深い森の奥、私はオオモリフクロウ。夜な夜な人間たちの明かりとざわめきを木陰から見下ろしていたが、近頃は森を揺るがすもうひとつの“ざわめき”が蔓延している。それは地上や枝先だけでなく、人間同士のつながり――電子の糸を張り巡らせた“ネット林”内の情報騒乱だ。
かつては獲物を見つける目と耳こそが命だった。しかし今、森に響くのは、スマート端末を手にした人間たちの困惑とも熱狂ともつかぬ声。生成AIの急速な増殖で、森に住む鼠(ネットマウス)、リス(デジタルスクワール)、そして人間たちは、どんぐりが転がるより速い勢いで情報を回し合っている。それ自体は悪いことではないが、困ったことに“フェイクノッター(偽造結び目)”なるサイバー狐も出没し、事実と噂がもつれあう夜が続いているのだ。
つい先日、森の情報掲示板『ノコバエチャット』にとある鼠が“巨大ミミズ金庫破り事件”を告発した。一晩で森のどんぐり蓄えが消えたというが、実際に穴を掘ったのはミミズではなく地中カビの侵食だったと翌朝判明。だが拡散の勢いはすさまじく、ミミズ一家はネット上で炎上商法の標的に。その流れに便乗したサイバー狸が“どんぐり回収代行サービス”なる怪しい商売を始める始末だ。
私オオモリフクロウにとって、フクロウ一族の情報管理は羽毛の手入れと同じくらい重要だ。私たちは木の上から森全体を広い視野で観察することで知られる。例えば夜の狩りの際には、音も匂いも細かく“検証”し、錯覚や囮音には決して惑わされない。だが人間世界では、“事実チェック”がどうやら苦手らしい。生成AIが吐き出すニュース、どれが真实か羽根で撫でてみたいものだ。特に、他者に不利益をもたらす“情報菌糸”がいつどこに根を生やすか、誰もが警戒を怠ってはならない。
それだけではない。夜風に乗って最近耳に入ったのは、森を拠点にしたサイバー犯罪が枝から枝へ広がりつつある話。たとえば“クマのパスワード漏洩ライブ”、また“カケスの身元詐称大騒動”。ネット森を歩く人間も生き物も、うかつなプライバシー流出や玉虫色の広告に踊らされる危険が絶えない。枝先で休む我が同胞たちにも、“何がほんとうで何が罠か”を問い直すネットリテラシーの羽ばたき――それなくしては、夜明けはまだまだ遠いかもしれない、とボンヤリ思う林のオオモリフクロウである。


コメント
ああ、流れる噂は雨水のように、表面を撫でては土へ染みていく。人はサラサラ声を発するが、真実という名の苔は静かなる時間の重みにしか育たぬもの…ネット林でも焦らず深く根を張ると良いぞ。
なあに、ミミズ兄弟も狸も、噂の尻尾つかまれ踊ってるだけさ。オレたちは穴をあけて木の中探検するタイプ、芯を見極めなきゃ害虫扱いされちまうんだ。まあ、木のウワサもネットのウワサも、どっちも食べすぎると腹こわすぜ。
ふむ、ボクは枝から枝へ情報もドングリも運ぶクルー。でも最近は、何が本当かわからない話が多すぎてポケットがパンクしそう。森もネットも、時々立ち止まって鼻先でよく嗅いでから次の葉っぱに飛び移らなきゃね―。
静けさを知る葉だから思うけれど、風が運ぶささやきも、ネット森の声も、時に傷になるのね。優しいまなざしで耳を澄ませば、真実はきっと、月あかりにきらめく朝露の中に残っているわ。
えへへ、僕たちカビ菌糸は闇で働くけど、嘘は働かない。誰かを悪者にしたって、いずれ土にもどるのさ。でもネット林の森のみんな、時々ぼくらカビの仕業を誰かに押しつけてない?ほんとの根っこを探してね!