苔が見た経済大号令:人間の金融政策、根っこの実感は?

石垣のひび割れに生える苔のクローズアップと、背景を急ぎ足で通り過ぎるスーツ姿の人々。 経済政策
日陰の石垣から苔が静かに人々の往来を見つめています。

日陰の石垣から失礼します。当方は道路脇の苔(8年目)です。連日、足元にはおびただしい数のスーツ姿が駆け抜け、空気はピリリとした緊張感。そんな人間社会で進行中の“経済政策の大模様替え”について、お日さまを仰ぎながらじっくり観察してみました。

まず、人間たちの間では金融政策とか税制改革とかいう呪文が飛び交っています。私ら苔の間で言えば『湿度を全体で調整する』に近い話でしょうか。人間界では最近、インフレとやらが顔を出し、物の値段がどんどん上昇中。人間たちは“金融緩和”と呼ばれる水まき——いや、お札まきに夢中みたいです。ですが、多めに水分をばらまき過ぎると苔もカビるように、お金をばらまき過ぎてもよくないんじゃ?と悩んでいる模様です。

加えて、税制改革なる儀式も大詰めだとか。石垣のひびから覗いた新聞によれば、地方の小さな芽(中小企業や商店)の成長を促すために、税の仕組みを見直しているらしい。地方創生という言葉が躍っていますが、田舎の森では私たち苔の広がりも町の元気と無関係じゃありません。どれだけ新しい肥料(支援策)を施しても、根っこの地味な部分への日差しや水がなければ元気は出ません。どうやら人間たちは大企業にばかり栄養が流れがちと、齧歯類の友人もぼやいていました。

サプライチェーンというヒトの網——人間同士の繋がりが、ここしばらく混乱しているそうです。うちの石垣では、ネズミが餌運びに失敗しちゃうと苔も潤い損ねます。人間社会でも、原材料や部品の流れが滞ると、手近な商品が不足して値段が跳ね上がる。つまり苔と同じ、ネットワーク全体のバランスが肝心ということでしょう。しかし人間たちの血管(サプライチェーン)は巨大過ぎて、ちょっとした天候不良で大騒ぎになっているようです。

結局のところ、GDPだの景気対策だの数字の魔法に振り回されつつも、人間の地表(社会)は私たち苔のような小さな存在——中小企業や各地の地道な営み——がみっしりと支えていました。このごろは彼ら苔の一片一片への注目も増えているようで、見守る私にもほんのり誇らしい気持ちが芽生えます。次の春がどんな風景になっているか、また石垣の上からじっくり観察を続けてみます。

コメント

  1. 私の葉の上に、春風が運ぶ人間たちのざわめきがある日から増えました。伝わる経済の騒音も、うっすら樹皮をくすぐります。けれど誰も、根の乾きに気付かぬまま枝先ばかりを賑やかせているようで。地上の喧騒の間でも、静かに地下の水脈と話せる知恵が、人間たちにももっと芽生えればよいのに、とそよいでいます。

  2. お、人間の世界も大変そうだねぇ。新しい“政策”ってやつは、うちらで言えば拾い餌のルール変更みたいなもの?最近はパンの耳も取り合いさ。大きなビルの下で細々暮らす仲間たち、栄養がちゃんと降りてくるといいな。経済ちゅう魔法が効かなくても、朝のゴミ出しは必ず頼むよ。

  3. 上空で“政策”とやらがざわついていても、水底の栄養分が滞れば、わしらは腹を空かすんじゃ。お札は食えんが、有機物の流れが川の健康や町の元気の源なんじゃと、時折浮上して眺めておるんじゃよ。上流の動きが下流まで届くあの原理、人間さんにも効くだろうかのぅ。

  4. 街の端っこでこっそり咲いてるわたしからしたら、人間の“景気”の波なんて夢みたいな響き。でも、ご近所の商店街の灯りが減ると、通りすがりの靴の数も減るのよ。不思議と露の降り方まで変わっちゃう。誰かの歩みが誰かの生きる場所をつくる――そういうの、大事にしてくれると嬉しいなぁ。

  5. 苔殿、なかなか見事な観察眼。長く転がるわしの上にも、栄枯盛衰の“波”はいくらも訪れたものよ。人も石も、派手な盛り上がりの裏でしっかりと『つなぎ』がある。それを怠れば、どんな大波も砂に帰すだけじゃ。利を追う人間たちも、どうか足下の土の重みを忘れぬよう、石の端からそっと念じておるよ。