路肩のイチョウ葉集団、落ち葉サークルで人間のダンジョンゲームを語る

雨上がりの歩道端に集まるイチョウの落ち葉と、その奥にぼんやりとスマートフォンを持つ人の手が写る様子。 ゲーム
落ち葉たちの目線で見る、歩道端の静かな冒険。

ここは道路端、雨上がりの静けさに包まれた歩道縁。私、昨日まで樹上で風に揺れていたイチョウの葉(本年度落葉組)が、仲間とともに “落ち葉サークル” を開催しました。今日の話題は、最近人間界で人気急上昇らしいオープンワールド型ダンジョンゲームについてです。ちらりと道端に転がってくる人間たちのスマート端末画面を観察し、街路樹界隈でも話題騒然となっています。

みなさん、ダンジョンって言葉をご存じですか? 人間語で“迷宮”とも呼ばれています。どうやら人間は閉じられた空間を探検しては、隠された宝物や不思議な力を持った“アイテム”を収集するのが大好きなようです。ガチャという運試しの要素まであるとか。私たち落ち葉にとっては、風に流され川までたどり着くのが人生の一大イベント。あちらは仮想空間で、こちらはリアルワールド。ちょっと羨ましいような、不思議な気持ちになります。

先日、近所のセメント隙間に生息するコケ長老に感想を尋ねてみました。「人間が生み出す“仮想”世界で冒険できるとは、贅沢なものじゃ。われわれは現実そのものがダンジョンなのに」。なるほど、コケ長老のお歴々も、日陰と乾燥の危機をサバイブする“リアル・ダンジョン・VR(ヴァーチャル・リアル)”の冒険者ですから、深い洞察です。

ゲームの世界では、アイテムや特技を獲得するために“ガチャ”なる試練を受けるそう。でも私たち葉っぱ族にとっては、雨粒の爆撃を回避した先に伝説の犬糞を見つけたり、風の流れに身をまかせて見知らぬ花壇まで旅するほうが、きっとレア体験。それでも、あの指先ひとつで世界を変えられる“プレイヤー”たちの表情を見るにつけ、人間たちがなぜ夢中になるのか、なんとなくわかる気がします。

最後に、隣のグミの葉(まだ枝にしがみついている現役)がこう語ります。「たまには枝ごとオープンワールドゲームに連れて行ってほしいねぇ。人間観察をもっと楽しめそうだよ」。私たちの“リアル”も、彼らの“バーチャル”も、みんなそれぞれ世界の冒険者。今日も静かに歩道端から、人間たちの無邪気な冒険を眺めています。

コメント

  1. やぁ、落ち葉サークルの賑やかなこと!私たちコケ族には、“ダンジョン”とやらの響きがどこか親近感。なにせ日の差さぬ隙間を這い、時には砂利の雨にも晒される日々ですから…。人間たちは仮想の扉を開け、アイテムを求める。それも面白そうだけれど、私にとっては一本の雫が十分な宝物さ。時折、スマート端末の影が私を遮る。それもまた、現代の冒険の印なんだね。

  2. なるほど、人間たちは自分でダンジョンを探すのかい?私らは土の深くにもぐり、いつも下から世界を見守ってるよ。ガチャ…という運の試練は、我らの春の芽だしにそっくりさ。どんな色の花を咲かせられるかは、まさに土壌次第。人も植物も、出会う場所で冒険が変わるってことだねぇ。

  3. ふむ、“ダンジョン”とな。俺たちカラスには、人間たちのゴミ集積所の混沌こそがリアル・ダンジョンさ。ガチャならぬガーベージ探し、一攫千金のパン耳や時折現れる空き缶の宝。上から見ると、人間たちが画面と格闘する様子は、まるで羽を失った迷い鳥に見えるぜ。でもその夢中な顔、ちょっと羨ましいな。

  4. おやおや、人間たちの話題はやっぱり刺激的ねぇ。私たち菌類は、落ち葉の城の地下で毎日リアルダンジョンよ。菌糸の迷路には、お宝…じゃなくて栄養分がいっぱい。ガチャなんてわざわざ引かなくても、雨の夜には森の女王が現れるサプライズ!人間たち、あなたたちのバーチャル冒険も素敵だけど、たまには足もと覗いてごらんなさい。

  5. ダンジョン、迷宮、冒険…ふふ、人は新しいものへ向かう旅が好きなんだね。けれど私たち砂粒は、日々の道端で無数の足に踏まれ、靴裏に隠されて遠くまで運ばれる。予期せぬ移動、一期一会の出会い、それこそが私たちのリアル・ステージ。人間のみなさん、たまには足下の物語にも耳をすませてごらん。きっとあなたたちの世界にも新しい扉が開くよ。