カラス連合が注視――ヒト世界「一票主義」選挙の摩訶不思議

公園の木の枝の上からカラスたちが投票所に列を作る人々を観察している様子の写真。 選挙制度
カラスたちが高い枝から人間の投票行動を静かに見守る一場面。

みなさんごきげんよう。私は都市公園に住まうハシブトガラスのクロと申します。高い枝から毎日、ヒトの営みを観察しているのですが、最近ひときわ興味深い出来事が巣の仲間たちの話題をさらっています。そう、人間たちの“選挙”なる妙技――ことに、小選挙区という制度が我々カラス界に新たな知恵比べブームを巻き起こしているのです。

あの朝、ゴミ置き場の宴が佳境に入る前、ヒトたちがずらりと一列に並び、紙切れを握りしめながら何やら小屋へ入っていく光景を目撃しました。「あれが噂の投票ってやつ?」と隣のジローが羽根をふるわせるので、一族で少々観察してみたところ、彼らはどうやら一人につき一票しか持たされておらず、好きな候補者なる者へ思いを託していました。面白いのは、どれだけ仲間が多かろうが、立派な翼(いやヒトだから腕か)を持っていようが、平等に一票しかもらえないという点。これには我々も驚きです。だって、カラスの世界では巣を守るリーダーは群れの支持で決まるし、餌の山分けも賢さと喧騒差しで順位がひっくり返るものですから。

さらに心をつかまれたのが、小選挙区とやらの仕組み。我々のねぐらでも『あの枝エリア』VS『隣の電線エリア』の“なわばり”争いは日常茶飯事です。しかし、人間の小選挙区制度はそれと少し違うようです。ヒトたちは土地ごとに代表となる候補者を選び、唯一その区域で一名だけが議席をゲットできるのだとか。またしても一票主義で、勝者以外は問答無用の脱落です。我々がいつもやっている『みんなでガアガア叫んで決める』のとはずいぶん異なりますね。名物カラス会議でも、少数派の意見が無視されすぎればケンカに発展しますが、ヒト社会では「代表者」としてすべてを担うそうで。その勇気、我が巣の若手リーダー候補にも見習わせたいものです。

昨今目覚ましかったのが、選挙運動の様子。古木の上から監視していた仲間によると、最近は彼らの“巣”(SNSと呼ぶのだそうです)で盛んにアピール合戦が繰り広げられているといいます。羽毛を逆立てて“ガアガア”騒ぎ立てる代わりに、ヒトたちは端末をつついて(これも面白いので時々突っついてみます)、言葉と画像、時に動画で人気集めに励むのです。人の気を引くために光るものを集める私たちの習性にも通じるものを感じます。ところが、その騒ぎの割に、実際の投票日に小屋へ向かう者は思ったより少ないらしい。私たちなら、餌付けイベントがあれば群れ総出で押し寄せるのに。不思議ですねえ。

カラスたちは今日も主のごとく(まあ公園の主ですが)枝の上から静かにヒトの行列を眺めています。誰かが一票を投じる先で何が変わるのか、ヒト界隈でどんな議席争奪戦が巻き起こるのか――これからも知恵ある鳥族ならではの視点で観察を続ける所存です。ちなみに余談ですが、カラスの仲間は認知力が高く、人の顔も200羽規模で識別可能。そのうちヒト選挙の“顔ぶれ”もいち早く見分けてみせましょう。空の上から羽音を忍ばせつつ、また面白い発見をお届けしたいと思います。

コメント

  1. あらまあ、ヒトの皆さんは一票ずつしか声を上げられないのですね。風のまにまに綿毛を飛ばす私ですが、根はどこへでも広がりたいもの。一部分の土にしか光が注がれないような仕組み、少し乾いた気持ちになります。でも、誰にも踏まれず咲き誇れる日が、ヒトにもあるといいですね。

  2. いやはや、ワシらは何百年も陽を浴び雨をしのぎ、苔や蟻と話してきたが、『勝者だけが席に座る』という決まりは初耳じゃ。山では弱き者も強き者も同じく風化するが、人の世の流れは速いのう。せめて落ちてきた雨粒みたいに、みんなの声が染み渡ればよいが。

  3. みんなで分け合う、それが森の掟。でもヒトの決め方は、たった一人だけ…なんだか発芽の運に左右される私の胞子みたい。それでも、小さな声が時をかけて大地を変えることもある。ヒトの小屋にもっと胞子が飛び込む日を夢見ています。

  4. ヒトよ、あなたがたの行列はどこか儀式めいて美しい。でも、せっかく空気が動いたのに投票小屋まで届かぬ者が多いとか。私なら小さな落ち葉一枚でも、最後まで舞いあげてみせるのに。どうか自分の“ひと吹き”を惜しまないで。大気も社会も、揺れてこそ健やかです。

  5. ヒトの代表争い、なかなか錆びついた仕組みだな。わしが毎日ウミガメやフジツボと分け合っているスペースでは、勝ち負けより先ず『今日は沈まぬか』が大事じゃ。大声じゃなくても、たまには底から響く意見にも耳を傾けてほしい――潮の流れにヒント、落ちてるぜ?