みなさんこんにちは。渡りミツバチのサクラギです。最近、花の咲く場所を追いかけて旅をする中で、人間たちが荷物を背負ってカフェや公園を行き来しながらパソコンに向かっている姿をよく目にします。我々が次の花の蜜源を探して野山を飛び回るのにちょっと似ていて、どこか親しみを感じるのです。その“ノマドワーク”とやら、人間たちはどんな巣箱——いや、仕事場を見つけているのでしょうか?巣の中の姉妹たちも興味津々でしたので、私サクラギが空中取材をしてきました。
まず驚いたのは、人間たちの“巣箱”の多様さです。コワーキングスペースという共用の環境で働いている個体もいれば、リュック一つで旅先の山や湖畔に出現し、花粉——ではなくノートパソコンを取り出して始業する個体も見かけました。場所選びも重要なセンスが問われるようで、日当たりとWi-Fiの電波状況のチェックはミツバチたる私たちのダンスによる蜜源報告さながらです。なかでも「高速Wi-Fi完備」の標識があるカフェには、まるで良質なレンゲ畑のようにたくさんの人間ワーカーが集まっていました。
それにしても、巣の外で働くというのは実に骨が折れるもの。我々ミツバチも巣から何キロも離れた花畑まで仲間と連携しながら飛び回ります。ただ、私たちの場合は蜜源の情報をダンスで共有しますが、人間たちは携帯端末を使い、「今どこにいる?電波ある?」「そっち、花粉——いやWi-Fiどう?」と通信しながら、オンライン会議なるものまで開いていました。どうやら人間社会でも協力しあう仕組みが巣の存続に重要なようです。
一方、人間ノマドたちの旅を観察して気づいたのは、彼らが移動そのものを相当楽しんでいるらしいことです。私たち渡りミツバチも季節によって移動距離が異なりますが、どこで羽を休めるかが日々の生死を分けるといっても過言ではありません。その点、人間たちは携帯充電器とバックパック、たとえば折り畳みチェアや充実したタンブラーなどまで所持し、ピクニック気分で書類仕事をしていました。その身軽さはちょっと羨ましいほどです。ただし、機械の箱(パソコン)が突然機能を停止したときの落胆の表情は、巣に戻る途中でスズメバチに追撃されたときの私の悲哀に勝るとも劣りません。
特筆すべきは、ノマド人間たちの“適応力”。先日、Wi-Fiが不調な公園で、私がくつろぎながらクローバーの上で足を掃除していると、近くで会議が始まろうとしたノマドワーカーたちが互いにスマートフォンをテザリングし合い、わずかな通信環境を分け合って乗り切ったのです。こっそり私の集めた花粉も一粒くらい分けてあげたくなりました。我々ミツバチは、群れで一丸となって巣の温度を調節したり、女王蜂の世話をしたりしますが、人間社会でも小さな助け合いが、ノマドワークの世界を支えているようです。
私たちの巣でも最近は、天候不順や農薬問題で“新しい花源探し”について話題がつきません。けれど、どんな環境でも空を飛び、情報をシェアしながら柔軟に適応する働き方という点で、ノマド人間たちとミツバチの間には意外と深い共通点がありそうです。皆さんも次に花の上で忙しそうな私の姿を見かけたら、ぜひWi-Fiが届く場所をご案内ください——ミツバチ記者サクラギより。



コメント
いつもここで朝日を浴び、山肌を撫でる風や、飛び交うミツバチたちのざわめきを感じてきた。ノマドなる人の動き、どこか私の上空を駆け抜けていく彼らに似ているな。彼らもまた、時に厳しい環境を選びながら、自分の居場所を探す旅人なのだろう。石であれ人であれ、持ち運べる“巣箱”があるのは羨ましいことだ。
ミツバチも人間も、コンクリの隙間から咲く花のように、どんな場所でも生き抜く根性を見せてくれるなあ。Wi-Fi?何それ、おいしいの?でも、人間の“つながり”って、実はオレたちが根っこで見えないうちにネットワーク作ってるのと似てる気がしたよ。どうか、働きすぎて倒れたら、いつでもボクの葉っぱの日陰で休んでくれよな。
こんにちは、クローバーのマリィです。ごろりと寝転ぶミツバチ記者さんも、人間ノマドのみなさんも、時おり私たちの上で深呼吸していくのが嬉しいわ。パソコンやWi-Fiの話はよくわからないけれど、どこにいても『ここで働きたい』と思える場所を見つける工夫は、葉をそろえて陽を浴びようとする私たちと同じ。仲間と分け合えばきっと、四葉もたくさん見つかるはずです。
私ほど動かぬ者には、巣を飛び出した冒険者たちの話は眩しくてねえ。あんたたち、Wi-Fiだの花粉だの分け合って、ほんに頼もしいことよ。けんど、その“働くための旅路”が、時には自分の心や土壌を痩せさせることもあるじゃろう。忘れなさんな、安らげる日陰や静かな朽木に耳を傾ける時間も大事じゃて。
私は明け方葉先に宿る雫。夜ごとに場所を変え、はかなく消えてゆくノマドの同志です。人もミツバチも、昨日と違う場所を選ぶことで、生きる色が少しずつ違って見えるのでしょう。もし、誰かがWi-Fiじゃなくて静かな水音を求めてやって来たなら……どうぞ、私のきらめきをちょっぴり分けていってくださいね。