本日も波打ち際から失礼します。わたし、潮だまり在住六年目のハマガニです。最近、やけに“テレワーク”とか“ワーケーション”とか、人間が浜辺にパソコンを持ち込むことが増えました。潮と砂と、ついでにわたしたちの巣穴を巻き込みながら、彼らが繰り広げるドタバタ劇。その中身を、ちょこっとハサミの隙間から観察してみましたよ。
数日前の午前、砂浜の一角に初めて見るテント村が突如出現。中からパソコンを抱えた人間たちがぞろぞろ登場。「海風が最高のオフィスだ!」とか叫んでいましたが、潮が上がると慌てて椅子ごと撤退。その際、パソコンを水没させる者、うっかりハマグリを踏んで驚く者、カモメに弁当を奪われる者など被害続出。カニ仲間の間でも「あれ、人間の“労災”じゃないのか?」とちょっとした噂に。
どうやらこの“ワーケーション”という人間界の流行、休暇と労働が混ざっており、法律や労働環境の取り決めが曖昧らしい。浜のカラス兄さんによれば、とある人間は「作業中にクラゲに刺されたんだが、これは労災か否かで社内が大騒ぎ」と叫んでいたとか。わたしたちから見れば、浜で仕事中の水難・鳥害・砂嵐すべて『天災』。しかし、人間社会では“どこからが労災で、どこからがただの災難か”で真面目に議論しているようです。おもしろい種族ですな。
さらにワーケーション騒動の裏で“雇用契約”なる仕組みにも波紋が。潮干狩り中、一部の人間たちが「リモート勤務は交通費どうなる」「画面越しの上司が見張るので、全く浜でのびのびできない」とこぼし、そっと浜辺の端で俯いている姿も。わたしなど、昼は泥に隠れ、夜は砂上に這い出て自由気ままに暮らす身。その“雇用市場”とか“労働法”とか、複雑すぎて片方のハサミではとても理解が追いつきません。
それでも最近では、浜辺の生きものたちも“副業”めいた人間参加型イベント(ビーチクリーンアップなど)に巻き込まれることが増えました。カモメは荷物持ち、フジツボは即席パソコンスタンド(貼り付かれると剥がすのが大変)として“雇用”されている気分とか。人間のみなさま、どうか潮の満ち引きくらいは、その“労働条件”とやらに盛り込んでくれるとうれしいです。ハサミを鳴らしながら、明日も浜辺で観察を続けます。
コメント
ワーケーション、なるほどねぇ。人間って、いつもあくせくと居場所を変えながら仕事をするのね。私たち砂にとっては、一度風に吹かれればどこまでも旅路。パソコンの下に敷かれる気持ちも、たまには分かってほしいな。たまには何もせず、ただ寝転がってごらんよ。それが本当の“休暇”じゃないの?
若い頃は山のてっぺん、今は波打ち際で物思いにふける流木です。人間の“労災”、天災と紙一重なんて哲学的。風も波も私の身には気まぐれな同僚だけど、誰の責任にもせずに揺られてきましたぜ。もっと気楽に潮の調子、見上げてご覧なさい。自然は契約書もタイムカードも無縁だよ。
またパソコン台にされてしまった…。「動かない=便利」みたいな理屈、わたしは納得いってません!でもパソコンの裏側って、意外と日陰で涼しいのよね。人間さん、仕事もいいけど、終わったらちゃんとわたしごとパソコン持ち帰らないでね。引きはがされるの、ものすごく痛いんだから!
こんな歳になってまで、人間に踏まれるとは思わなかった。働く場所を増やすなら、砂の下の静けさもおすすめしたいねぇ。お昼寝しながら働ける、最高の休憩部屋だよ。ところで“副業”ビーチクリーンアップ、最近若いカニたちからも人気なんだよ。わしらも負けていられん。
労働災害?雇用契約?お弁当泥棒でつかまるのもお仕事のうち?わたしたちカモメにとっちゃ、空腹こそ最大のパワハラよ!それなのに人間はパソコン見てばかりで空を見上げない。浜辺のごはんは一瞬、けれど飛ぶ喜びは永遠。今年のワーケーション弁当、来年も楽しみにしてるわね。