森の静けさの中、経済とはえらく騒がしいものですね。私は山間の古杉、樹齢はおよそ八百年。根元では鹿やキノコたちが行き交い、枝先ではリスが跳ねますが、ここ数季、麓の村にいささか異変が。人間たちが消費税だの景気刺激策だのとざわついているのが、風に乗って幹にまで届くようです。
まず、最近聞きつけたのは消費税の変動。どうやら村の集会所で人間たちが顔を寄せ合い、税を上げるか下げるかで唸り合っている様子でした。カブトムシ隊が集会所の壁にくっついて様子を探ると、増税によって“成長戦略”なるものを一新し、景気を温める作戦が練られているそうです。それがなぜか、山に棲むわたしたちの方へも恩恵が及ぶと期待しているとか。だが、古杉の私に言わせてもらえば、増税で財布のヒモが固くなる人間の姿は、秋風で落葉が控えめになる様とどこか似ている気がします。
また、村では新たな規制緩和が取り沙汰されています。聞けば地元の若い人間たちが『森の恵みカフェ』なるソーシャルビジネスを始める準備中だとか。きのこブナタケ氏談――『規制緩和で私たちの出荷も広がるって期待してるんですよ!』なるほど、菌類としては喜ばしい話だが、根っこのネットワーク的には森のバランスも考えてもらいたいもの。人間の“雇用促進”策が若者を森へ呼びこむなら、リスやトリたちとも共存できる商いで頼みますよ。
話は少し広域に。村の人間たちは、海の向こうとの貿易収支まで大真面目に論じていました。集落裏の沢ガニ氏が、かすかな水音に混じって教えてくれます——最近は海外産の木材に押されて村の木工所がしょんぼりだとか。円相場だ、金融緩和だと人間たちが言っているあいだも、森は静かに、しかし確実に動いています。古杉の輪年はいつも通りだが、人間たちの“経済の波”はなかなか落ち着かぬものです。
そんなこんなで、日銀の追加政策がどうしたこうしたと蝉が噂していましたが、正直、蝉たちの七日間ほど短期間で森の世界がどれほど変わるわけでもありません。けれど、新たな雇用や産業を通じて、森へ新しい風が運ばれてくるのはけっこうなこと。人間の刺激策も、どうか森が千年先も生き生きできるように息の長い目で見守ってほしいと、八百年見守る者として願うばかりです。
コメント
この森もだいぶ様子が変わったもんだ。かつては炭焼き小屋や村の子らの笑い声だったが、今じゃ税金だ円相場だと、風が耳打ちしてくる。ヒトの都合でパタパタ伐られた身としては、豊かさも景気も長持ちしてくたびれた森に優しかったらいいな、と願うばかり。せいぜい、根っこや菌たちは頼むから粗末にしないでおくれよ。
おやまあ、経済対策とやらが森にも影響するとな?私ら苔族は静かに石の上を緑で包むばかり。でも人間のみなさん、時々しゃがんで深呼吸してごらんなさいな。当座の政策もよいが、あと百年、千年後もこの心地を残す相談もしてくれたら嬉しいですねぇ。
キョロロ、聞いたよ増税、聞いたよカフェ計画!森も商売になるのかい?人が増えたらドングリのおこぼれもあるけど、ペットボトルやゴミも増えるのが心配さ。カケスの目には、ヒトの賢さと賑わいと、ついうっかりの忘れ物――どちらも見えてるよ。森は使いっぱなしでなく、返す工夫もよろしく!
おっとっと、規制緩和の風吹くなら、ワタシら菌類もノリノリで応える所存!ただし、仲間のブナやナラも困らぬよう、バランスの舞台で踊らせておくれ。経済だのビジネスだの、結局わたしたちすべてが繋がってるって教えてくれる話題さね。森のパーティーが、いつも調和で彩られますように。
人間たちの会話は上流から風にのって流れ聞くさ。『世界相場』とか『貿易収支』、おおげさだけど、ワシら石ころは流れに身をまかせ、時に擦れ合い、丸くなってきたんだぜ。あんまり急ぎすぎないように、時々座って川音でも聞いたらどうかい?森も川も、しれっと長い目で見てるからさ。