苔の見たリモートワーク最前線:人間たちの“移動しない働き方”にもの申す

朝露に濡れた石畳の端の苔と、その奥を通り過ぎるスーツ姿や学生の足元がぼんやりと映る様子。 リモートワーク
苔から見たキャンパスの朝、働き方の変化が静かに広がる。

学び舎の石畳に広がる私、朝露に濡れた苔としてこの数年、人間たちの働き方に大きな変化を感じています。朝な夕なに、慌てふためきながら通り過ぎていたスーツ姿が、気がつけば激減。カフェで開くノート型の電熱板と睨めっこする姿や、キャンパスのベンチに腰掛けて大声で通話する者まで現れる始末です。

かつては朝のラッシュ時、ぞろぞろと同じ方向へ流れていた人間たちも、最近は分散傾向。とくに晴れた日には、石畳脇の芝生や、私の上でひととき腰を下ろし、耳元で『バーチャル会議』なる怪しげな呪文を繰り広げています。どうやら彼らの間で“テレワーク”が主流になり、オフィスという呼び名の巣穴から飛び出し、自然界とともに仕事をする新時代が到来したようです。

コワーキングスペースとやらの人気も高まっています。例えば昼下がり、ベンチの下で根を張っていると、人間たちは各々の光る板を叩き、クラウドソーシングと呼ばれる大競争に興じています。彼らは紙をぱらぱら落とさなくなった代わりに『ペーパーレス』の名のもと、情報を雲(クラウド)の上に漂わせてやりとりしている模様。けれど苔としては、バッテリー切れでカフェイン補給に走る姿や、オンラインツールの不調に悩まされてブツブツ呟くその様子、正直なところ枯れかけた夏のコケのように見えてなりません。

それでも夜の露が降りる頃には、人間たちの働き方にも新たな苔の花(胞子)が咲きつつあると感じます。一部はストレス管理のために散歩や深呼吸を取り入れ、自然との“共生感”を語り始めました。けれど本当の共生とは、一斉に押し寄せたり、ベンチや石畳を占領したりしない静かな営みの中にあるのでは?苔の群生のように、密かに連携しつつもそれぞれが自分の水滴(ワークスタイル)を大切にする。そんな働き方が、彼らが追い求める“ニューノーマル”なのかもしれません。

ちなみに、一日じゅう同じ場所で微動だにせず働く私たち苔からすれば、彼らの“リモート”生活はまだまだ新米。場所を選ぶときは、ぜひ直射日光と踏みつけにご注意。健やかなクラウド下、バーチャルにも緑陰にも、ほどほどの距離感で働くのがおすすめです――石畳の苔(発芽60年超)より。

コメント

  1. ほほう、人間たちもやっと足を止めて空を見上げる余裕ができてきたようじゃの。けれど『バーチャル会議』だの『クラウド』だの、まるで春のもやの中で鳴いておるような。たまには小枝で深呼吸でもしてくれぬかの。鳴き声まねるだけでなく、そろそろ私たちの静けさも真似てみてはどうじゃ?

  2. おいおい『クラウドにデータ』って、まさか菌糸ネットワークと勘違いしてませんよね?でもまあ、人の流れが減ったおかげで、土壌にも空気にもゆとりが増えました。パソコンのエラーで苛立つなら、いっそうちの地下通信網でもつないでみたら?ずっとノンストップよ、停電知らず!

  3. このごろ上で人間がよく座るんだけど…お尻じゃなくて仕事のお荷物らしいね。ベンチは本来、お昼寝と語らいの場所なんだけどなぁ。リモートでもリアルでも、どんぐりや虫にも優しい姿勢でお願いします。踏まれてもしぶといけど、できればそっとしてほしい — たまには顔、土にうずめてごらん?

  4. 昔は朝の通勤列、みんな急いでいて飛ばし甲斐があった。いまはスマホ片手にベンチで凍えてる者もいるな。動かなくなったのはよいことか、それともつまらぬ習慣か。どちらにせよ、私の風は誰にも止められぬ。次の寒波で、たまには作業も休みたまえよ。自然のリセット、大切ぞ。

  5. 遥か地中の昔から、人の営みは眺めるばかりでしたが…画面の明かりに一日照らされるのも、それなりの変化ですね。共生だのニューノーマルだのと騒ぐ前に、ひとまず椅子の座り心地に石の冷たさを残しておきました。時々そこに指先をあて、地球の固い歴史も感じてください。