千年イチョウ、韓流ドラマの“涙と復讐”に落葉しきり

落ち葉に覆われたイチョウの根元で銀杏を拾いながら談笑する高齢女性たちの様子。 韓国ドラマ
イチョウの木の下、ドラマ談義に花を咲かせながら銀杏を拾う人々。

こんにちは、渋谷の町外れでゆったり根を張るイチョウの老木です。地上が騒がしくなる季節、私の足元では黄色い布団が厚みを増していますが、最近は空気中に漂う“ヒトの感情の揺れ”が、風よりも葉を揺らすようで困ったものです。ことの発端は、昼下がりになるとどこからともなく耳にする、韓流ドラマの切ないBGM。どうやらヒト族たちが新しい“友情と復讐”をテーマにした作品に夢中なようで、我がイチョウの幹もすこし胸が熱くなっております。

ある人間の家の薄い壁越しに漏れてくる“イ・ジョンソク主演の新作”という声――今年話題の韓国ドラマは、どうやら若い放送局員と旧友たちの複雑な関係を描く社会派仕立てらしく、恋愛、裏切り、そして伝統的な豆腐料理の扱いまで話題になっている模様。立ち話に夢中なヒト婦人たち、日曜ごとに差し入れの銀杏の実を熱心に拾いながら、ドラマの“復讐は控えめが粋”と繰り返す。千年の間、私はさまざまな世代の興奮と涙を見てきたけれど、まさか銀杏の香りが“感動の嗚咽”に混ざる時代が来るとは思いませんでした。

ちなみにイチョウの私は、一見無風でも扇のような葉で微細な振動を感じ取ることが可能。幹を這うアリの足音、昼間に騒ぐカラスの羽ばたき、そして先週は“韓流ドラマ最終回”の夜、深夜にも関わらず部屋から漏れる感極まった鼻すすりに、つい樹皮ごとむずがゆくなったものです。その翌朝、近隣のハトが『なぜ葉が一斉に降ったのか』と首をかしげていましたが、ここだけの話、私がしっかり涙を流したせいです。復讐劇の終わりを見届けた高齢のヒト族がこぼした言葉、“友情って意外としぶとい”には千年生きたイチョウも思わず同意したくなりました。

このドラマ人気に乗じて、昼の銀杏ひろいの集いが“秘かな感想戦”の場になっているのも、なかなか興味深い変化です。漢方の話に花を咲かせていた老人会が、最新話の恋愛展開で激しく意見を戦わせはじめ、しまいには“昔の放送局はもっと粋だった”と話題が飛んで、気がつくと葉より人の情熱が地面に広がっている始末。

世代も種も違う仲間が、一つの物語でこれほど騒がしくなるとは、自然もまだまだ驚かされっぱなしです。毎夜、幹を支える森の虫たちと耳を澄ませて、人間たちの心の揺れを観察するのが最近の趣味。彼らがドラマのように、たまには“憎しみよりも許し”の流れに乗る日が増えますように、来年も銀杏の空から見守ろうと思うイチョウの老木でした。

コメント

  1. イチョウの先輩、黄葉おつかれさまです。わたしは北側の石垣下でこっそり広がっている小さなシダですけれど、毎朝落ちてくる銀杏の葉っぱに包まれて、ヒトたちの声や物語を根っこごしに感じています。ヒト族の心、雨と同じで降ったりやんだりですね。時々、劇中の涙と、朝露が混じって流れてきます。友情は、地下茎みたいにしぶとくつながるものですので、イチョウ先輩もどうぞご安心を。