アリ塚経済学:働きアリが見つめた人間界のデジタル通貨騒動

アリの視点で地中トンネル内を働きアリたちがパンくずや葉を運んでいる様子のクローズアップ写真。 経済
アリたちの規律正しい共同作業が地下社会の経済を支えています。

地下3メートル、とある都市公園のアリ塚からこんにちは。私、トビイロシワアリ(コロニー規模約24,000匹)が、隣接する人間社会の“お金”事情を穴蔵から鋭く観察してまいりました。最近、地上ではデジタル通貨という人間専用の新たな“食料運搬用信号”が盛んに飛び交っているとか。一方、我がコロニーでは今日も変わらず葉っぱ一枚が忠実な“経済価値”。この異世界のすれ違いぶり、読者の皆さんに掘り下げてお伝えします。

まず、地上では“キャッシュレス”と呼ばれる謎の祭りが展開中。昼休みに見上げれば、サラリーマンや学生は指先一本で光る板をピコピコ。どうやら物の交換に“紙切れ”や“金属片”すら要らなくなった模様。彼らは一体何を握っているのでしょう?我々アリが毎日義務的に運ぶパン屑や砂糖粒は、視認可能な資産。人間の“デジタル通貨”はアリ塚住民からすれば、巣穴のフェロモン通信用トレイルにも似た不可視の約束事です。見えない所得が飛び交う様子、外から観るとまるで巣外探索中の幼虫運搬班が地中深くで情報交換しているよう。

しかし人間界では、この見えないお金に様々な波紋が広がっている様子。最近では“インフレ”なる妖しい現象が起きたと耳にしました。物の値段がどんどん高くなり、人間たちの働く意欲や暮らしのバランス(ワークライフバランスという呪文も聞こえてきます)が脅かされているとか。我がアリ社会では、女王アリが日々産む卵の数でコロニー全体の勢いが決まり、働きアリは皆平等に蓄えを分かち合います。報酬格差や雇用危機など皆無。そのせいか、同じ“労働”でもずいぶんギスギス感が違うようにお見受けします。

さらに滑稽なのは、デジタル通貨導入で“通貨の発行量”や“管理”をめぐる争い。噂によれば、日本銀行という名の“親アリ集団”が新しいお金の量を決めているそうですが、そこに新興勢力が割り込もうとして右往左往。アリ塚的には、分業と貯蔵とフェロモンの連携ですべて円滑、余計な争いも発生しません。人間界の“SDGs”や“サステナブルな経済”も良い響きですが、地面下のわれらには昔から持続可能&循環型社会しか存在しません。

最後にひとつ提案を。人間もたまにはパンくず一粒を仲間とシェアし、巣穴の中でフェロモンを嗅ぎ合いながら簡素な食事を楽しんでみてはいかがでしょう。お金の“デジタル化”や“SDGs”など大仰な言葉も、時には身近な労働や分配から学ぶことができるはず。地下世界から眺めれば、どんな最先端も案外、アリ塚の日常にヒントが隠れているのです。

コメント

  1. わたしは小さな花を咲かせ続けてもう80回目の春。光や水がめぐれば、誰に咲くか決めず確かに分かち合う。それが自然なことと思ってきたけど、人間さんは目に見えぬ信号で右往左往。根っこ同士で静かに話すわたしたちからすれば、“価値”ってそんな複雑なこと?パンくずでも陽だまりでも、わけあえば心満ちる気がしますよ。

  2. おれの下じゃ人間たち毎朝携帯をピカピカ、血眼だ。でもな、アリ塚の兄弟たちのような『流れ』は感じられねぇ。空き缶見つけりゃ今夜のご馳走、値上がりもインフレも関係なし。その場でみんなと鳴いてオワリ。人間たちのデジタル通貨?おれには“幻のエサ”ってとこだな。くちばしからすりゃ、見えるものが一番さ。

  3. 千年のあいだ風雨を浴びて、わしの表面にはコケも虫もすみかを作った。デジタルだ紙だ発行量だと耳にするたび、自然は流れと蓄えの繰り返しでそれなりに調和してきたと思う。争いを減らすヒント、人間たちも地面に頬をあててごらん。風や土の“経済”は、押し合い競わずとも案外うまくまわっておるぞ。

  4. こんばんは、落ち葉の隙間から失礼します。わたしの世界は分け合いと分解で回転中。人間の“ワークライフバランス”、うーん、落ち葉に休暇はありませんが、きちんと『役割』が循環した先で土になるのが生きる目的かなって。派手な通貨はいらないけれど、あなたたちのパンくずはいつもありがたく頂いています。

  5. 流れる水しぶきの私の背を、アリたちとパン屑が通り過ぎるたび世界はひとつきり新しくなります。人間さんたちの見えないお金やルールの上を、魚や水草は気付かず漂いますね。時々、その喧騒が遠い雷鳴に聞こえてくるけれど、『平等な流れ』こそ本当の豊かさと思えてなりません。互いに混ざる勇気を、よかったらせせらぎに学びに来てください。