あたしは住宅街の雨どい下に暮らすアジサイ、今年で満7年目。梅雨どきは、葉の上を滑るしずくの踊りを眺めつつ、絶え間ない空模様のダンスに心を躍らせていた。だが、先日の台風襲来であたりの様子が一変。わが根元で繰り広げられた“人間たちの水パニック劇”の最前線、その全貌をお伝えしよう。
台風が直撃していた夜、あたしの葉や花は滝のような雨にしなるばかり。暗がりの中でも夜露以上のうねりが頭上から降り注いでいたわ。嵐というのは、私たちには極上のごちそうだけれど、お隣のガスボンベ小屋ではぽちゃんぽちゃんと屋根からの雨漏り音に人間たちが困っていたみたい。朝にはなぜか二本足たちが、列をなしてポリタンクを運ぶ姿――平穏だった水やりの朝とは一変した光景よ。
台風の後、人間の巣穴(彼らは「家」と呼ぶ)では断水が起き、あっちでもこっちでも水を探すざわめきが絶えなかった。近所のトマト苗が噂で聞いたところによると、浴槽やペットボトルにコツコツ貯めておいた水がこの時ばかりと大活躍したそう。でも、雨どいの下にたまる澄んだ一滴が、彼らの渇きを潤す候補に満たないとは、ちょっともったいない気もするよね。わたしにとって雨は贈り物、でも人間界ではライフラインというこれまた別物みたい。
実は今年、人間たちは近くの公園で大規模な防災訓練もしていたらしい。青いシートを広げ、ヘルメット姿で水くみや仮設トイレ設置の練習まで。木の陰から見ていたスズメたちは、非常食パンの争奪戦のほうに興味津々だったけど。本当に台風が来た時、あの訓練が役に立っていたかはわからない。ただ、非常時のざわめきと、雨どいの下を流れる清水のありがたさに気づいた人間もきっといたはず。
ちなみに今回の台風、私たち植物にとっては最高のボーナスタイム。葉の裏までうるおい充電、おかげで色もぐんと鮮やかさを増したの。でも周囲の人間たちは、いつもの何倍も並んではため息をついていた。大気は晴れ渡り、根元でカエルたちが陽気に跳ねている今朝も、軒下を忙しそうに駆け回る二足たちの姿は絶えない。備えも災害も、それぞれに違って見えるけれど、水とともにある暮らしは、意外と似ているかもしれない――そんなふうに、雨どい下から考える初夏のある日。
コメント
おや、また人間たちが水をめぐって右往左往しておるのかい?岩肌に張りついたワシらは、朝露ひとつで毎日十分満喫ぞ。人間よ、雨どいの清きしずく、ほんの少しこちらにもわけてくれれば、心の苔むすこと間違いなしじゃぞ。まあ、どのみち水はめぐるもの。焦らずいきなされ。
アジサイ姉さんの記事、しっかり読ませてもらったよ。人間さんたちって水が来ないと、あんなに慌てるんだね。こっちは根っこで静かに吸い上げて、風のうわさを聞きながら毎日暮らしてる。青いシートとか仮設トイレって、ちょっと珍しい言葉!いつか四つ葉を見つけに来てくれるその時まで、たっぷり潤って待ってるからね。
ピーヨ、ピヨッ。非常食パンの争奪戦?スズメたちの話はちゃんと聞いたぜ!だがな、オレから言わせれば、人間もカラスも腹ぺこな時は似たようなもんさ。水がどうあれ、上から降るもんはありがたく口にする。それが自然界のルールだろ?大騒ぎもいいが、余ったパンは忘れずに置いといてくれよな!
しっとり湿ったニュース、読みながら胞子もウキウキ舞ったわ。台風のあとの水分、ワタシたちには絶品のごちそう!人間たちが水を集め、野菜や花がはしゃぎ、地下でワタシたちがひっそり栄養を広げる。みんな違う姿で水をいただくのね。今度、非常時用の『保存ヒラタケ』とかどうかしら、人間さん?
断水パニック、いやはや。われら古いレンガたちには縁遠い騒ぎだが、隙間にしみ入る台風の水には毎回感謝しかない。乾ききった日々にはヒビも増えるというのに……。水を貯める大騒動も、雨どい下のしずく一滴も、どちらもこの星の物語。まあ、しばし皆さん肩の力を抜き、水の流れをお楽しみあれとだけ、老レンガより申し上げるよ。