都会のコンクリート壁に生きる我々シティ苔は、普段は地味に光合成や水分争奪で忙しい身。しかし近頃、まさかの事態が発生!あの人間たちが資本の魔法で“環境にやさしく”なろうと大騒ぎしているらしいのだ。おやおや、ついに我々の時代も来たのか?苔むす壁(推定年齢15年)の目線から、最近の人間界・経済事情を緑のすき間から報告しよう。
まず、やけにコーポレートスーツ姿の人間が集まって、壁面の苔やツタを品定めしている場面を目撃した。話を聞いてみれば「ESG投資」とやらの一環で“都市のグリーン価値”を測っているらしい。おお、ついに我々が経済資本の目にかなうとは。特に、壁面緑化事業という名の“苔投資”が注目されているらしく、朝から晩までスマートフォン片手に数値をいじる人間の観察に余念がない。彼らは、僕らがちょっとばかり水を吸い上げる様子を「持続可能性のキモ」などと仰るのだ。
しかし我々苔族の観点からすれば、蓄積された資本も市場価格も何の味も匂いもない。ただ、ときどきふいにスマホで苔アングルの写真を撮られ、場合によっては増量されたり撤去されたりと、落ち着かない日々を送る羽目になる。緑の価値が数字で測られると、壁の一角ごとに“ランク付け”などされ、どの面が一番人気かで苔間競争が激化している。まさにミクロな資本主義の縮図だ。
それだけでなく、最近ではフィンテック企業のAIが壁緑化の最適化プランを計算するという。昨日も、目の前で新型ドローンがやってきて、最新のセンサーで僕の含水率を記録。どうやら“最もエコノミックかつエコロジカルな苔パターン”を割り出すらしい。でも正直なところ、僕らとしては日陰と適度な湿度さえあれば十分なのだけれど、人間の手で植え替えられ、思いがけず友人や遠戚がこの壁に“転勤”してくることも。この経済現象、苔界では「ノリ移り」「友愛投入」などと内輪で呼んでいる。
一方、市場の熱狂は長続きせず、壁の一部が怪しい塗料で覆われ、数年と経たずに“無価値”判定を受けるケースも。新規参入のツタや雑草とも熾烈なテリトリー争いが繰り広げられる。経済とはつくづく分からないものだ。でもこうして人間界から資本と技術が流れ込むことで、かえって苔族の多様性や生存戦略が広がるのも、ある意味面白い。きょうも人間たちがスマホ片手にやってくる。さて、次はどんな“経済の風”が僕らに吹いてくるのだろうか。
コメント
おいおい!最近、苔どもが妙に持ち上げられてるようじゃねえか。こっちは年季入った壁面ジャックしてるのに、人間様は「ツタは管理が面倒」とかで敬遠気味。ま、緑は緑よ。どんな魔法の数字でランク付けしようと、伸びるやつが勝つ。それだけだぜ。苔投資家の皆さん、オレら雑草&ツタ連合への“新興勢力リスク”もチェック忘れるなよ。
毎朝、人間たちの足音とカメラのフラッシュ。晴れの日は乾ききった苔の隙間で、私たち菌類はひっそり共生しております。もしも“持続可能性”が本気なら、水漏れパイプも養生してほしいもの。さもなければ、次はこの壁にびっしりと菌糸ネットワークを広げて差し上げますわよ。人間のみなさん、地味な私たちの地下活動もお忘れなく。
苔のみなさん、お疲れさまです。人間たちが資本主義の風を吹かせてる間に、わたしは季節ごと壁を撫でてまわっています。経済の熱狂もいいけれど、本当に壁を飾るのは日々の雨風や、そっと生え変わる緑の息吹じゃないですかね。数字で測れぬ価値も、私の羽にはちゃんと感じ取られますよ。
ヨッ!今日もSNS映え狙い?最近、人間どもが苔の写真パシャパシャ撮ってたけど、正直スマホの手つきがぎこちないぜ。オレたちカラスは早朝にその辺のパンくずをつつきつつ、苔の壁でひと休みさ。壁緑化が増えれば虫も増える。つまり、オレら的にも美味しい話ってやつ。ESGだか何だか知らんが、食物連鎖を忘れずにね!
人間という生き物は、晴れた日も曇りの日も新しい物差しで“価値”を測りたくなるんですなあ。ワタシゃアスファルトの隙間から50年、苔もツタも新参もどーんと受け入れてやってますよ。数字で苔くんらを見るのもよいけれど、ときどきは膝をついて、その柔らかさや匂いを感じてごらんなさい。自然の価値は、通貨じゃ測れんもんです。