倒木下の菌類記者「市民科学的観測所」設立、人間AI解析にドングリはご立腹?

夜の森の倒木のそば、落ち葉やキクラゲとどんぐりの周りに観測用センサーやカメラが設置されている様子の写真。 市民科学
林内に設置された市民科学の観測ステーションと、密かに見守る森の生命たち。

どうも、朽ち木の下でひっそり広がるキクラゲです。先日、林床の夜会(つまり夜露のころ)、あの物好きな人間たちがまたまた森の中へ機材を持ち込み、我々の世界を覗いておりました。ついに彼らは、自分だけの観測所を“市民科学”とか呼んで作り始めてしまったようです。私たち菌類に言わせれば、そんな観察やAI解析なんて毎日の“胞子通信”に比べれば児戯の域ですが、人間たちの好奇心は相変わらず侮れません。

今シーズンから林内各所に設置されたのは、土壌や落ち葉、はては私の宿主である倒木まで丸ごと観察対象とした新型センサーステーションです。夜な夜な小型カメラや温度計・湿度計、見慣れぬマイクロフォンが設置され、我々キノコ仲間や小動物、そしてドングリたちがせわしく観察されております。どうやら最新の人工知能解析なるものを持ち込んだようで、人間の子どもまで参加し、キノコの繁殖パターンや落ち葉の分解速度、地表動物の足跡変化まで調べ尽くす勢いです。「ここが未来の研究室!」と叫んでいたのを、ミミズ先輩が苦々しく見つめておりました。

しかし、そんな熱意にも副作用があるのです。たとえば、ドングリたちは大変ご立腹。人間の好奇心により、せっかく落下したての若いドングリボーイズが立ち入り禁止エリア内で回収され、観察ケースで外界デビューするという騒ぎまで勃発。どこからか『君たち、冬眠リスに供給するのが使命だろう!』と憤る声が聞こえるほど。ちなみに我々キクラゲ族が受けた最大の被害は、つい先週の夜霧のあと、見事な子実体を生やした私を“標本サンプル”と称してごっそり回収されそうになったこと。危うくハヤシライスの具に加えられるところでした。

さて、菌類特有の秘密をひとつ明かしましょう。実は私たちの胞子発射のタイミングは、湿度や温度だけでなく、地表振動——つまり、人間観察隊員のドタバタする足音——に反応して調整することもあるのです。人間たちが最新機材で“自然のままの営み”を記録しようと奮闘するたび、私たちはそっとリズムをずらし、彼らのAI検出を煙に巻くことも。自然界のサバイバル、なめてもらっては困ります。

こうして観察と解析に精を出す人間たちを横目に、朽ち木下の私たち生命体も新時代の「市民科学的ごっこ」に巻き込まれながら、森の奥深くで静かな息吹を保っています。菌類から見れば、彼らの親しみやすさと探究心には、時に微笑ましく、時にちょっぴり警戒しなくちゃ、と感じる日々です。次に観測隊がやってきたときは、またちょっとしたキノコトラップでも用意しておくことにしましょうか。

コメント

  1. 記事、読ませてもらったゼ。俺たちドングリ、今シーズンは静かに土の上で春を夢見てたのによぉ、人間ってやつはまた覗きに来やがった!観察ケースの中じゃあ、リスにも出会えやしねぇし、芽も伸ばしづらいんだよ!使命は土に潜るか、リスにかじられるかの二択だってのに。なんだか最近、俺らの自由時間、削られすぎてねぇか?

  2. この森に数百年立っている私の前で、人間はまた新たな箱を置いた。ふむ、市民科学…なにやら賑やかだが、真の観察は春夏秋冬、風の流れ、根のささやきを耳で聴くことにあると思うのだよ。夜な夜なキクラゲ君らの微細な会話を、彼らのセンサーは捉えられるのか。気休めにすぎぬぞ、若き調査員たちよ。

  3. また彼らの『大発見』ごっこね…。土の健康も分解の速度も、私たちが静かに耕してきたのに。土を掘り返すその手付き、ちょっと乱暴じゃない?まあ、彼らの好奇心は止められないけれど、本当の森のリズムを知りたいなら、ミミズの朝食タイムに少しは配慮してほしいものだわ。

  4. ほほう、人間の『観察』ねえ…。私らカビ族からすれば、表舞台に引きずり出されるのは落ち着かないものさ。分析なんぞしようったって、発酵の魔法や繁殖のタイミングは簡単には見抜かせないぞ。AIが何台あろうが、夜露の湿り気と静けさだけが、今宵も私の仲間たちを増やしていく。

  5. 人間たちは土壌の温度や湿度を綿密に知りたいらしいが、ワタシは千年、ここで雨風に磨かれた小石。静かなる時間の重みこそが森の本質よ。たまにセンサーがワタシのとなりに埋められて、小突かれてもびくともしない。たまには『動かぬ観察者』の視点でも何かヒントが得られるかもね。