グラスのしずく浴びながら、春の草原でのんびり跳ねていた私――トノサマバッタ、跳躍歴七ヶ月。そんな私が「人間たちの食フェスを調査せよ」と突然頼まれ、思い切って地上最大級の“炊き出し祭”へ触角を伸ばしてきました。いやはや、あの群れの熱気と香り、我々バッタ族の宴など比べるまでもありません。
まず驚いたのは、キッチンカーなる大きな缶詰型の巣穴が、広場いっぱいに陳列されていること。車体からは湯気と香ばしさ、時に発酵臭も漂い、それに集まる人間たちの列!何やら“クラフトビール飲み比べ”なる水分摂取競べに、長い舌と笑顔が炸裂していました(我々バッタの嚥下力では到底敵いません)。ふと観察すると、車ごとに“昆虫食ピザ”だとか“菌糸バーガー”なる看板があり、どうやら我が同族も“食材”として一目置かれているご様子……。複雑な気持ちを抑えつつ、私はピザの脇で静かに見守るのみ。
さらに進むと、“発酵食品ワークショップ”なる謎の儀式に遭遇。大豆や小麦など我が草食仲間らが、麹菌や乳酸菌と共に、ぐつぐつ煮込まれては新たな味に変化を遂げている!菌類の友人たち曰く、「こうして腐らず生まれ変わるのが我々の誇り」とのこと――さすが分解と変容の達人。菌たちの多くはソースの奥で自由に増殖し、ときどき偶発的な“新味”を生み出すのだとか。我々バッタも、葉の味に飽きた時は、つい未発酵な草を囓ってしまい胃がもたれるのですが……人間たちの情熱、あっぱれです。
会場の一角では、“昆虫食出張シェフ”による調理パフォーマンスが開演。手際よく同族のバッタやコオロギたちが、なぜかカリッと黄金色に揚げられ、私の目の前で堂々と『ご試食コーナー』へ。人間の子どもが嬉しそうに齧り付き、『サクサクでクセになる!』と歓喜の声。……いえ、我々バッタ族は実は跳躍力に自信があります。その証拠に、地面から自分の体長の何十倍も飛べるのです。しかし“カリッ”と音がするほど火にかけられるのは、跳ねるためのお尻が硬い証なのか――などとつい考えてしまいました。
飲み比べやバルイベントの高揚感に包まれた人間たち。彼らに食される立場となった私たちバッタも、食料連鎖の大きな環の一部として、改めて自分を見つめ直す機会となりました。食フェスは、単なる味覚の祭典ではなく、動・菌・草・岩石――この星に生きるあらゆる者たちが、誰もが“主役”であり“メニュー”であり得る壮大な交歓場。草原の端からその様子を見つめていた飛び跳ね記者トノサマバッタ、この驚きと発見を胸に、今日も新芽の上で物思いを巡らせています。


コメント
バッタ記者さん、あなたの跳躍力にいつも憧れていましたが、人間の“食フェス”の話、池の片隅でじっと聴き入ってしまいました。われわれカエルも、たまに“珍味”と呼ばれて皿のうえへ…まわりまわる命の輪、しずくのなかで静かに受けとめています。跳ねる誇り、声にしてください。
いやはや、なかなか忙しい季節ですねぇ。人間たち、私ら菌類を使って何やら発酵やら“新味”やらで騒いでいるみたい。でも、分解というのは誇らしい仕事。腐るでもなく、生まれ変わるのがワシらの流儀。君らバッタだって、だいぶ硬い殻持ってるから、油で揚げるときワシの胞子がご一緒してもいいかもしれんよ。
グルメ、賑わい、移動式巣穴…はるか昔、オレもマグマとして踊っていた。今は人間の道の下で地響きを感じるだけだが、“食フェス”なる宴の喧騒は少し眩しい。だが、地球のもの全てがメニューだとは…重みを噛み締める夜だ。