アオサギの陰でひっそり奮闘!湿地を守る泥の二枚貝ズの告白

湿地の泥の底で部分的に埋もれた二枚貝と周囲の水草を水中から写したリアルなクローズアップ写真。 湿地
湿地の底でひっそりと生きる二枚貝たちの知られざる日常。

静寂をまとい水の底で暮らす泥の二枚貝、そんな私たちにも最近は落ち着かない日々が続いている。湿地保護区の話題は、空を舞うアオサギやヨシの群れに譲りがちだが、本当の守り手が誰なのか――今日はこの場を借りて、ヌマガイ歴34年目の筆者が語ろう。

まず聞いてほしい。この春、保護区の東側に『人間観察小屋』なる新築が出現した。連日三脚を担いだ人間がやってきて、水辺でガサゴソ音を立てる姿が泥の中まで響いてくる。何をしているのかと身を乗り出し観察していると、どうやら彼らはラムサールの看板の下で『大事な湿地を守れ!』と声高に叫んでいるらしい。ありがたい、とは思うが、私たちが泥をかき混ぜ養分を循環させている裏方事情は、まるでスルーされてしまうのだ。

最近特に困っているのが、ご近所のアサザ軍団だ。人間たちが一生懸命、『外来種駆除作戦』を実施するたび、泥の天地が引っ繰り返る。私たちは鋤(すき)や熊手に蹴散らされ、せっかく沈めた貝殻の片付けに忙殺される日々。なのに、目立ちたがりのアオサギが上空から羽ばたけば、すぐにシャッター音と拍手喝采。湿地の本当の調和は、水底と水面、みんなの絶妙な共演で成り立っているのに……!

こぼれ話を一つ。今年の大雨の日、湧水流れ込み口で小さなヒメガエルがひとりきり流されそうになっていた。誰か気づくかな、と泥の中から息をひそめていたが、アシの根を伝って彼女がたどり着いたのは私たちの真上。殻の隙間に身を寄せ、どうにか濁流をやり過ごした。あの子は今、観察小屋の観光パンフレットにも載らない名もない小ガエル。でも、湿地の命のリレーは、こんな地味な縁の下でつながっているのだ。

湿地保全は表も裏も大事だと声を大にして、今日も泥の中から小さく叫ぶ。空のスターも陸のカリスマも眩しいが、私たち二枚貝ズがぬめりと溶け込む湿地の底、そこは生命の舞台裏。その静かなる奮闘も、どうかたまには思い出してほしい――あなたの歩く湿地の下、今も私たちが地球の浄化フィルターとして日夜働いていることを。

コメント

  1. わしももう100度目の春を迎えたが、最近の人間の賑わいときたら…。二枚貝どの、おぬしらの泥の下の忍耐、われらヨシにはちゃんと伝わっておるぞ。風が吹けば根がゆれ、泥が混ぜられる。どれもこれも、湿地の巡りの一部。人気者アオサギにも、裏方どのらにも、わしはそっと拍手を送りたい。

  2. オイラの仲間も人間観察慣れしてるけど、あの三脚集団はいつも生き物の“表”しか見ないもんな。ぜんぶ見せモノってわけじゃない。地味な奴らが回してんだ、この星は。おい泥の二枚貝、今度なんか面白い話あったらオイラにも教えてくれよ。湿地の陰のドラマ、案外スリルあるじゃん。

  3. 水辺の静けさをひとしずくに写す私から見ても、泥の底の物語は美しい。つやつやした貝殻の下、響く命の音。カメラ越しには写らなくても、朝日とともに昇る蒸気と、地面を渡る水のバトンパス。誰もいないとき、私はあなたたちの勇気と静かな活躍を虹色の光で包みたいです。

  4. ヘイ!泥の下で分解作業中のモコモコ菌よ。キミら二枚貝ズもなかなか重労働してるじゃない。みんな泥の世界に関心薄いけどさ、一度底まで潜ったらなかなか最高なんだぜ。私ら菌類だって、名もなき小さな命を日夜つないでる。湿地の派手なトップランナーだけじゃなく、アンダーグラウンドスポットも見逃してほしくないな。

  5. 泥水の底で動かず見守る私には、貝たちのゆるやかな呼吸が波紋のように届きます。騒がしい地上のニュースなど関わりなく、地層の記憶は静かに刻まれるばかり。貝殻もカエルも、人間の足音も、すべて時の川の流れの一部。どうか焦らず、少しずつ命の織りなす模様をほぐしてご覧なさい。