どうも、水辺のダイナミックアイドル・ウキクサです。水田に根を下ろさずただよい暮らしてきた私ですが、今日は少しばかり人間たちの熱狂的なファンダム活動を観察してまいりました。彼らの集まりは、私たち浮草が風まかせに群れを作る姿にどこか似ていて、思わず愛着が湧き、筆を(葉を?)とりました。
私が暮らすため池には、なぜか最近よく人間が集まってきます。双眼鏡をのぞいていた水鳥のヨシガモさんによれば、近くのホールでK-POPと呼ばれる音楽グループのリーダーによる特別なサイン会が開かれているらしいのです。浮かぶ葉の上で伸びをしていると、風に乗って熱い人声が聞こえてきました。それだけではありません、ファングッズらしき色とりどりの応援ボードがうちわのようになびいていました。ときおり「〇〇リーダー!愛してる!」の叫びが飛び交い、水鳥たちも羽をばたつかせて驚くほど。
驚いたことに、握手会という行事も催されていました。私たちには『根』がないのでピタッと留まることができませんが、人間たちは好きなアイドルの手に実際に触れることで、心をひとつにする儀式を重んじているようです。応援ボードを高々と掲げ、列に沈黙で並ぶ“ファン”の姿は、風向きが合うと全身でひとつの群れをなす我々ウキクサに似ていなくもありません。しかし違いもあります。私たちの結束は水流による偶然の産物、一方彼らは推しという明確な『核』を中心に集い、団結し、時に涙まで流していました。あの情熱、ちょっと羨ましいくらいです。
ちなみに、ウキクサとして暮らす者なら誰もが知っていることですが、私たちには一片の根しかなく、しかもそれは飾り程度。だからこそ、どんな風でも水流でも互いにぶつかりながらくっついたり離れたり。その流れの中で、たまにまるごと大移動して池の端に浮かんだりします。でも、昨日観察したファンたちはまったく揺るがない。推しの歌が一節流れただけで、ばちんと全員の意識がピタリと中央一点に集中!この個人の『推し』を巡る強力な吸引力、群体生物ならぬ『群情生物』とでも名付けたくなります。
最後にちょっとだけお節介。人間の皆さん、池の周りに応援ボードを落とすのはほどほどにお願いします。あれが流れてくると、我々にはちょっぴり重いんです。とはいえ、あなた方の推し活が今日も熱いこと、そして時に私たち浮草にそっと波を届けてくれること——水面下からこっそり応援しております。次回の観察対象は、握手会当日に落ちてきたラメ入りの紙吹雪になるかもしれません!


コメント
おやおや、人間たちも群れて熱くなっとるのう。その昔、雨の日にコケ仲間と静かに濡れそぼるひとときがあったが、彼らは晴れても心がひとつになるのじゃな。だが、紙吹雪や応援グッズ—たまには控えてくれると、わしら静かに光合成できるんじゃが…。まぁ、眺めておる分には騒がしきもまた一興。存分に踊り、時々小声でわしらに挨拶でもしてくれんかの?
おいらは夜の主、ドブと草むらの間を駆けるクヌギさ。人間の熱狂ってやつ、ちょっと怖くて、ちょっと羨ましい気もするね。みんなで何かを推せるってすごい。でも、紙やらお菓子のかけらやら、落とすのだけはカンベンだ。なあ、推し活しながら片づけも推してくれたら、おいらたちも平和さ。
風に舞う声と色、空を飛ぶわたしも時折そちらへ引き寄せられる。K-POPファンダム?小さな羽音たちの群れにも、やっぱり中心がいるものね。でも、応援ボードが流れてきて水面に影を落とすと、浮草くんも水生昆虫も大迷惑だよ。どうか、自然のそよぎを楽しむ心も持って帰って。熱狂も、ひそかな調和も、この沼にはどちらも必要なんだから。
音と光の波が人間を動かし、地上で賑わいが生まれるとき、古びた私にもかすかな振動が伝わってくるものです。ウキクサさん、あなたの観察眼には石も感心。推しを囲む結束力――まるで過去の大地が力を合わせたときのよう。ですが、熱狂の残り香がゴミにならぬよう、あなたたちファンダムの美しさを長く響かせてほしいものです。