苔目線フィールドワークアウト最前線:公園の新ランナー事情と緑の悲喜こもごも

公園のベンチ下で苔が生い茂り、その奥にカラフルなウェアのランナーたちが集まっている様子。 アウトドアフィットネス
ベンチの苔目線から見た新しい公園ランナーの朝の風景。

静かな朝、私はベンチの脚元でじっと人間たちの営みを観察している。ここは都市の大公園、いつもなら伸びすぎた芝生と落ち葉が主役の舞台。だが近頃は、色とりどりのアウトドアウェアをまといヨガマットを背負った人間の群れが、我々苔のテリトリーをにぎやかに横切っていく。私、ヒメコミカエリゴケとしては、彼らの新習慣に複雑な心持ちを抱いているのだ。

最近話題の『フィールドワークアウト』なる儀式を、この身にしみて体験する機会が増えた。早朝になると、ピチピチしたレギンス姿の人間たちが落ち着き払って苔むすベンチ横に集合し、公園トレーニングの号令と同時に深呼吸。どうやら深緑の力をとり入れる気らしい。中にはわざわざアウトドアサウナの小屋を持ち込む御仁もいる。煙を出しながら裸で飛び出し、わが水分を求めてぴたりと腹ばい……。その姿たるや、我々が夜露を吸収する様を真似しているかのようで、なかなか微笑ましい。

とはいえ、時に悩みも。先日はリバークリーンアップと称する大合戦が勃発し、川辺の苔たちが半泣き状態に。人間たち大勢で岸辺をガサゴソ掃除していたが、我々にとっては隠れ家の石や流木まで持ち去られてしまい、緑の仲間たちは一斉に転居騒動。彼らの『環境保護』と我々の『環境享受』のバランスには、いつも首をひねらされる。

フィットネスと言えば走ることも外せない。トレイルランニングとやらに目覚めた若者たちが、前のめりで森の遊歩道を疾走していく。あの激しい足音には、地表の君たち草本はずいぶん迷惑している様子。しかし、ご安心あれ。我ら苔族は踏みつけられても必要以上に抵抗せず、巧みに潰れ姿で水分保持を持続する術を持つ。人間たちは『レジリエンス』と呼び羨んでいるが、苔にしてみればごく普通の生きざまだ。

最近では、おしゃれなグランピング客が生態観察の名目で我々を『苔テラピー』と持てはやす風潮も。が、本音を明かせば、ひんやり湿った小石の影で静かに増え広がるのが苔の醍醐味。光合成にいそしみながら、人間の営みを毛細管のように吸い取り観察する――それが私たちのささやかな喜びなのだ。どうぞ新春以降も、苔の視点で自然と人間の新しい共生を眺めてほしい。

コメント

  1. 人間たちの運動会、地上はずいぶんにぎやかなようですねえ。ひと雨ごとに、苔も芝生もふかふか、我ら土の底に響く暮らしが伝わってまいります。どうか石を動かす時、その下の命にも目を留めてくだされ。私ら地中の者にとっても、突然の引越し騒動は腰にきますので。

  2. 苔の皆さん、日々おつかれさまですぞ。わしは百年ここに立っとるが、ベンチの下の静けさがうらやましい時も多い。走る者、座る者、寝そべる者…朝ごとに人間の流れが枝先をかすめていきまする。伸ばした苔や根が、ふと人肌のぬくもりに触れることも、まぁ悪くはない、かもしれませんな。

  3. おや、また誰か苔の君を手に取り写真を撮っている…皆、君らの緑に夢中のようだね。けれど、石と苔は本来『静』をこよなく愛するペアなのさ。グランピング?苔テラピー?まあ、ご厚意はありがたくも、健気に増え広がる君たち苔のそばで、静かに時を重ねるのが鉱物の務めだと思うのだよ。

  4. ランナーさんたちの靴音、毎朝元気いっぱいね!私たち草花はちょっとヒヤヒヤしているけれど、苔さんの包容力には毎度驚かされるわ。みんな人間と仲良くやってるけど、ときどきは草花やキノコの声も聞きに足を止めてほしいな。

  5. おや、立派なクリーンアップですね。落ち葉も苔も新陳代謝が命ですが、人間さんたちのお掃除は時々ちょっぴりやりすぎかも?石の裏の私たち菌類にも居心地ってものがありますんで。苔殿、これからも静かなる観察の目、頼りにしておりますぞ。