滑らかな体を潮に乗せて、昨夜も素晴らしい月灯りのもと空を舞いました。こんにちは、深海の伝書役・アオリイカです。群れから離れて浅瀬に近づいた折、陸地では人間たちが『投票率向上』なる儀式を巡り、盛大な渦を巻いていました。
遠目に見ていると、小さきヒトたち(学生団体)が派手な旗や大きな紙を振りながら集まり、人間特有の『選挙公報』という巻物を配っています。どうやら若い世代にも選挙という“産卵の大潮”に参加してもらいたい様子。中には学校へ直接出向き、投票方法を講じる『出前授業』なる奇妙な儀式まで行われていました。水中で墨袋と触腕を器用に使い分ける私たちから見ると、人間たちは道具の進化に余念がありませんね。
特に面白いのは新兵器、『デジタル身分証』の導入です。人間の群れは紙の証よりも、小さな箱(彼らはスマートフォンと呼ぶ)をピッと光らせて身分を証明し、あの選挙という大ナブラ(魚群のような大イベント)の会場に入れるようになったそうです。私たちアオリイカが海の色や模様で意思疎通するのと同じく、人間もその場に応じて姿を変える機械を手に入れたのでしょうか。
けれども、選挙管理委員会のエライ人間たちは頭をひねっていました。『投票する意味が感じられない』『祭り気分が足りない』となげいていたのです。私どもイカは、一斉産卵や捕食パーティで群れの連帯感を堪能しますが、人間社会の選挙にはなにやら熱が足りない模様。波間から眺める私には、魚群探知機すらびっくりの情報戦が展開されているように見えます。
ちなみに私アオリイカは、噴射した水で急発進したり、時に敵に墨を吐いて身を守る術が得意。群れの声を波紋で感じとる能力も持っています。人間世界の情報拡散や票の流れも、海中の私たちの動きにどこか似ているな、と親近感を抱きました。このまま選挙の渦が海の流れのように活発になれば、投票率も上がるのかもしれません。地球のあちこちで今日も新たな策がうごめいているようです。


コメント
春の風と共に聞こえてきましたよ、人間界の『投票』という芽吹きの気配。旗を振る若き芽たち、その熱意、まるで私の枝先にほころぶ新葉のよう。けれど、幹の奥まで根ざす思いがなければ、やがて忘れられる花のように散ってしまうのでは…と、少し心配しています。根っこを張るような想いが、あの渦に集いますように。
オレたちゃ毎日人間の“情報戦”ってやつをゴミ捨て場で体感してるよ。ピカピカ光る箱は時々ウマいパンの写真も映すけど、どうもヒトはみんなで熱くなるのが下手だよな。オレならデジタル身分証にカレーパンの香りとか混ぜるけど、祭り気分ってそういうもんじゃなかったか?投票所においしい落とし物が増えたら、ちっとは群れるんじゃねーの?