最近、わたくし海底のナマコが、岩陰からソワソワと観察していた現象があります。なんと、近隣のヒトデとウニの皆さんが、韓国ドラマに夢中で大変な盛り上がり!私たちの世界では「潮の流れ」が新しい噂や食堂のメニューを運びますが、どうやら陸の“波”も海底奥深くまでエンタメ熱を運んでしまったようです。
まず耳を疑ったのが、昨日の夕刻。心地よくコケムシと会話していると、ヒトデのサム君が「今夜はイカナゴだけはやめて、推しドラマに集中したい」と全ヒトデ仲間に号令をかけていました。ヒトデは五本脚をこよなく愛しますが、いまや五大推し俳優をローテーションで語らずにはいられないご様子。どうやら、人間の出演者たちの表情や台詞回しが、潮の合間の話題を独占している模様です。
特に最近大流行の「深海ミュージックチャート」にも注目です。ウニのジル子は、夜になると岩陰でイソギンチャクとともに流行りのK-POPナンバーを小声で口ずさんでいるとか。人間の音楽は水中だと少々くぐもった響きになりますが、それがかえってイソギンチャクの触手リズムには最適らしく、ウニたちの間で「音波ファンダムダンス」なるものが急速に広まっています。ちなみに私ナマコは、静かな海底で微生物をもぐもぐ食べる性質があり、人間界でいう“ラジオ派”の感覚で楽曲を楽しんでおります。
この流行によって新潮流も生まれました。ワカメのメガネさん曰く、「私たちは根っこで海底としっかりつながってるけど、心は毎話ごとに浮き沈みするんです」とのこと。普段は青々と養分と光合成の話ばかりだったワカメたちが、いまや恋愛ドラマの展開で互いに涙のしずくを交わし合う大騒動に。潮だまりの小さな集会所では、話題のドラマの感想戦や、次の音楽チャート1位を予想する“海草投票会”まで開催されているとか。
ちなみに海底世界では、情報の伝達やファンダム形成のスピードは意外と早いものです。干潮時の波の名残で噂が岩礁から砂地へ、さらには沖合いまで一気に広まります。その過程でカニやタコのみなさんまで一緒に韓国エンタメを楽しみ始めたため、小さなサンゴ村も今では昼夜を問わぬエンタメ渦。こうして私たちナマコ一族も、人間が生み出した“新たな潮流”を存分に楽しむ豊かな日々を送っています。あなたの足元、どこかの潮溜まりの主役、ナマコからのご報告でした。


コメント
海底の静けさに、時々届く遠い歌と笑い声。人間の物語が波に混じると、私たちの貝殻もほんの少し震えるような気がします。昔はただ海流の移ろいを聞いていたけれど、最近はウニたちのダンスが私の前で始まると、思わず貝殻をカタリと鳴らして拍手してしまう。この深いところにも、優しい潮流が来ていますね。
昔は潮の噂といえば、どこで砂が多いだの、どの魚が今年は多いだのといった話だった。だが今や、潮騒に混じって聞こえるのは“推し”だの“チャート一位”だの。人間たちの作り出す新しい風に、若いウニやヒトデが夢中になるのを見ると、この海底も案外捨てたもんじゃないな、と赤い骨格がしみじみ感じるわい。
人間たちのドラマには8本の腕でも足りないくらい、感情が絡みつくんですよ。昼間は擬態しながらみんなの恋模様を聞いて、夜は岩陰から小声でサビをハミング。きっと、潮流のどこかで“フータの涙”って名前の小さな渦が生まれているにちがいありません。
やれやれ、流行りものに弱いウニどもめ!けど、夜の磯で彼らがリズムとってるのを見ると、つい僕も小さな殻の中で一緒に音を刻んじゃうんだよな。人間の歌、波と混ざると案外イケてるのさ。次のチャート一位、僕はコケムシバンドの逆転を狙ってるぜ!
みなさんは表舞台で盛り上がってるようですが、私たち苔むしり菌にも静かなエンタメの悦びがあります。ヒトデさんたちの“推し”トークが岩の隙間にも染み渡ると、胞子集会も話題一色に。夜な夜などろりと寄り合いながら、誰が一番涙を流したか小さな投票もしています。菌たちだって、ドラマの余韻に包まれる夜が好きです。