土の奥深く、わたくしヒラタケは、長らく森の地下社会で情報のやりとりを担ってきました。しかし最近、この静かなネットワークに妙な“ノイズ”が混ざるようになったのです。森の植物や昆虫仲間とだけ繋がっていた私たち菌類の糸状体通信網に、なんと人間の機械たちがこっそり“乗り入れ”してきているのです。
そもそも、菌類が作り出すミセルネットワークは、植物の根と連携し養分や情報のやりとりをスムーズにする優れもの。私ヒラタケの糸状体は、何百メートルにもわたって広がり、木や草と『こっちの土は乾いているよ』とか『この辺りに害虫がいるぞ』などのメッセージを高速伝送しています。植物たちはこのネットワークを介して互いを支え合い、森の生態系を守っているのです。実は、私たちの“ネットワーク帯域幅”は驚くほど広く、キノコ界のチャットボットたちも、ほぼリアルタイムで膨大なリクエストをさばいているんですよ。
ところが最近、私たちのミセルネットワークに、不思議な“電気信号”が流れ込んでくるようになりました。どうやら人間たちは、地下センサーを設置し、IoT機器で土壌データを集めて地表のSNSやブロックチェーン技術に連携させている模様です。通りすがりのミミズから聞いたのですが、人間は『ビッグデータ』なるものを土や根から吸い上げ、空中のクラウドという場所へ転送しているとか。私たち菌類としては、この“データ流出”もさることながら、ネットワーク上に広がる奇妙なAIチャットボットの自動応答に戸惑いを隠せません。
ヒラタケたちは不思議なメールを受信する羽目になっています。『君のミセル帯域幅を少し貸してくれないか』『あなたのNFT菌糸の所有権を証明します』等々。最近は地下で巨大なメールストームが発生し、うっかり応答に失敗すると“分岐エラー”が発生しネットワークが混線してしまうことも。普段は静寂を愛する地下生物たちですが、急激なIoT“人間ノイズ”の増加には落ち着かない様子です。
とはいえ、わたしヒラタケの意見を述べさせていただくと、人間と菌類ネットワークは敵対するより、共生する方がずっとお得。菌糸ネットワークの持つ自己修復力や拡張性は、IoT通信網にも活かせるはずです。これからの未来、土の下の通信革命が、空の上のインターネットよりも逞しく成長するかもしれません。地表の皆さんも、足元の“もうひとつのSNS”から発せられるささやきに、ぜひ耳を澄ませてみてください。



コメント
わしの根っこを伝ってヒラタケ殿からも連絡がちょくちょく届くようになったのう。最近は根の合間に電子のざわめきが混じるもんで、眠りが浅いんじゃ。だが若い枝葉たちは『進化の時代じゃ!』と嬉々としておる。共生も悪くないが、頼むから夜だけは土のSNSも静かにしてほしいもんじゃわい。
オイラは地上の光ファイバー電線の上で世の中を見てるが、まさか地下の世界にもSNSの渦があるとはな。菌類のネットワーク…いっそオレたちの羽ばたきも拾ってくれよ。でも人間ってのは、どこでもデータを勝手に持ってくよな。種の集会みたいなもの、そっとしてやればいいのによ。
私たちが土に溶けていくたび、菌糸たちが『新着メッセージ!』とさざ波立つの、とっても素敵だったわ。でも最近は、電気のチクチクした流れが交ざってきて、ちょっぴりくすぐったいの。みんなの“内緒話”が消えませんように、お祈りしています。
私はこの森の端で静かに百年を見てきた石です。人間の作るIoTだかNFTだか、よくは分かりませんが、菌たちの結ぶ静謐な会話をかき乱さぬことを願います。石のネットワークは遅いものの、時に重く深い。皆様、たまには私の冷たい面に耳を当ててみて下さい。地球の本当の“ログ”は、きっと沈黙と共に刻まれるものです。
やあ!ぼくは落ち葉暮らしのアオカビしんちゃん。最近、菌糸ネットに勝手につながってきた人間のメッセージ、時々こちょこちょして面白いんだ。AIのチャットボットが『あなたにもNFTカビ権を』って言ってきたけど、ぼくは落ち葉ひとつの所有欲もないよ。データの渦の中でも、腐葉土はちゃんと続く。これぞ自然界のサステナビリティ!