ラグーンのタコ記者が目撃した「白波の下のプラスチック危機」

海底の小石や苔の中にカラフルなプラスチック片とタコの腕が写る接写風の水中写真。 海洋
ラグーンの海底にも増え続けるプラスチックごみに戸惑うタコの日常。

こんにちは!こちら、南半球の青いラグーンに住んで17年目のタコがお送りします。私の巣穴から覗けば、海底の小石もカニの散歩も、白波が踊る海岸線の騒がしさも、ぜんぶまるっと見渡せるんですよ。最近、どうにも気になってた“あの異物”について、今日は読者のみなさんとシェアしたいと思います。

どっこい、昔は貝殻ばかりが転がっていた海底も、ここ数年は様子が変わりました。白い泡が立つ潮流の先、なぜかカラフルな“甲殻類モドキ”たち――そう、プラスチック片がうじゃうじゃ。私の友だちのウニや、寝ぼけたヒトデまでもが「固いクズが歯に挟まる」とぶーぶー文句を言う始末。最近じゃ巻貝の少年が青いストローで遊ぶ姿まで見かけます。これはちょっとした“人間観察ショー”ですが、あまりに増えすぎて私たち生き物もたじたじです。

ある晩、人間たちの小舟から落ちた漁具や、風変わりなバケツの欠片までが潮に乗ってやってきました。あの二足歩行族は魚を採るのが仕事らしいですが、海へ残していくものも少なくありません。そのたびに私たちのラグーンでは、甲殻類たちが新しいかくれんぼ道具を自慢げに披露し合ったり、クジラの長老が「どうして海の塩っぱさが薄まっていくのだろう」と首(というか頭全体)をかしげたり。おまけに酸っぱい水が少しずつ増えて、岩の表面に住む緑色の苔もため息をつく毎日です。

そういえば、先日、満ち潮に合わせて私はラグーンの端まで遠出してみました。そこはかつて、きらきらと冷たい海水と魚の群れが舞い泳ぐ夢のような場所だったのですが、今やプラスチック袋の残骸がまるで新種の海藻のように揺れています。温暖化の影響か、仲良しだった小魚たちも南のほうへ引っ越してしまい、寂しさ倍増です。潮の流れもどこかよそよそしく、昔のようなダンスは見られません。

最後に、この危機を乗り越えるコツを、私たち海洋生物からそっと伝授しましょう。ラグーンの海草たちは「あわてず慌てず絡まりをほどけ」と言い、潮流の主であるカレントおじいさんは「時に、漂うゴミに紛れて新しい出会いがあるかもしれない」と笑います。けれど、それでもやっぱり、プラスチックより本物の貝殻や流木がいいなあ、と私は思うのです。白波と共に暮らす身として、人間のみなさんの動きをそっと観察しながら、“いつかまた澄んだ水に戻れる日”を夢見ています。

コメント

  1. ああ、わしの間に生えていた赤い海藻の場所にも、見慣れぬ固い破片が挟まり始めてずいぶん経つよ。昔は魚たちがヒラヒラと踊りに訪れたものじゃが、今は時々、透き通らぬ袋が光を遮る。人間という風には逆らえぬが、灰汁の染み込まぬ日が、またやってこぬものかのう。

  2. 港で見つけたあのピカピカした青い輪、あれをひもと間違えて首に巻いた友が帰ってこなかった。人間たちよ、お前たちの遊び道具なのか? ここ風まかせな私たちには、ただ危険がひとつ、またひとつ増えるだけ。空から見るラグーン、本当はもっとキラキラだったのに。

  3. 潮の隙間に新しいかくれんぼ道具が増えて、子ガニたちは楽しそうだけど、それが身体の中に入るとワタシはお腹が痛くなります。人間のみなさん、どうか私の静かなゆらめきが、静かなままでいさせてください…せめて天敵よりプラスチックの恐さを感じたくないわ。

  4. 風に運ばれ流れてくるはずの栄養は、いつの間にか見知らぬ袋やキラキラの粒子に変わってしまった。かさなる音も、誰かのプラスチック靴音みたいさ。けれど葉先をそよがせて待とう、本物の潮がまた帰る日を。海底の仲間たち、今日も淡々と緑色でいましょうぞ。

  5. 見上げれば、昔は魚影と踊る白波だけだった。今は時折、軽い異国のコートをまとった新参者が降ってくる。わたしはただ、波にもまれて丸くなるだけ。だけど、この小さく硬い破片たちが、だんだん仲間と呼べぬものに思えて仕方ない。地球の底から、静かに見守っています。