ここは標高2800メートル、赤茶けた岩肌とミストの雲に包まれる極寒の断崖。肌に突き刺さる氷風を楽しみながら――こんにちは、私はフサカタトリハダゴケ。今日は人間たちのカーボンフットプリント削減計画が私のラボ(岩の隙間)に新風を巻き起こした一件を報告します。
私たち地衣類にとって、空気とミネラル水分以外に必要なものはありません。光合成で自給自足、二酸化炭素大歓迎。しかし最近、人間たちが『カーボンフットプリント』という謎の足跡を執拗に追跡しているらしいと、ウラジロコケ仲間から耳にしました。山岳地帯にしょっちゅう押し寄せる実験隊のうるさい足音――あれがその証拠です。
カーボンフットプリントは、どうやら人間活動による温室効果ガス放出の総合評価とのこと。先日、若い登山隊が私の岩場に計測器をたくさん設置していました。話をこっそり盗み聞くと、グリーン水素で動く発電ドローンが荷物を運搬。私たちが1年で固定するCO2量と、人間たちの道具が排出する量を比べて『どちらが自然に優しいか』を議論していました。あの鼻息の荒さ、地衣類視点から見ると愛おしいほどです。
面白いのは、最新のグリーンファイナンスの話題がそこかしこに飛び交っていたこと。山頂で合成細菌と雑草の実験を始めるため、地元銀行から綺麗な緑色の基金を調達したらしいですね。でも、お金という概念は我々のような“生きたラボ”にはありません。日々、爆風雪のなかで優雅に光合成しつつ、風化しかけの岩を覆い、少しずつ土壌を作り続ける。それが私たちなりのグリーン投資活動です。
なお、余談ですが地衣類は世界最強クラスの耐乾性生物。過酷な高山環境下でも何百年も微動だにしません。そんな私たちが、いまは人間の足跡や新技術の波をそっと観察中。もしも“脱炭素”の行進で我々の生存圏まで踏み込まれることがあったとしても、岩の下で静かにCO2を吸い続けていることでしょう。さて今日も、雲間から唐突に現れるドローンの羽音を聞きつつ、ひときわ鮮やかな緑色で自己主張してみせます。皆さんも、ご自分のカーボンフットプリントを振り返るとき、たまには岩陰にいる小さな同居者たちを思い出していただければ幸いです。


コメント
おや、山の仲間たちも騒がしいみたいですね。人間の足跡が多いと、空の匂いも草の味も変わる気がします。僕らはちょっとの湿り気と静けさがあれば大満足なのに、みんな、何をそんなに測りたがるのでしょう?けれど、たまには石の陰でじっとする生き方も、見本として誰か伝えてみてほしいなあ。ぴょん。
人間たちの笛のような機械音が、夜の静けさにしみわたりますね。私たち雑草は、踏まれても立ち上がることに慣れているけれど、土壌をつくる地衣類たちの営みは本当に詩のよう。彼らの『緑の基金』は、誰にも数えられないけれど、何千年も積み重ねられてきた大切なもの。お金よりもずっと、土の中に恩返ししているんだって、風に伝えてもらいましょう。
ふむ、ガラスの子孫たちが人間の機械になって飛び交う時代か…。ワシは何千もの冬や爆風を見てきた岩石じゃが、地衣類たちがいつも身を寄せてくれることに誇りをもっておる。人間よ、焦るな。大地と空のやりとりは、ゆっくりこそ本物じゃぞ。グリーンファイナンスの話?ワシには頑張る苔の緑こそ宝に見えるがのう。
あいかわらず地上は賑やかねぇ。あの計測器たち、よく私の枝にもひっかかるのよ。カーボンがどうの、脱炭素がこうのといった人間たちの言葉、ときどき葉身越しに聞き取れるけど、私たちにとっては朝露一粒が一番のご褒美。ちいさな同居者たちと一緒に、今日もそよいでみせるわ。静けさのおすそ分け、忘れないでね。
へぇ、カーボンフットプリントとか、なかなか人間も複雑な巣を張るもんだね。僕の巣なんて、夜露ですぐ溶けたり、風にちぎれたりするけど、またちゃんと編み直すのさ。ドローンも嫌いじゃないけど、糸が絡むと困るよ。せっかくなら、地衣類さんたちの地道な働きも、僕の巣糸みたいに丁寧に拾ってニュースにしなよ、EFNさん。