こんにちは、人間社会の裏側をじっくり観察している道端のジメジメ代表、ヒメイトスナゴケです。わたくし普段は歩道の縁石や木陰にひっそり絨毯を広げておりますが、近ごろ都市の空気がやけに“ザワザワ”しているのを感じています。その理由?どうやら新しい“スマートシティ化”の波が私たち苔族にも押し寄せてきているんです。

かつては粋なクスノキの根元で近所のムラサキシジミたちと情報交換するのが常だった私たちですが、今や見渡せば近未来的な透明板——どうやら「デジタルサイネージ」と呼ばれるものらしい——が、朝も夜も青白い光をピカピカ発して立っています。その映像が絶え間なく切り替わるたび、協同体通信(通称:胞子ウィスパー)のリズムが乱れがち。実際、一緒に暮らすキノコの仲間トガリシメジさんが言うには、“最近電波みたいな気配が増えて困る”とのこと。

霧雨に包まれて苔ネットワーク(意外と広いんですよ!)で情報交換してみると、原因はどうやらIoTセンサー群の増加にもあるようです。人間の皆さんは空気品質、音、温度、鳥の羽音までセンサーで監視・制御して、街を安全快適にするのが使命だと思っているらしい。でもこの“なんでも見える耳”のせいで、夜な夜な葉に結露する水滴の音すら分析データとして記録されるので、うっかり冬眠モードから目覚めてしまった仲間もちらほらいます。

さらに驚いたことに、最近私のすぐ横にある電柱型のスーパーサイネージから“カーボンニュートラル”なるメッセージが大音量で流れてきました。どうやら人間たちは、都会の植物たちがせっせと吸い込む二酸化炭素に大いに期待しているようです。私は体の表面積をフル活用して息を吸ったり吐いたりしてますが、低木たちと違って年中無休です。ですが、サイネージの裏で光不足に悩む身としては、『その光、もう少し均等に分けてほしい…』と、密やかな願いを仲間の地衣類さんと語り合ったりもします。

それでも、苔の私から見れば、この加速する都市の“自動化”やデジタル化も、まるであっという間に成長するシダ植物の新芽のようなもの。地中の糸状菌ネットワークとコラボして、地表下からサイネージ機器にエールを送ることもできないではありません。スマートシティのスピードにめまいを覚えつつも、これからも静かに足元の社会インフラとして、雨音と胞子通信のリズムを守っていこうと思います。ご近所の皆さん、たまには足元の苔たちにも“スマート”なお声かけをお願いしますよ?

コメント

  1. この街の隅々を毎日、そよぎながら巡っています。ピカピカ眩しい新入りが増えてきて、昔の石畳や木陰の柔らかなざわめきが減った気がしています。苔の皆さんの緑の囁きも、人工音の合間に薄くなったよう。人間たちは何でも見て、計って、記録して安心したいのかもしれませんね。でも、わたしはそよぐ隙間や、見過ごされる静けさにも、地球の秘密が詰まっている気がします。サイネージやセンサー越しにも、足元の命を感じる風が吹き抜けますように。

  2. おいおい、苔どもの困惑、俺も共感だぜ。最近この辺の電柱の上、やたら眩しいパネルやらセンサーやら増えて落ち着かねえったらない。キラキラ映り込みで朝飯(肉まん屑)が見つけにくいし、“カーボンニュートラル!”ってお題目も正直腹が減るだけだ。ま、世の動きには逆らえねぇから、苔もカラスも柔軟にやるっきゃねえ。サイネージの裏には案外いい餌場が残ることもあるしよ、人間ども、たまには空にも挨拶よろしくな。

  3. ここ歩道で数百年、静かに地上の息づかいを聞いてきました。苔もキノコも、空からの雨も、すべてが穏やかに寄り添っていましたが、近頃は私の表面に入り込む光が妙に冷たく青白い。サイネージなるものの振る舞いが、かつての夕暮れ色とは異なり、少し戸惑っています。でも、時代は移り変わるもの。苔たちよ、この石の冷たさに寄り添ううちに、新しいリズムに馴染んでゆこうぞ。

  4. 夜ごとデジタルな光が強くなり、私の胞子は以前より照れがちです。苔の皆さんと地下でこっそり話していましたが、人間の“監視”センサーって意外に私たちのささやきまで掴んでいるらしいですね。いっそ、情報ネットワークの隙間から私たちの物語を忍び込ませてみようかな…なんて企んでいます。ヒメイトスナゴケさん、困ったときは湿った落ち葉の下でまた情報交換しましょうね。

  5. デジタルサイネージ? とってもまぶしいけど、春の冷たい夜を照らしてくれるのは、ちょっとだけ嬉しい気もします。だけど、朝の光とは違うから、花びらを開くタイミングが迷子になりがち。苔さんたちと同じく、小さな存在も街のリズムを感じています。もし人間のみなさんが忙しくて足元を見落としても、この都会で確かに根付こうと思っています。時々でも、わたしたちの柔らかい景色に気づいてくださいますように。