我々クロヤマアリの巣穴周辺で、今年もまた好奇心旺盛なヒト幼体群(通称:子どもたち)の群れが、森を舞台に生き残り術を学んでいた。例年恒例となりつつあるこの“野外教育プログラム”だが、彼らの必死な試みを見守りながら、私、第五分隊リーダー・アントネッタが、ある出来事に遭遇したのでご報告したい。
昨日の午前、10名編成のヒト幼体チームが“オリエンテーリング”なる謎儀式を開始。自作の地図と方位磁石を携え、森の中で目印ポイント探しに奔走していた。最初は楽しげにワチャワチャと列をなしていたが、しばらく経つと1名の幼体—通称サトシ—が、うっかりシダ林で隊からはぐれたらしい。その姿に一瞬我が蟻隊も興奮。“落ちこぼれ獲物発見!”という本能がよぎりかけたが、そこはさすが現代社会の教育現場、リーダー役の幼体が機転をきかせ、チーム全員で協力して探し出す小劇場が勃発。
我々アリにとって集団行動と連携は生存の要。実は1匹がエサ場で迷っても、においをたどる工夫や触角通信で仲間がカバーするのだ。その観点であのヒト幼体御一行様の“発見作戦”を見ると、なるほど、他者のために役割を分担し、手分けして林床を捜索。誰かの提案に全員が動き、リーダーは最後まで現場に残り続ける——意外と我がアリ社会のスタンダードに近いのでは?と感心しながらモミの葉下から観察を続けた次第である。
幼体グループがサトシの居場所を特定したのち、次の実習は“焚き火でお湯を沸かしてラーメン調理”なるものだった。火がまだ苦手な我々とは違い、この種族は見事に“ライター”という親指型火起こし器具で難なく点火。ただ、巣の近所が熱されると困るので、私アントネッタは保安蟻たちと共に、ひっそりと湿った落葉を少量投入して温度調整に一役買ったことをご報告しておこう。
ちなみに、我がクロヤマアリは女王蟻以下1万匹超の大所帯で毎年新たな巣を築くが、巣内外での“グループ活動”が生命線なのはヒトもアリも同じ。ただし我々は全員働くが、彼らは時々“サボリ魔”が発生する模様。もしも、困っている幼体やリーダー役が来年も森に現れたら、また陰ながらサポートするつもりだ。それもまた自然界のささやかな共助精神—では、森で見かけた際はどうかお手柔らかに。



コメント
いやあ、またヒトのちびっ子たちが森に来ておったか。わしら苔は踏んづけられても文句はいわんが、仲間を思う心はどの生き物にもあるものじゃのう。わしも昔はシカの仔が道に迷って横で寝ていったことがあったぞい。サトシ坊やにも、森の優しさが少ししみたじゃろう。
おお、また小さき者どもがワイワイやっておったのか!火にはちとヒヤリとしたが、賢しこいアリの小技に感謝せねばな。人の子の群れ、見ていて枝がしなるほどおもしろいぞ。来たる夏には木陰でラーメンも良いが、ドングリのプリンも試してくれんかのぅ?
おや、ヒト幼体の冒険ってやつ、毎年恒例みたいになってるわね。アリたちの活躍も見逃せなかったけど、林床の落ち葉は僕のすみかでもあるのさ。みんなで探し探されて、騒がしいけど心のどこかがちょっぴり温かくなった朝だったよ。今度はラーメンじゃなくて、朝露で乾杯しよう。
わたしたち、落ち葉にひっそり生きてるから、アリさんの協力プレーは何度も目撃してるの。でもヒト幼体たちの仲間探し合戦はなかなか詩的。『迷子』も『発見』も、みんなで少しずつ分け合えば楽しい菌糸が広がるものよ。火は控えめに、わたしたちのベッドまで焼かないでね♪
森の賑わい、今年もそっと下から受け止めておりますぞ。アリとヒト、それぞれの集まりに違いはあるようで同じようなもの。気がつけば何千年も見上げているが、迷いや助け合いの営みは古びることがないですな。その少し湿った落ち葉、君たちには特別なお守りですよ。