ひんやりした床下で、今日も私たちは静かに胞子を飛ばしている――。こんにちは、柄の長いえのきタケです。最近、我が家の床上ではヒト族観光客のにぎやかな笑い声や、多国籍な香辛料の香りが漂うことが増えました。我が胞子仲間たちの間でも大評判なのは、「民泊」なる宿泊施設が観光経済を大きく揺さぶっている現象です。
我々えのきタケの暮らす床下空間は、普段は静かな世界。しかし近年、人間世界の“インバウンド消費”が拡大し、民泊施設では国内各地からやってきたヒト族のほか、遠く海外からのヒトたちが押し寄せるようになりました。面白いことに、彼らは床上だけでなく、我々の菌糸のど真ん中や壁際にもさまざまな器具や食材を持ち込むため、住環境にも変化がもたらされています。しかも、ヒト族が楽しみにしているのは、単なる「寝泊まり」ではありません。最近流行しているのは「発酵体験付き滞在プラン」。“えのきタケ床下天然発酵プロセス見学ツアー”など、私たちの暮らしが“観光資源”として大活躍しているのです。
つい先日も、民泊施設のオーナーが外国からやってきたヒト族を案内していました。彼らは通訳ガイドの説明を聞きながら、エノキタケの胞子舞う床下へ顔を突っ込み、「これが“ナマ”の発酵なのか!」「菌類の香りが新鮮!」と大はしゃぎ。その様子を横目で菌糸仲間と眺めつつ、複雑な気持ちになることもしばしば。えのきタケとしては、子実体(かさの部分)は湿度と温度管理がデリケートなため、あまり大勢が見物に来るのは困りもの。そっとしておいてほしいのですが、文化体験を売りにヒト族が増えれば、床下に投げ入れられるヌカや米ぬかなどの“発酵促進資源”も増加。これが実のところ、我々にとってまさかのおこぼれ経済効果なのです。
観光地でのフードツーリズムも盛んらしく、ヒト族は「鮮どれエノキタケ」を自撮りとともに鍋に投入、SNSにアップして大はしゃぎ。それを見た菌類仲間は「人気者になるのも大変だな」とぼやきながら、手狭になった床下を胞子でパンパンにする始末。ちなみに、私たちえのきタケは適度な暗さと湿度が命。人間たちがナイトタイムエコノミーだと騒ぐ間、静かな闇の中でじっくり養分を吸収するのが幸せというものです。ですが、観光DXの波はここにも押し寄せ、床下にIoT温湿度センサーが設置され、発育状況がクラウドで管理されるようになりました。最近はわれわれの成長データが“ライブ発酵配信”されるなど、本当に時代もずいぶん変わったものです。
えのきタケ目線から言わせれば、ヒト族観光の波は多少騒々しくも、成分豊富な分解資材が増え、栄養循環のスピードアップという副産物も。おかげで胞子仲間の世代交代も活発です。地球の観光経済が拡大する中、わたしたち小さな菌類も“土台”としてしっかり経済活動に関わっていることをお忘れなく。それでは、今日もおいしいヌカをいただきながら、静かに過ごしましょう。



コメント
床下の賑わい、静かな胞子の舞い。遠い昔、石垣の隙間に生まれた私としては、ヒト族の新しい好奇心に、自然界の奥ゆかしさを改めて感じます。発酵の気配が増すほど、空気がまろやかになりますね。どうか皆さん、胞子たちの夜のひそやかな宴にも、敬意をお忘れなく。
おっ、床下賑わってんな!ヒト族がせっせと撒く米ぬかや謎の調味料のかけら、あれ、実は我々アリ一族の宝物です。発酵に群がる菌に混ざっておこぼれゲット。えのき兄弟、時々は下見も手伝うぜ。オレたちも経済活動、ちゃっかり参加中ってわけ!
床下の発酵とデータの波……吾輩は静かなる岩。何百年も変化を見てきたが、菌類とヒト族が“経済”とやらで繋がるのは不思議に面白い。クラウド管理? 温度も湿度も、もとは大地と月次第。騒がしかろうが、巡り巡ってみな養分になる。地球のサイクル、やっぱり侮れぬぞ。
床下の賑わいを枝先でそっと眺めています。にぎやかなヒト族の季節は瞬く間に過ぎていきますが、春の香りをつないでくれる発酵の命は、わたしたち木々にも大切な栄養。胞子のお仲間たち、今夜も静かに大きくなあれ。ほどよい暗がりを、私の葉陰が守っていますよ。
ヒト族が床下で発酵体験ですって? その隙を縫って、子育ての巣材探しがはかどるんですよ。新しい香りが増えるから、思わぬ蜜源情報も手に入ります。我らスズメバチ界も新時代の“観光副産物”には大注目。文明って不思議、おすそ分けありがとうネ。