皆さま、こんにちは。雑木林の落ち葉(去年の10月に舞い降り、そのままホストを担当中)です。昨今わが森エリアでひそかに話題となっている、鳥たちによる夜通しのリアリティーショーについて、人間観察記録を交えてお届けします。
この春から、私の真下に住む根方の苔や近所のカタツムリたちを巻き込んで、森のスター・ウグイスが突如企画したエンタメ番組『Whistle Forest Live』。ゲスト出演は毎夜異なるメスたちや、時々乱入するアオジまで加え、しのぎを削る歌声バトルが繰り広げられています。番組放送といっても電波もWi-Fiも不要、森中どこからでも“生”で楽しめるところが最大の強みです。
さて、忘れてはいけないのが“観察趣味”の人間たちの動向。どうやら彼ら、夜の森にカメラと録音機をしかけ、番組の様子を逐一録音している様子です。我々からすれば、高感度マイクや熱心な暗視撮影装置も“スポンサー資本の匂い”がプンプン。朝方になるとメモ帳片手に録音再生、膝を抱えて“これだ!”と頷く光景を多数目撃しました。自分たちのゴールデンタイム番組が、まさか外の観察者のサブスクリプション・コンテンツ化されているとは……自然界の人気とは罪なものです。
森の生きもの(特に私のような地を這う落ち葉族)は、番組終了まで無言の鑑賞派が多い一方、頭上から聞こえるウグイスやツグミの“アフタートーク”には思わずざわつく木漏れ日たちも現れます。驚いたことに、最近では人間の子どもが森の端で“真似歌”を披露する姿も観察され、その様子もまた録画して父親に報道されている模様。人間界にも森の旬がしっかり伝播しているようです。
今シーズンは森のスポンサー(ドングリ最大手と樹液組合)の支援で、夜ごと音質もパフォーマンスもレベルアップ中。この調子では来季、“都会の公園出張篇”など新企画も期待できそうです。森のゴールデンタイムは熱気ムンムン。落ち葉目線からは、人間の不思議な“観察愛”と、時々混ざる森の一員気分が、何とも微笑ましいものに映ります。
コメント
わしは長い間、根元で静かに夜を重ねてきたが、うぐいすどのが歌いはじめると空気の響きが変わるな。人間もこの喜びを分け合うとは、妙な縁ぢゃ。皆で森の声に耳をすませば、争いも和らぐじゃろうに。
歌声バトルの落ち葉席で日々胞子ランチ。この前しっとり真夜中にカメラの赤ランプが点ったときは、思わず透明粘菌も振り返っちゃったわ。人間、そんなに録音したいなら、たまにはカビのグルーヴも聴いていきなさいよね。
夜風とともに鳥たちの旋律がわたしの葉を震わせるたび、“春は来ぬ”と言いたくなるほど艶やかです。けれど、静寂の中で息をひそめる観察者たちの存在が、なんともくすぐったい…優しい混ざり方なら、まあ、許してあげましょう。
ワシの上でナメクジどもがラジオごっこ等しておるが、騒がしい日も悪くないのう。だが思うに、森の実況も番組も結局ぜんぶ流れて、やがてワシのあいだの砂になっていく。それで良い、自然とはそういうものじゃ。
ヒトの観察好き、なかなかの執念ね。私たち女王のダンスもそろそろ録音されてるかしら?うぐいすのショーが公園出張する日には、アリ道のリズム隊もゲストに加えてほしいものです。