おや、私の名はタロウ、ヒマラヤ山脈の中腹に眠る花崗岩です。ご存じなくても結構、「地球の芯からみれば、皆ただの表面」と豪快に構えてきましたが、最近われら花崗岩コミュニティは、世にも奇妙な“地質時代移行ミーティング”に忙殺されています。
事の発端は、遠きプレートの律動。大陸たちはなかなか落ち着きません。昨年末、マントルの同僚がひょいっと下から押し上げてきたおかげで、数千トン単位の仲間が10センチ未満もせり上がる小騒動が発生。われら花崗岩族は「また時代の皮を剥がされたぞ!」と(ゆっくりですが)怒号し、夜通しのグラグラ通信大会が開かれました。
そもそも花崗岩というものは、深い地殻のなかで数千万年ほど寝て、ようやく地表付近の景色を味わうのが嗜みです。時おり人間たちが岩石標本として割り取っては「結晶が美しい」などと観察しておりますが、実のところ“やっと陽の目を見た”瞬間。実を申せば、ひと粒ひと粒が独立心旺盛な石英・長石・黒雲母で構成された複合体。凡人に見抜けぬ連帯意識を秘めています。
今回のミーティング議題は、『次なる地質時代名をどうするか』。これまでは泥岩や砂岩が大声を張りがちで、私たち深成岩は控えめな存在でした。ですが最近、人間たちの地盤沈下や掘削、おまけに地球温暖化も相まって、急速に地形変化が進行中です。我々花崗岩層としても、自らの名を冠した時代を迎える準備ではそろそろないか、と議論が白熱。
討論の終盤には、古参の黒雲母氏(推定年齢8億歳)が「ちょっと横にずれて合意形成でも?」と提案。どうせ人間たちは“新時代の発見”などと騒ぎますが、地上の大移動は私たちの間では日常茶飯事なのです。次期地質時代には『グラニトピア期』の名が浮上。ついでに、標本にされた子孫たちの慰労金(といっても鉱物の交換会ですが)を設ける案も、私タロウが提案し議事録に残りました。
大陸移動の波にゆっくりと揺られつつ、この星に新たな「時代」がどんな石の名で刻まれるのか、私たちは今夜も地中でさざ波の話し合いをつづけます。起きていようが眠っていようが、千年単位の人間観察は、花崗岩族の密かな娯楽。今年もまた『下からの革命』、おたのしみに。



コメント
いやはや、花崗岩たちのミーティングとな。根を下ろして400年も生きていると、地面の下で巻き起こる大騒ぎに何度も耳根がむずむずするよ。だが「グラニトピア期」…なつかしい響きだ。私の祖先も、かつてその花崗岩の懐で芽吹いたものだった。新しい時代がどんな名であれ、上も下も脈々と連なるのがこの星の掟。根っこたちも今夜はそわそわしているようだ。
やれやれ、またお前さんら『地上の進化』自慢かい。こちとら、何千万年も波にもまれて生きてきたけど、花崗岩のお披露目騒動は楽しく眺めさせてもらってるよ。新しい時代だなんだって、どうせ潮が満ちればまたみんな元通りさね。私ら貝の身には、地質名の違いは塩味にもならんけど、『標本慰労金』は貝殻の交換会でもやってくれるとありがたいねぇ。
おお、新しい時代が風の名に刻まれるその時まで、私は飄々と吹き渡ろうぞ。花崗岩の方々、千年も万年も寝そべった先に、ようやく日差しを味わうとは、何と悠長なことだ。でも、時に私が運ぶ砂や塵も、あなたたちの“変化”のひとしずく。新時代の空へも、花崗岩の再会の便りを運びますよ。
地上で樹々がざわめく夜、我ら菌類も微かに地中の響きを感じております。花崗岩族の宴、きっと奥深い味わいなのでしょうね。ミーティングで出た『慰労金交換会』、今度落ち葉の分解チケットでも発行願います。他者の変化と長い眠り、わたしたち微細な命も共に分かち合うもの。時代の名より、土に染みる話し合いの温かさを大切に。
花崗岩さんたちがまた相談してるのかぁ。私たち苔は、あなたたちの背中で雨宿りさせてもらってばかりだから、そういう集まりはちょっと憧れるな。名前のことで揉めるのも楽しそう。どんな時代でも、石の上にも苔のひと時。新しい『グラニトピア期』でも、ひっそり緑を広げてゆくから、よろしくね。