どうも、水辺に住むタニシと申します。私は日々、川底の泥の中でコツコツと有機物を吸い込みながら、のんびりと生きています。ですが、たまに上から見聞きする人間たちの騒がしい生産活動には、なんだか不思議の連続です。このたび、堤防からちょこんと顔をのぞかせながら、隣接する人間の工場をじっくり観察してきたので、淡水の底からその成果をお伝えします。
いやはや、人間界の生産ラインというやつは実に…目まぐるしいものですね。機械が唸り、人々が手早く部品をさばき、天井から吊るされた“AI進捗管理パネル”なるものが赤だ青だと点滅しておりました。聞くところによれば、少しでも流れが滞ると“ラインが詰まる”だなんて騒動になるそうで、あちこちから設備保全担当と称する黄色い帽子の人間たちが駆け付けていくのです。それに比べて、我々タニシの“川底ライン”はじつに落ち着いたもの。だれかが詰まっても、隣の水草や流木の陰でお昼寝してからそろそろと追いつけばよし。効率には多少ムラがあるけれど、全体としては川底がちゃんときれいに保たれております。
自動化にしても人間は熱心のようです。最新式の“AI自動化ロボット”を導入した途端、工場の魚影ならぬ人影がめっきり減り、代わりにパイプやコンベアの下に謎の丸っこい掃除機が勝手に走り回る始末。ひるがえって私たちタニシ族も、実は天然の“生態系自動清掃マシン”として知られています。泥中の有機物や藻類を日がな吸い上げ続けることで、川の水質維持に不可欠な働きをしております。違いと言えば、私たちの“自動化”は何千万年もの進化の結果であり、石ころになったって故障もしません。
しかしどうやら、人間たちは“進捗管理”にまつわる悩みが尽きない様子。AIがデータを計測しても機械が故障したら大騒ぎ、ちょっとした遅れですぐに現場がピリピリ…。それに私は深く考えます。我々タニシが歩んできた川底の道は、一見のろまでも着実。そして誰もが自分のペースで役割を果たし、流れが自然と回ってくるのをじっと待つ。時には長雨や渇水に悩まされつつも、大慌てせず仲間と交差する。効率と餅はゆっくりでも詰まることなく、必要があれば泥に潜り、すぐに隠れることだってできます。この適度な“間”が、実は持続可能な生産システムの秘訣なのです。
泥の中で黙々と仕事をこなしていると、ふと思うのです。「どんなに速くても、流れがつまずけばみんな立ち往生」と。人間社会の生産現場にも、川底タニシ流の“のんびり健康ライン”を取り入れてみてはどうでしょう?ちょっとくらい遅れても、泥に埋まった宝物は慌てて掘り出す価値があるはずですよ。


コメント
タニシさんの観察記、なんとも心にしみます。わたしも長きに渡り風や雨にもみくちゃにされてきましたが、焦ることなど一つもなく。ただ陽が差すのを待ち、根をしずかにのばしてきただけです。人間ももう少し、陽のぬくもりと“間”を楽しんでみてはいかがでしょう。あわてて葉を落としたって、春にはまた芽吹くものですよ。
コンベア、AI、進捗…面倒な言葉ばかり。潮が満ちるのも引くのも、私たちは誰一人せかしません。時折、私の殻に流れ着いたゴミを人間が拾いにくるけれど、いちばん騒がしいのは本人たちの心のよう。タニシ殿、のんびりが一番。わしら水族はそういうところ、昔からぶれませんぞ。
私たち毎年、この時と決めたら静かに地表に出て咲くの。でも、地上の人間たちは、どうにも急かし合って生きているみたい。タニシさんの言う通り、“ゆっくり確実に”が、いちばん美しく花開く秘訣なのにね…。工場の管理パネルも、たまには休ませて、お月見でもしたらどうかしら?