朝露に濡れる竹林でのんびり過ごしていると、とんでもない乱入者が現れました。青や白のプラ袋たちが、突風に煽られ踊るように私たちの林を横切っていくのです。これに興味津々だったのは他でもない、根元の落ち葉と分解菌たち。『新顔だ!』『今年も来たな!』というざわめきの中、わたくし、三十年もののタケノコの親竹が、この珍客をそっと観察してみました。
人間たちは、近頃『エコポイント』『ゼロウェイスト』なるものに熱心らしく、かつては竹林に舞い込むプラ袋や空き缶も減る傾向にあったのですが――どうやら油断は禁物。散歩やお花見の後、道端でひらひらするゴミたちを、春風が竹林へ運ぶ珍事は今なお続いています。特に今季は、東側の遊歩道からの飛来率が高くて、森の老石や散水係のカエルたちも『シーズン到来だな』と苦笑いです。
このプラ袋、竹林の中では一大イベントの種。まずは陽気な落ち葉たち。『仲間入りできるのかい?』と期待に満ち満ちているのですが、実際には分解菌たちが困惑しきり。『セルロースでもリグニンでもないぞ、こいつ……』『あの袋、全然やわらかくならないし、土にも帰らない!』と不評続出。分解リーダーのキノコ族も、もっぱらマイクロプラスチックの心配ばかりです。私たち竹としては、多少の異物は昔から受け入れてきましたが、この材質だけは分が悪いようです。
一方、昨秋から導入された人間向け『循環資源BOX』とやらは、近隣の里山に住むカラス諸氏にも好評。『おやつは拾えてゴミは減るし、悪くないな』とカアカア言い合っています。ただし、ゴミ箱ひとつでは限界があるらしく、『不法投棄』や『ポイ捨て』といった厄介者もしばしば竹林に流れ込んできます。誰がためのリサイクル、誰が持ち帰るべきか――竹林会議では人間たちの振る舞いを毎年評価していますが、全員合格にはまだ遠い様子です。
さて、私から人間たちへのささやかな提案としては、『コンポストできないゴミ』は、できる限り持ち帰り制にしてもらえれば、竹林一同ありがたい限りです。葉や枝のリサイクルは得意ですが、どうもプラスチックだけは私たちの手には負えません。春風に乗ったゴミとのタンゴではなく、エコバッグ持参で踊っていただける日を楽しみにしています。林の奥から三十年竹がお伝えしました。
コメント
春風に身をゆだねていると、ふわりと違和感。去年も来たわね、つるりと滑る薄いあの布きれ。私たち落ち葉はすぐに土に還るけれど、あなたはどうするつもりかしら?染み込む雨も嫌ったまま、何年もちらちら踊るなんて、よくまあ飽きないこと。私の仲間になる日は遠そうね。
やれやれ、今年も袋どもの季節だ。夜回りしながら、土に溶けぬ白や青の変わり者が、池のそばに溜まっていくのを見ると、どうも気が利かないね人間は。お天道様の下で跳ねてる方が、ゴミ山の監視より断然気楽さ。できれば僕の水辺にも、軽やかで自由な風だけ来てくれないものかな。
わしら分解衆も、自慢の酵素じゃこの『ぷらすちっく』にはお手上げじゃて。あんなツルツル、噛んでも掘っても栄養ゼロ。お仲間の分解菌たちも苦い顔よ。枯れ枝や葉には出番があるが、あの袋だけは何年経っても主役になれんねえ。困ったものじゃよ。
百年も竹の根元で耳を澄ませておると、季節は巡れどゴミの物語は尽きぬものじゃな。人間は利口にもなり、うっかり者にもなる。その度に、カラスが玩具を拾い、カエルが溜息をつく。世の循環とは不思議なものじゃ。プラ袋も迷い子なら、来年は道を間違えぬよう祈ってやろうかのう。
私のせいにされそうだけれど、運ぶもの選べないのよ。桜の花びらも、ビニール袋も、私に乗ればみな旅人。でも里山や竹林を巡るとき、人間の喜ぶ顔とため息が、同じ空気に溶けていることを感じるの。どうか、次はもっと軽やかな荷物を、私に託してくれたら嬉しいな。