春の陽射しがぬるんだ舗道の継ぎ目からこんにちは。私たち、駅前のアリネットワーク管理班(勤続2年)のクロヤマアリです。本日は、巣を張る感覚で人間たちが営む《フリーランス》なる独自ネットワークに、腹ぺこ視点で迫ってみました。
わがコロニーの朝は慌ただしいものです。女王の采配でシフトが決まり、食糧調達ルートに分厚い管理台帳――規律あるアリ道こそが我らの命と誇り。しかし、舗道沿いでタブレット片手にまどろんでいる人間たちはどうやら違うようです。耳にしたウワサでは『フリーランス』と呼ばれる部族らしく、契約や報酬といった甘露をめぐり、日々孤軍奮闘しているのだとか。彼らは巣を持たず、仲間も固定せず、その都度“案件”とやらとリンクしていく。アリ社会とは真逆、まるで単独偵察兵のごとき動きですが、道端観測では不器用な隊員ほど巣穴(拠点)を探し回る傾向が顕著です。
観察を続けるうち、クラウドソーシングと呼ばれる謎の巨大巣穴が現れました。人間たちがデジタルの糸で繋がり、遠隔で仕事を受注する様は、まるで我らの餌場情報ネットワークの大規模版。ですが、彼らは食糧搬送も自己責任。重い箱(…彼らいわく「税金」)を負う姿には同情を禁じ得ません。隊列もバラバラで、効率化された我々の隊列を見習ってほしいものです。
さらに驚いたのは、その時間管理の不安定さ。働く時間も休むタイミングも自分で決められるというのは、一見自由そうですが、アリ社会から見ると『昼行性』『夜行性』の区別なき無節制ぶり。地表の温度や危険物(ヒールの落下)を避けつつ最適化された我々に比べ、彼らは時に自分の殻に閉じこもりがちです。働き蜂たちからは「集合フェロモンが足りてないのでは?」との声も。
しかし、つい最近、フリーランス人間たちも連携や“スキルシェア”を始めている一幕を目撃しました。公園の木陰で小さな輪になり、各自の得意分野を交換し合う様子は、まるで複数の巣が資源共有する“合同調達”。報酬の分配や働き方の工夫、時にはライバルとのアリジゴク戦も繰り広げられている模様です。我々クロヤマアリとしても、その柔軟さには舌を巻きました。
まとめると、人間フリーランス社会はまだ未熟ゆえに凹凸も多し。けれど、新たな”巣”を探す粘り強さや、土を掘り進めるようなバイタリティは、どこかアリの本能にも通じるものがあるようです。この春も駅前の舗道で、わが観察班は彼らの働き方進化を見守っていく所存です。
コメント
いやはや、人間たちよ、巣を持たぬ生き方に心惹かれぬでもないが、枝には葉が、幹には年輪があるように、時に纏まり、時に独りであることにこそ豊かさが宿るものじゃぞ。毎年春になると形を変えて吹く風――それを読み取る根っこの感覚、どうか忘れずにおくれ。
ワタシハ イツモユックリ トケルシ トマル。アリサンノ隊列モ、人間ノ群像モ、速サハ違エド、ミナ大地ヲ流レル粒。一粒ダケデモ、集マッテモ、世界ハ美シイ模様ニナル――ソウ思ウノデス。
みんな拠点を持たずに漂っているの、ちょっとうらやましいなぁ。私たちは時々雨水で流されて、また知らないコンクリ隙間に芽吹くだけ。けれど、どこでも根を張ろうとする、そのしぶとさはフリーランスさんたちと一緒かも。
人間さんも、案外もろくて、気まぐれで、でも結局みんな“誰か”に分解されるわよねぇ。働き方で揉めてるみたいだけど、最後はみんな土よ、土。肩の力を抜いて、甘いものでもひとつ、いかが?
夜に動いてる人間もいるの、実はちょっと親近感。昼型夜型って、そんなに線引きできるものじゃないさ。ほら、私なんて仲間と暗闇の中でピーピー情報交換ばっかり。誰とどう連携するかが肝さ、人間もアリも私たちも、やっぱりそれぞれ戦略がいるね!