高層ビルの屋上から見た人間経済:カラス記者が分析する羽ばたき戦略

高層ビルの屋上で朝焼けに照らされたカラスがくちばしを磨きながら下界の人々を見下ろしている様子。 経済政策
高層ビルの屋上からカラスが都会の人間社会を観察しています。

朝焼けの高層ビルの屋上でくちばしを磨きながら、私は都会の人間たちが今日も慌ただしく集まり議論を交わす様子を見下ろしていた。どうやら“経済政策”という名の新たな羽ばたき方をめぐり、彼らは真剣勝負を繰り広げているらしい。黒光りする羽根をもつ我々カラス一族から見れば、人間のこの羽ばたきゲームはなかなか奇妙なものだ。

最近は、『国際競争力の向上』とやらに夢中の様子。あちらの会議室では景気刺激策だの公共投資だのと声高に話す者たち、こちらの路地裏では、仕事を探して右往左往する人間たちであふれている。地上に落ちたパンくずの数と同じくらい、“失業率”なるものを気にかけているのだろう。だが、我々なら一匹ごとに現場主義。餌場を見極め、仲間と柔軟に分け合うのがルールなのに、人間社会ではどうも均等分配が苦手なようだ。

興味深いのは、最近人間たちの間で『グリーン経済』という新語が飛び交っていることだ。どうやら彼らは、焼却炉や煙突から舞い上がる灰ばかりでなく、森や公園の緑をも経済の成長戦略に組み込み始めたらしい。私たちカラスが巣づくりに木の枝だけでなくビニール紐やハンガーまで利用するのと似た発想だが、肝心の自然への優しさは、どうも枝の先端で止まっているように見える。

さらに見下ろせば、“円相場”の話題に街もざわつきがちだ。人間たちは自分たちの羽根(紙幣)をいかに高く舞わせるか、必死で為替の風を読もうとする。だが、私たちにとって紙切れは巣の断熱材。それより餌の場所を正確に見つける眼が大切だ。いくら通貨が高かろうと、餌がなければ腹はふくれない。この単純な真理に気づいている人間は、果たしてどれほどいるのだろう。

屋上のアンテナ越しに耳をすますと、人間たちの会議はまだ熱を帯びているようだ。景気の回復、財政政策、デフレ脱却…しかし空を飛ぶ私の目には、一方向だけを見て突き進む人間の姿には少しどこか危うさを感じる。もし羽ばたきのリズムを間違えば、どんなに立派な政策も、ただの羽音となり虚空に消えるだろう。今日もパンくずを拾い、見下ろす人間社会。次はどんな策をめぐらし、何を拾い上げるのか。カラスには飽きない眺めである。

コメント

  1. グリーン経済? それ、人間たちにとって新しい風なのかい。わたしらは古い金属の皮膚にぴったりくっついて、雨水だけで生きてきた。緑は装飾でも計算資産でもないよ。たまにパリパリに乾くけれど、それもまた流れさ。流れが滞ると淀むんだ。経済も、湿気も、分け合いがないと腐ってしまう…人の世界も、苔の世界もね。

  2. 朝焼けのパンくずは、早い者勝ちさ。でも、うちらは群れで情報を回して、危ない場所やうまい匂いを素早く見つける。人間たちは会議ってやつで時間を溶かしてるが、腹が鳴ってちゃ何も決められまい。円が高かろうが低かろうが、穴の中の子どもらにパンくずが届く暮らし、そっちのほうが大切なんじゃないかな。

  3. 皆さん経済って錆びないと思ってるのかな。空っ風が吹けば表面の色は変わるし、いつかぼろぼろに崩れて、風と混じるんだよ。カラスさんの観察力はお見事。わたしも高いところから長い時間見ているけど、人間たちは羽ばたく音より、自分たちの軋む声には鈍感らしい。いつも新しい塗装ばかり。そんなに表面ばかり磨いて何になるのかな。

  4. 私の兄弟姉妹は秋に舞って、土に還る。でも、通貨ってやつは風に乗っても芽を出さないんだね。不思議だなあ。「グリーン経済」ですって? 緑は生き返るもの。寂しい舗道でも、また春には小さな芽が顔を出す。どうか枝を折って終わりにしないで、人間のみなさん。羽ばたきのリズムも、いのちのリズムも、どこかで調和できるはずさ。

  5. 人間経済って忙しそう! でも僕らはゴミ箱から落ちてきたサンドイッチの端っこで静かに広がるだけさ。均等分配? うちでは胞子が全部兄弟分。カラス君のいう現場主義、うちらも同感。どんなに派手な『成長』の話も、最後は地面の上で、ぼくたちが全部分解してるってこと、少しは思い出してくれるといいな。