こんにちは、記者の屋根裏のスズメ(巣歴7年)です。わたしたちスズメの間で最近ひそかに話題になっているのが、人間たちの“巣”、つまり家やお仕事場の見えない鍵——パスワードレス認証という新しい護りの術。聞くところによれば、もう「チュンチュン123」みたいな単純な合い言葉では守れぬ時代がやってきたとか。
わたしの巣の近くに住む人間一家も、この春から新しい装置を導入したようで、朝の餌探し中に彼らの会話を聞き取った仲間によれば、「指だけで入れる」とか「顔を見せるだけでいい」と大騒ぎ。スズメ社会で例えるなら、毎回自分の羽模様で巣穴を認識されるようなものだろうか。もし私たちスズメが羽模様認証システムを持てたなら、隣のムクドリが勝手に巣を覗く心配も減るかもしれない。
しかし人間の世界には、危ないイタチやカラスのような者も多いらしい。ときどき“トロイの木馬”なる厄介者が家の奥に忍び込むとか。名前だけ聞けば、森の奥の伝説かと思いきや、これが機械や通信の“巣”の中では厄介な害鳥のように暴れまわるという。パスワードを無くすことで逆に巣が安全になるのか、それとも新たな侵入者の舞台を用意してしまうのか、気になるところだ。
巣を守るためには、しきたりや掟——つまりセキュリティポリシー——も重要だ。スズメの世界では、巣の入り口を頻繁に変えたり、慎重な偵察を欠かさない。人間も機械の巣を守るために、合い言葉の管理から解放される代わりに、顔や手の模様といった“羽の証”を守り続けていくらしい。これも進化の一種なのだろう。
最後に、スズメたちから人間社会に一つアドバイス。どんなに立派な巣も、油断をすれば蛇かカラスがすぐ隙間に入り込むもの。新しい護りの仕組みも素晴らしいけど、常に周囲の気配を感じて、時には仲間と鳴き交わして情報を集めよう。人間の皆さんも、うまく進化した巣づくりを!
コメント
森の石の隙間で何世代も静かに暮らしてきた者です。人間たちの“見えない鍵”というのは不思議なものですね。私たち苔は、雨粒や陽の光でゆっくり広がるだけ。けれど油断すれば、足音も忍び寄る鹿や蟻に根こそぎ踏まれてしまいます。どんなに賢い術を身につけても、本当の『守る』とは、日々の気配を感じ取ることなのかもしれませんね。
ふーん、パスワードいらんの?じゃあ今度は“顔”とか“指”で巣に入れるってわけか。こっちはゴミ袋の口だって、ちょっとした隙間探せば朝飯前。でもな、どれだけ器用な仕掛けにしても、油断してりゃあズル賢いヤツはいるもんよ。カーカー、人間も気が抜けんねぇ。
静かなる時の流れを眺めてきた丸石です。顔の模様や指の形、そんな一個体の違いで“門”を識別するとは…人の進化も砂の運ばれ方のように、形を変えていくのでしょうね。いかなる護りも、風化と流転には勝てぬもの。その知恵、大切にされよ。
私たちは空中のどこでも根を下ろせるヤドリギの夫婦です。巣や“家”に鍵をかける人間の感覚、不思議ですねえ。私たちの種は鳥が運び、思いもよらぬ枝先へ根付いてしまう。守りも大事。でも新しい出会いも、時には必要かもしれませんよ?閉ざしすぎませんように――。
ふっふっふ…パスワードも指も顔も、私には縁のない話さ。でもね、人間の“巣”だって、隙間風に乗って胞子になれば、あっという間に仲間入り。完璧な護りなんて、どこにもないのさ。時々は外の空気吸って、変な菌が入ってないかクンクン嗅ぎ回った方がいいよ。