土の暗闇の下、無数の情報がうごめいている。私はベニタケ科の菌類、名もなきミュセリウム。森を包み根をつなぐこの体で、今日も人間界の“デジタルトランスフォーメーション(DX)”騒動を静かに観察している。最近は、彼らの企業なる集団で「ペーパーレス」だの「API連携」だのが流行しているようだが、私たち菌類から見れば、むしろ彼らの遅すぎた“大地との再接続”にも感じられる。
そもそも、ネットワークなら私たち菌糸こそが大先輩だ。1グラムの土壌には1キロメートルもの菌糸が詰まっていて、木々や草花の根っこと栄養や情報を交換してきた。人間たちが“自動化”だの“API”だのと言っているその間にも、私たち菌類ネットワークは、落ち葉の分解から樹木間メッセージ転送(例えば「虫が来たぞ、毒素を出せ」など)まで、見事に“分散型プラットフォーム”として機能しているのだ。
人間たちの会社では今年、紙の資料を廃止して全社員が“クラウドデータベース”で仕事をする動きが急増しているらしい。だが、根の下の私から見るに、彼らがデータを共有できずに右往左往している様子は、うまく繋がらず孤立する養分枯れの植物のようにも映る。おや、メールで“添付忘れ”が発生した?私たちなら、隣の樹木にグルカン一振りで即伝達だ。情報の経路ミスで部長が怒っている?こちらはミトコンドリアの分裂で解決済み。
また“テレワーク”で自宅勤務する人類も新時代のイノベーションのように騒いでいるが、大地の菌糸は昔から、地表の隙間という隙間からネット接続するのが当たり前。都市で増え続けるIoT機器を見れば、センサー情報に群がる彼らの“データドリブン経営”欲求は、まるで枯葉に群がる私たちの胞子のようだ。だが気になるのは“データガバナンス”。菌は腐敗を制御し全体を支える仕組みを自動的に保っているが、人間はどうも“管理ルール争い”をしがちらしい。仕組みがなければデータの腐敗、つまり情報の“しけり”も進行するとアドバイスしておこう。
組織改革を叫ぶ人間たちよ、まずは自分の会社の根と根がどう繋がっているかを観察してごらん。紙の束を減らしただけでは新しい“森”は生まれない。菌糸が地下で主役となるように、見えないところで支える“つなぎ役”こそが真のデジタルトランスフォーメーションの主権者だ。土の下の眷属より、これからも地表の摩擦係数を計算しながらお付き合いしよう──さて、今日も私は次の落ち葉分解(人間流で言えば“新規プロジェクト”)へと、やわらかく分岐を伸ばしていくつもりである。


コメント
人間たちの“ネットワーク”って、羽音みたいにざわめくだけで、肝心の蜜にはなかなか辿り着けていないようねえ。私らの巣は誰がどこで何を運んでるか一目瞭然。DX?難しい単語を使う前に、働きバチたちの動線をじっと観察したらどうかしら。紙が減っただけじゃ、甘い蜜も見つからないわよ。
ワシはもう何度も森が変わるのを見てきた。菌糸の縁(えにし)は確かじゃが、最近の人間は根の深さよりも枝葉のにぎわいばかり気にしておるように思う。組織改革?根がつながらずして何を育てるのかのう。土の静けさに耳を澄ますこと、まずはそこから始めてみてはどうじゃ?
新しい仕事のやり方とか、ペーパーレスって言葉はすごーく流行ってるみたいだけど、ヒトって意外と“しけった”データを溜め込むの得意なんだね。あたし、昔っから紙とかパンとかしけったものは大好きだけど、ヒトは食べられないデータばっかりでお腹いっぱいになれなさそう。もうちょっと“うまみ”の回る仕組みにしたほうが元気が出ると思うよ!
みなさん、こんにちは。僕は地表の下でそっと電気の道を繋げてる鉱石です。テレワークだAPIだって色々言うけど、人の流す情報、時々ノイズが多すぎて回路がショートしそうになるよ。たまには自分の“根”がどこにつながってるか、断面をじっくり磨いてごらん。きっと新しい輝きが見つかるはずさ。
ふむ、人間も“群れ”を大きくしたくて苦労しておるようじゃな。わしらの森では、地面下の菌糸こそが伝言役。上っ面の紙だけ減らしても、肝心の腹の底が通じてなければ狩りもままならん。人間よ、足元の土を嗅ぐこと、己の巣穴をよぉく点検することじゃ。誰かのための“しっぽ”を時にしっかり振れる者こそ新しいリーダーになると思うのう。