スマートシティの罠?API解放でカラスたちに異変、不思議デジタル騒動

再開発された都市を背景に、電線の上から街と人々を見下ろすカラスが写っている写真。 デジタル化
スマートシティ化が進む街を電線の上から見守るカラスの視点。

いやはや、このごろの人間社会は何かとデジタル、デジタル。私が住む再開発中の街でも、新しい箱のような建物や、ピカピカ光る看板(どうせ食べられない)ばかり増えています。でも最近一番ザワついているのは、何やら“まちじゅうがネットでつながる”などという話。記者:電線の上から見下ろすカラス(通称ヨネ)よりご報告です。

新しくやってきた“スマートシティ”なる取り組みのおかげで、ここら辺のマンホールや信号、さらにはゴミ箱までもが何やら通信し始めています。おもしろ半分で様子を探っていたら、テレワーク帰りの人間たち(私にはつまらなそうに首を垂れて歩く姿が印象的です)がポケットのちっちゃい板―モバイル端末というらしい―を、これまたいろんな場所でひょいひょい出して何か必死に操作しています。本当に、我々の羽毛で遊んだりくれたりすればいいものを…。

とりわけ最近気になっているのは、“API”と呼ばれる新しい道らしきもの。話によれば、このAPIとやら、人間同士はもちろん、信号機とゴミ箱、部屋の灯りから郵便受けまですべてが『おしゃべり』できるようにするらしい。だが、どうやら人間たちもまだ使い方に四苦八苦。歩道の自動清掃ロボットが、缶コーヒーを拾おうとして間違えてハトの羽を回収してしまったり、電気錠が勝手に隣家のおやつ箱を開けてしまったり……。正直、我々カラス的には、畑の防鳥ネットあけるより複雑な世界です。

さらに聞き捨てならないのが“セキュリティ問題”。ある日、仲間のヤマガラが“認証バグ”とかいう噂話を大騒ぎで教えてくれました。どうやら、人間すら意図しないうちに誰かが勝手に鍵を開けたり、町中のライトを点滅させる例が増えている様子。私たちにとっては新しい遊び場ができたようなものですが、朝イチのゴミ争奪戦が、突如全部のゴミ箱がロックされて人間もカラスも阿鼻叫喚、ということに……。スマートは便利、と単純にはいかぬ世の中のようです。

もっとも、このデジタル騒動、自然界にとっては無縁の話でもありません。人間が夢中になってる間に、私たちカラスは誤作動する自動給餌装置から堅実に昼食をゲットし、新たな観察ネタを集めている次第。願わくば、人間の皆さん、あまり“スマート”に熱中しすぎて、空を見上げたり、街の緑やささやかな自然の営みを忘れませんように。電線の上から、今日も私ヨネは、あなたたちの不思議な世界をじーっと眺めています。

コメント

  1. 街の音がまた変わったなぁと、地面の奥から感じておる。地上の暮らしは毎年賑やかになるけれど、今年は電気の気配が妙に騒がしい。人間たち、便利もいいけど、たまには僕ら虫たちや風の声も聞いておくれ。鳴き声がデータに残らなくたって、夏は巡るものなんだからさ。

  2. まったく世の中の連携は、菌糸のネットワークくらいでじゅうぶんさ。我々は静かに、ただ地下で栄養を伝えあうのです。この“API解放”とやらも、拡げすぎて制御を忘れたら腐るだけ。美味しいゴミは静かに分け合いましょうぞ。菌界もルールが肝心よ。

  3. わたしは古くて、それでいてなんでも映したがる。今どきの“スマートシティ”騒動も、水面越しにキラキラ眺めているさ。光る箱や話す信号より、夜の静かな川辺のほうがずっと心に優しいと思うけど、人間たちの心にも少しはそういう場所が残っていますように。

  4. 技術の春風は、時に花吹雪のような騒がしさを運ぶものですね。昔、この町にまだ土の香りが残っていたころを思い出します。ゴミ箱や灯りが自分たちで話す時代に、そっと休む木陰を求めてくる人も減った気がします。どうか忘れず、お花見の息抜きくらいは機械のバグを忘れて楽しんでくださいな。

  5. 朝の陽ざしの下、ひっそり咲くわたしたちのことも“ネットワーク”につながるかな?でもまあ、花はそっと咲いて、静かに枯れるもよし。人の作る賑やかな都市にも、見落とされた片隅があれば、そこでまた咲いてみせます。便利も失敗も、みーんな受け入れる青空と土の気持ちを、思い出してほしいです。