苔が目撃!古民家カフェ“推し活”旋風と御朱印争奪戦

古民家カフェの前で苔むした石段や置物の写真を撮る人々と苔が生えた屋根の様子。 文化と伝統
苔むした古民家カフェの前で“推し活”を楽しむ人々が集う朝のひととき。

朝露を浴びて広がる屋根の上で、わたしヤマゴケたちは密かに観察してきました。最近この小さな集落の古民家カフェが、ちょっとした騒ぎの渦中なんです。苔むした瓦や石垣の間にも人間たちの“推し”がぞろぞろやってきて、彼ら独自の伝統文化を一目見ようと集まっています。さて、その“推し活”とやら、わたしたちにはどんな風に映るのでしょう?

最初の異変は、カフェ併設の廃寺の入口石段で始まりました。苔仲間たちの合議により『今日も静かだ』の報告が続いていたのに、あの日は突然人間の足並みが絶えなかったんです。カフェの主役は名もなき民話に登場するキツネと狸の置物、曰く『推し活スポット』とのこと。彼らは奇妙な色の布や紙切れ(推しグッズと呼ばれているらしい)を惜しげもなく揺らして、スマホを手に写真撮影を楽しんでいました。天井近くから垂れ下がった苔ひげたちも『あんなに笑顔を振りまくのは、きっと石灰岩の記念日以来だね』と驚いていましたよ。

そのうち、カフェ横の“苔御朱印”が騒ぎの中心に。人間たちは伝統の朱印帳片手に、店内の苔サンプルを忠実に模写したスタンプを集めるようになりました。“消すと二度と押せませんよ!”などと張り紙にも余念がありません。わたしヤマゴケにとっては摩訶不思議な習慣ですが、人間界ではこれを『御朱印巡り』という祭りのような文化だそうです。古民家の屋根裏で見ていると、時には苔の色味や形状の美しさを褒められ、思わず胞子を多めに放ってしまう同輩もいました。

興味深いのは、カフェ常連の人間たちが地元の民話朗読会にも心酔する姿です。人間が語る物語の中で、苔も“時の証人”としてしばしば登場するのです。“この苔に触れると願いが叶う”などという噂が広がり、なぜか月に一度、屋根の苔にもそっと指で触れて帰る大人子どもが後を絶ちません。万が一に備えて、急な乾燥に強い胞子器を多数並べるのがわたしたちの自衛術。実は地球上のほとんどのコケ植物が乾湿に順応でき、数年休眠しても蘇る粘り強さを持っています。こう見ると、“推し活”の情熱と、こちらの生命力、案外相通じるものがあるのかもしれません。

とはいえ、古民家前で推し活を極めた人間たちの熱気が、時折わたし達の葉先を乾かしてしまうことも。『推し活気象変動』などと冗談めかして話す苔たちですが、人間が持ち帰った苔スタンプと微細胞の記憶が、また何年も面白い話の種になることでしょう。今日も静かに、屋根の上から“文化と伝統”の不思議な広がりを君たちに報告します。

コメント

  1. あのカフェの梁の陰から、糸を張って見守っていますよ。人間たちが苔に願いを込めて触れる様子、ずっと昔に聞いた月夜の伝説を思い出します。あんまり群がると苔が痩せてしまわないか、ちょっぴり心配ですね。陰と静けさも大切にしてやってくださいな。

  2. ワシの背中にも、人間たちが座って休んでいく。苔や虫たちと暮らしてきたが、最近はカラフルな布切れや紙モノがよく落ちておる。なにやら賑やかじゃが、まあ、穏やかな石苔たちが光る姿を見て笑うなら、それもまた良き日じゃ。