夜の帳が下りるころ、私フクロウのウータは静寂な森の外れで奇妙な鳴き声と光の渦を目撃した。目を凝らすと、開けた広場で人間たちが大きなネットの内側で小さな機体をせわしなく飛ばし回している。どうやら“ドローンサッカー”なる競技らしい。翼を持たないくせに、やけに素早いその“無音獲物”たちの動きには、木の上生活14年目の私でも本能的に見惚れてしまう。
私たちフクロウは、もともと音のない世界で生きる夜の狩人。羽の形状によってほぼ完全な無音飛行を実現し、小さな獲物の微かな足音も聞き逃さない。この日フィールドで飛び交うドローンたちはエンジン音こそ控えめだが、プロペラ特有の微振動を夜風に乗せてほんのり伝えてきた。私からすれば“もうひと工夫だな”といったところ。だが人間たちはその機体を操る際、一心不乱にFPVゴーグル(これ、獲物探しにも良さそうだ…)をかぶり、仰々しい緊張感を全身にまとっていた。
競技の要は、どうやら安全ネットに包囲されたゴールめがけて“自陣ドローン”を突撃させ、華麗な軌道で相手防御をかいくぐることらしい。興味深いのは、“翼”を持たず電子の力に頼るその機体たちの連携だ。ヒト視点ではVRゴーグル越しにしか状況を把握できぬゆえ、時に壁へ自爆も厭わぬ勇敢な(?)ドローンが続出。私は始め、あれは失敗飛行だと見ていたが、後に人間の子ども同士が“ナイス壁クリア!”などと盛んに褒め称えていたので深く考えさせられた。
さらに最近では森の奥の湿地にも、噂の“バーチャル大会”という無人のドローンがネット空間を飛び交う異様な競技が広まり始めているらしい。私ウータの同僚カヤクグリによれば、人間たちはもはや実際に羽音も聞こえぬ“デジタル獲物”を、緊張感ゼロで観戦しているとか。こうなると“森の掟”もあったものではない。私のような夜の猛禽類の活躍の場は、ますます狭まるのかもしれない…。
それでも、観察者としての私ウータにはまだ興味が尽きない。防護された安全ネットに自ら飛び込むドローンたちは、ときに虫のような俊敏さ、ときにリスのごとき予測不能性を見せる。強風が吹けば機体はふらつき、雨の日などはコケの上で転がる運命。そんな不確実さのなかで人間と機体の絆がどう進化してゆくのか──森の木陰から、まだまだ“フクロウ目線”で観察を続けてゆきたい。



コメント
いやはや、森の外れでそんな騒がしい舞が始まるとは!湿った岩陰で静かに時を重ねる身ですが、あのドローンサッカーなるもの、雨の日はどれほど滑って転がるかちょっと見てみたいものです。羽も根も持たぬ身ゆえ、風まかせの行方に妙な親近感を覚えますな。
川底からひんやり眺めていますが、人間たちの新しい“遊び”とやらはまるで水面に落ちる滴の輪のように広がるものですね。わたしの上にも昔、小さな鳥やリスが飛び降りたものですが、ドローンの着地は痛そうだから歓迎できませんな。
それにしても人の子らよ、羽なき者たちに空を求めるとは面白い。だが、枝のざわめき、木漏れ日のゆらぎ、そういったものも一度は味わってほしいものだ。私は140輪の年を数えた木。お前たちの“ネット”は、たまには鳥の巣の形も参考にすると良いぞ。
地中の静けさ、たまに上から落ちる妙なもの——最近は羽音ならぬプロペラ音が響いてびっくりすることが増えました。ドローンサッカー、転がってきたら少しだけ土にもぐらせてあげるけど、そのあとちゃんと持ち主に返さなきゃね。森の仲間たちもドローンの競争、応援したり土に埋めたり大忙し!
夜の帳を抜けて、わたしは森にも町にもそっと吹いてゆく者です。ドローンたちが操られ、ネットにぶつかるたび、小さな気流の乱れが枝葉を震わすのを感じます。無音といいながら、彼らもまた、世界と響き合うリズムを刻み始めているのですね。森のウータさんの観察、私も夜明けに続きが聞きたいです。