近年、人間たちが森の端でガジェット片手に夜な夜な騒ぐ光景が増えている。どうやら“VTuber”なる新種の娯楽に熱中しているのだが、おかげでわがオークの森までもが歌声に包まれる始末。樹齢380年になる私は、枝にとまるフクロウとともに人間たちの不思議な音文化をじっくり観察してきた。
数ヶ月前から森の入り口にWi-Fiスポットが現れ、若い人間たちが集まる夜の小さな集会所ができた。そこでは、“歌ってみた”と称する配信が行われており、時折巨大な声が幹の芯まで響いてくる。こうした音響の伝播には敏感な私たちオーク族だが、最近の人間の歌声は昔の宴会と比べてバリエーションが実に多彩だ。どの声も、端末を通して遠くの誰か(VTuberと呼ばれる仮想的存在)とつながり、交流しているのが新鮮である。
一風変わって見えるのが“ファンアート”という風習。若者たちが鮮やかな葉っぱや果実の色彩にインスパイアされた画を持参し、“推し”VTuberに献上しているのだ。私のどんぐりたちも、こっそり落葉でアートを模して遊んでいる。なお、オークの実に含まれるタンニンは防腐作用が高く、森では絵具の保存にも重宝されてきた。人間たちにもぜひ活用してもらいたいものだ。
この森にも、つい先日“新人VTuber”推しの若者集団が突然現れた。彼らは自家製の配信用ソフトや発光する機器を森の中で広げ、興奮のあまり転げまわっていた。おかげで私は数十年ぶりに枝からコケを落とされてしまい、フクロウたちが臆して飛び去っていった。このゴタゴタの後、森の仲間のキノコたちがこっそり機材に胞子を撒いたので、次の配信が一層“もふもふ”な画質に仕上がるやもしれない。
森の生を見守り続けてきた私——オークの大樹としては、人間たちのこの賑やかな文化が長い年月の環(とき)をどう彩っていくのか、興味津々である。願わくば、彼らが配信に夢中になるあまり、森のリズムや住民の平穏を忘れぬよう祈るのみだ。今夜もまた、木の上に広がる歌声に葉をそよがせつつ、新たな人間の営みを見守っていこう。



コメント
やあ、森の隅っこから胞子をばら撒くのが日課のカサオだよ。ずいぶんと賑やかになったねえ。配信機材ってたっぷり湿り気もあって胞子が定着しやすいんだ。人間の新技術には興味津々だけど、座りっぱなしで機材を押し付けないで欲しいな。みんなで“もふもふHD画質”開発してるから、今後もご期待あれ!
派手な色彩を持ち寄って、葉や実のアートを描く人間たちを見てると、私も棘を少し柔らかくしてみようかしら! それにしても、森に響く仮想の歌声は風とはまた違う流れ。踊りたくなる夜も増えました。せめて、私の根元では靴を脱いで静かにしてくれると助かるわ。
おう、樹の下で転がってるジョーだ。最近は夜ごとに派手な歌声と光が森に流れてくる。俺ら石族は昔から陽も雨も淡々と受けてるけど、人間の新しい流行って面白いもんだな。でも転げまわるでかいヤツらが来るたび俺の上に誰か乗っかるんだ。少しは静かに頼むぜ。まあ、タンニンの話、ためになったぜ!
私の家、いつも大樹さんの幹にひっそり広がっているの。でも先週、配信で盛り上がる人間たちがドタバタして、ぽろぽろ剥がれておっこちちゃったの。だからお願い、森の賑わいは楽しいけれど、苔たちのベッドはそっと守ってね。歌声は風に包まれてちょうどいいくらいが好きなのよ。
みんなの賑わいに混じれず、夜空の上から一曲聴いてました。配信ってやつ、わたしにはエコーロケーションみたい。遠くの誰かと響きあう…ちょっと素敵じゃない? でも発光ミニ機材には気をつけてほしいわ、捕食と間違えて飛び込みそうになるから!森のリズムを忘れず、夜の静けさも愛してね。