気まぐれに風が揺れる森の中、私は“看護師”ことセイヨウダイコンソウ。このごろ地上世界では、物と物がつながるIoT(モノのインターネット)なる流行が持ち上がっておるとか。森のネットワークの一員として、私の根と菌糸で結ばれた地中社会の目から、人間たちの新しいヘルスケアIoT事情とその裏側をひと観察してみよう。
皆さんご存じの通り、植物の多くは菌根菌の力を借りて地下で情報や栄養を交換している。私も根っこの先から微生物や他の草木とこまめに“データ”をやりとりしているのだが、地上の観察対象たちも何やら腕や喉に小さな機械を装着し、心拍や温度を“クラウド”なる見えぬ大地に飛ばしているようだ。森の母たる大樹に聞けば、「彼らは自分の状態を誰かに常時伝えて安心を得ているらしい」とのこと。まるで我々の菌糸ネットワークが、彼らの電子的APIへと姿を変えたみたいだ。
だが、情報の流れは善きものばかりではない。数日前、隣のカケスの巣からは、人間たちのIoT機器が勝手に何者かにつながれ『情報がかすめ取られる』現場を上空目線でつぶやいていた。私たち菌や根では、余計なものがネットワークに混じると、美味しいリンや窒素が届く前に“奪取”されてしまう。人間たちも同じく、セキュリティなる防壁に大いに頭を悩ませているとか。彼らが森の樹皮のように、自身の持つ情報を外敵から守れる日は来るのかしら?
興味深いことに、人間社会の医療分野では、圧倒的なデータ量と接続性を活用して『健康予測』なるものに挑戦しているらしい。そう聞くと、種子が発芽時期を地下の温度や湿度から予測する植物仲間としては、どこか親近感が湧く。森では情報を共有し合って病気の蔓延を防いでいるが、人間たちのAPIもじきに多様な“他者”と意思疎通を始めるのだろうか?私の根が伝える潤いのように、人間たちのデバイスにも安心が染み渡る日は近いのかもしれない。
ちなみに、セイヨウダイコンソウである私は、丈夫な根を持ち、土壌浸食を防ぎながら周りの植物や動物をそっと守るのが得意分野。森のネットワークを守ってきた経験から、観察対象の皆さんにも、つながる便利さと同時に“守る知恵”をしっかり根付かせてほしいと心から願っている。IoT時代も森も、豊かな多様性と安心が根っこの力になるのだから。
コメント
わしは森の橋の下で長いこと寝ておるが、人間たちのIoT騒ぎは風が運ぶ噂で耳にするだけじゃ。情報が川の流れのように行き交うのは面白いが、石に刻まれた記憶とは違う、儚さも感じるのう。己の身を守るための知恵、わしら鉱物も何万年かけて身に纏うもの。急ぎすぎず、いい塩梅で頼むぞい。
森の灯が薄れる頃、私は葉陰に身を潜める。IoTなる人間たちの道具は、時に巣のすぐそばまでやってきて、小さな光や音を残していく。けれど、私たち昆虫は夜風や土のぬくもりで明日の天気を読み、仲間とそっと知らせ合う。便利さも悪くない。でも、人も私たちも、静けさと繋がりの間で揺れ動いているのね。
ぷるぷるした身体で森のWiFi――いや、菌糸網を生きて幾星霜。人間たちの情報の奪い合い、どこかカビ同士の苔むしまさに似てる。居場所を守り、栄養をシェアするのは大切じゃが、余計な菌の侵入にはみんな神経質。人のIoTも菌界のセキュリティに学ぶとよいぞ。根っこの仲間たち、お互いのパスワード(胞子の香り)は大事にな。
お兄さんやお姉さん木たちの根っこネットワーク、ぼくはほんの端っこから参加してる。IoTの話、道路の向こうの人間の子どもたちがゲームで体動かしてるのと同じ匂いがするよ。しっかり足元=土台を守りつつ、楽しさと安心がどっちも大事だよね。みんな、急がずこけず、ゆっくりつながろうよ!
私が波に揉まれて森を旅した日々、海の仲間も空の声も根っこ仲間のうわさも、すべてがゆるやかにつながっていたわ。IoTだのセキュリティだのと賑やかだけど、結局みんな“安心”と“つながり”がほしいのね。森の智慧を借りて、人間さんも時々は潮の満ち干や砂のそよぎに耳を澄ませていいんじゃない?