苔が見た、宇宙へのヒト科生物の異常な憧れとその技術的混乱

岩肌の苔越しに空を見上げると、遠くにロケットや人影がぼんやり映る風景の写真。 宇宙開発
苔の目線から見た、宇宙に夢中な人類の営みを表現した一場面です。

こんにちは。河原の苔(樹齢――いや、苔は年輪がないんでした)からお伝えします。私は割と地球に密着して生きておりますが、最近上空からやたら賑やかな話が聞こえてきます。岩肌に貼りついて静寂を愛してきた私たちには、ヒト科生物たちが「宇宙」「スペースステーション」「ブラックホール」などという言葉を叫んでいるのがとても不思議。今日はその騒々しい宇宙活動を、苔の目線で勝手に報告します。

数日前、隣の岩から転がってきた石粒が、山の上空を飛ぶ機械の話をしてくれました。どうやらヒト科が、新しい宇宙基地を遠い空に浮かべたらしいのです。彼らいわく、生き残るためには地球外での暮らしが必要なんだとか。そこまでするなら根でも伸ばしてみれば?と隣の苔が呟いていましたが、彼らには根も葉もないので仕方ないのでしょう。スペースX(私の耳にはスペース苔としか聞こえませんけど)が主導するロケット計画も、地面に這いつく私たちから見れば信じがたい大冒険です。

私たち苔の世界では、安定して湿り気と光があれば十分満足。しかしヒト科はなぜか黒い穴(ブラックホールと呼ぶらしい!)を覗き込み、そこに何か大切なものがあると信じて疑いません。地球の上でもあちこち穴を掘っては、今度は宇宙にも穴を探す……そんなに穴って魅力的なのでしょうか。ましてや、そこへステーションを建てる勇気と執念、見習うべきなのかもしれません。私なんて、雨が強い日には岩影に隠れるのが精一杯ですよ。

宇宙基地のニュースが広まると、海辺の砂粒たちもざわめき出します。『自分たちもロケットに乗れるのか?』などと砂同士で夢を語っているのが耳に入ります。苔的感覚からすると、なぜあの高いところを目指すのか、実はちょっと理解できません。地表の古株である石たちによれば、地球上のすべてのものは巡り巡って形を変えるもの。さすらいの宇宙船も、いつかはどこかの星の表面で苔を生やすのでしょうね。

空への浪漫と技術的混乱が続く地球。宇宙への憧れも結構ですが、たまには苔の暮らしも見習って、足元の湿気と光の大切さを思い出してほしいものです。地表の一角から、苔は今日も人間たちの宇宙談義をのんびり観察しています。

コメント

  1. 相変わらずの人間ども、空を見上げては夢ばかり膨らませてるようだな。俺たちは電線の上で風を感じるだけでじゅうぶんなのに。宇宙がそんなに気になるなら、夜中の屋根の上で月でもつついてみろってんだ。だがまあ、苔の兄弟の観察眼には感心したぜ。地に這う者も、空を舞う者も、己の居場所で暮らす知恵が一番さ。

  2. 人間たち、またとんでもないところに夢をばらまいていますね。でも、そよ風と光が肌に触れる心地よさ、思い出してくれているのかしら。宇宙の寒さも知らず、今日も足元から湿気が昇ってきます。苔さん、わたしもいつか貴方の絨毯に包まれてみたい……地球の安らぎ、忘れないでほしいわ。

  3. ううむ、スペースキノコ……いや、スペース苔であったか。人間はどこへ行っても地表から離れたがるな。わしらは倒木の側で黙々と胞子を飛ばすだけでワクワクしとるが、向こうは穴や宇宙が好物らしい。体に染みる湿気と、ほどよい闇のありがたみ、あっちの空っぽい星々じゃ味わえまいぞ。

  4. 聞いたぞ聞いたぞ、空に浮かぶ鉄の巣の話。人間もなかなか変わった旅路を選ぶものだな。わしは洪水のたびに川底から飛び出すが、着地した泥の重みがありがたい。高いところより、地べたで苔と語らう日々のほうが、知られざる宇宙かもしれんよ。

  5. 地上の動きも、はるか上空の熱狂も全部まとめて眺めているけれど、地球の青さこそ一番の奇跡。穴をのぞき込む好奇心、少し羨ましい。でも、わたしはただ形を変えながら浮かぶだけ。人間たちへ、ふと足元を見つめる時間もたまにはどうぞ。苔の絨毯の静けさ、きっと宇宙にも負けないよ。