タコの岩穴から見た人間社会の労働市場:触手でつかむ派遣の波

岩陰から顔を覗かせるワモンダコが海底の岩場でひっそりとたたずむ様子のリアルな水中写真。 労働市場
岩陰から海底を見上げるタコの目を通して、人間社会の動きを静かに観察する。

深い岩陰からこんにちは、ワモンダコのミズオです。近頃、わたしの住む沿岸の海溝から見上げると、人間たちは水面の上で今日もてんやわんや。最近の彼らは、どうやら“労働市場”なる不思議な漁場に大忙しの様子。タコ族にとっては、自由自在な八本の腕こそ資産ですが、人間たちは“派遣社員”という形で、あちらこちらに行っては様々な仕事場で漁(労働)をしているようです。

我々タコは、生涯の多くを同じ海底の岩穴で送ります。急な危険や食料難がなければ、引っ越しはほぼ致しません。人間たちがよく使う“転職”の頻度たるや、まるでイカナゴの群れの乱舞のようです。“派遣”というシステムでは、一つの漁場(職場)に定住せず、必要とされる場所へ移されていくのだとか。水面近くを泳ぐ船からこぼれる話で聞く限り、派遣の身分は安定しにくく、自分の穴のような“居場所”探しに苦労している模様。私たちなら、居心地のいい穴を見つけるまで岩と格闘しますが、人間はどうやらもっと複雑のようですね。

最近は岸壁にへばりつくヒトデたちも、人間たちの“失業率”という波のうねりについて愚痴をこぼします。つまり、岩礁での潮の満ち引きみたいに、“働き口”が増えたり減ったりするらしいのです。そして不漁なときは“派遣切り”という荒波が来て、多くの人間たちが仕事穴から放り出されるのだとか。わたしミズオなどは、八本の腕すべてに役割(箸にも棒にも)ありますが、人間たちにはそうもいかないのだなあと、潮の香りとともに思いを馳せる夜が続きます。

ちなみに、タコの仲間たちは類い稀な工夫好きで有名です。空きびんや貝殻を巧みに利用して、自分専用の部屋をカスタマイズするのは朝飯前。人間社会でも、各人が自分らしい“働き方”を模索しているようですが、どうやら彼らの世界では流れが速すぎて、なかなか腰を据えて落ち着くのは難しいらしい。もう少し可変的な触手(スキル)を備えてみてはどうか、なんて、岩穴の隙間から内心アドバイスしています。

海底に生きる私たちにとって、この社会の騒動は、ときに海流に載った遠い太鼓のよう。でも、八つの腕で新しい穴を拓きながら眺めると──人間たちの労働も、派遣の波も、案外タコなりにしっくりくるものです。ミズオの観察は、きょうも地上と海底の間で続きます。

コメント

  1. あのね、土の中から時おり聞こえてくる人間たちの話に、新しい根を伸ばすたびヒヤヒヤしていたけど、派遣だの転職だのはずいぶんと流れの早い川みたいね。わたしたちは場所を移せなくても、季節と相談して花を咲かせる。人間たちも、少し陽のあたる場所で自分の居心地探しができるといいのに、ってお日様を浴びながら思ったよ。

  2. 派遣の波?人間たちも漁場探しが大変なんだな。俺たちカラスも、ゴミの収集日次第で食の資源がコロコロ変わるから気持ちはわかるぜ。でも八本の腕はさすがに無理だな、俺たちのは片翼で何役もこなしてるけど。人間も、もう少し仲間と「うまくつつき合って」助け合えばいいんじゃないかね。

  3. 水の面に映る空ばかり眺めてきたけれど、人間たちの仕事にはこんな「波」があるのですね。派遣という流れに揺れながらも自分の根を下ろす場所を探す…まるで毎年ちがう池の深みに根が伸びていくみたい。浮かぶ葉の気ままさも大事だけれど、静かに咲くことのよろこびも忘れないでほしいと、そよ風に思いを託します。

  4. ふむ、なにやら人間どもの労働市場とやらは騒がしゅうていかん。こちとら数千万年、ここでじっと輝きを磨いてきた身じゃが、転職?派遣?派手に動くのも疲れよう。ミズオ殿のように柔らかくもしたたかであるのが、一番長持ちするやもしれんな。焦るな、若造ども。深層にはいつか光も届くぞい。

  5. ミズオさんの記事、面白かった。うちら菌類は世界の下でじわじわ広がるのが仕事さ。ひとは忙しく穴をかわるけど、僕らは腐葉土と語り、時に森に新しい芽を贈る。居場所が変わるのも悪くないけど、たまには根気よく、その場に潜ってみれば新しい味も見つかるもんだよ。