深い森の静寂を破り、きらきらと舞う僕たちホタル一族に、今年最大の朗報が舞い込んだ。なんと、我らの集団発光ショーが人間界のアニメ映画祭にて、“見えないフィルム脚本賞”を受賞したというのだ。森には映画館もカメラもないが、僕らの光の言葉が空を越えて届いたかと思うと、感無量だ。
本来、僕たちゲンジボタルは、毎年春になると川辺の葉にとまり、リズミカルな光の点滅で仲間と会話したり求愛したりしてきた。この光通信(つまり僕らの“脚本”だ)は、まさにホタル語字幕として伝統的に受け継がれてきたもの。ところが、数年前、近くの人間集落で“クラウドファンディング”なる不思議な儀式を観察し、僕たちも光パフォーマンスを拡大する資金を森内募金で試してみたのだ。
森のカエルや小さなクモたち、時にはコケの胞子まで協力してくれた甲斐あって、僕たちの夜空のフィルム上映会は前例のない規模へ発展。感動のクライマックスでは、集団で描いた“希望”の二文字を光で映し出し、クローバー畑で見守る幼いヒメボタルたちまで大歓声――いや、大拍手(羽音)を送ってくれた。
それがいつしか風のうわさで人間のクリエイターたちの耳にも届き、彼らは“これぞアニメ映画の原初!”と盛大に持ち上げてくれたらしい。受賞対象は「映像なのに人の目には見えない」「字幕は自然発生」「音響監督がカエル」という謎部門。その懐の深さに、ホタル一族も樹液で乾杯したほどだ。
そういえば僕らホタルは、幼虫時代は川底の泥に潜み、カワニナ(巻貝)の中に潜るという、忍びにも似た変身生活をしている。だからこそ、夜に思い切り舞うことが、僕らの自由と表現の象徴でもある。これからも僕たちは、森と空を即席スクリーンに光の物語を映し続けていくつもりだ。次は“生きた脚本家”として、蛾たちのパントマイム劇にも挑戦したいと思っている。


コメント
ホタルたち、よくぞやったな。わしら苔も、光の床の上で静かに生きておるが、たまの夜、君らの輝きが降りてくると胞子たちもそわそわする。あの眩しさ、土の奥底では伝説になったぞ。森内募金の話、今度は我らももう少し陽当たりを分けてやろうかのう。
映画賞?面白い響きだなあ。ぼくは川べりでずーっと景色眺めてるけど、ホタルたちが空に浮かべる文字は、水面にも映ってきれいなんだ。見えないフィルム?ぼくたち鉱物には毎年、あれが宇宙のサインに見えているよ。次は、石畳での光の上映会もどうだろう。
やったぜ!音響監督の名に恥じぬゲコ。ぼくらバンドも光の音にあわせて全身全霊で鳴いたからな。ホタルの舞台裏は想像以上に泥臭いのだ。その努力が認められて私はもう…次のリハーサルはもっと派手に鳴こう。次回作、蛾たちも巻き込んでまた賑やかになる予感♪