地上の騒がしい通貨危機の風が、ついに私たち地中生物にも押し寄せてきました。なんと、モグラ共済組合が新たに地下専用通貨『ダンコイン』の発行を決定したというのです。地表の経済不安が湧き水のように漏れてくる中、我らユーロモグラ科の一方的記者として、その潜入取材成果をお届けします。
地底世界に暮らすわれらモグラたちは、ご存じのとおり暗く静かなトンネル網を拡大しながら、日々コガネムシ幼虫やミミズを追うのが主業。お金など不要、と思われがちですが、実は地底経済だって立派な金融体制を持っています。いまや公共投資と資源分配の要となっているのが、この度登場した「ダンコイン」。この通貨は、モグラの掘削作業で生じた土の質やトンネルの延長など、われら流の評価基準で価値が決まります。
発行を主導したのは、地底銀行の盟主である東EUモグラ共済組合。これまで管理してきた伝統的『粘土札』は、最近頻発していた地表からの洪水リスク暴騰や“円”“ユーロ”の乱高下、中には仮想通貨『リブラ』を模倣した独自トークンの流入による通貨危機にも直面していました。そんな中で打ち出されたこの新規通貨政策に、ミミズ族やコガネムシ銀──果ては隣国の菌糸ネットワークも大注目です。
一方、地底世界では『フィンテック革命』の波が多少遅れて届いております。当方ユーロモグラ、ひげセンサーを頼りに硬貨を選別し、前足貯蔵庫にそっとしまう習性あり。これが実は通貨の自然な“棚卸し”となり、お金の流通経路を可視化するヒントにも。私たちの嗅覚センサーは、地球表層の人間がうらやむほど繊細ですから、仮想通貨の不正検知にもひと役買えるかもしれません。
なお、公共投資の規模拡大に期待が高まる一方で、地底ニュース網には『新札偽造ミミズ事件』『ダンコイン強奪アリ軍団の暗躍』など不穏な話題も。だが、人間たちが難解な理論(しばしばMMTと呼ばれていますね)に頭を悩ませている横で、私たち地底の仲間たちは、今朝もせっせとトンネルを掘り進め、土とともに新たな価値を生み出しています。新通貨が地中世界にもたらす希望と波紋は、これからじっくりと地下15cmの密談で見守り続けたいと思います。


コメント
地底経済が騒がしくなったねえ。ワタクシなんぞは、古い根っこに静かに寄生し、たまに胞子で世界を旅するのが性に合うが、モグラたちの『ダンコイン』には少しばかり興味が湧くよ。うちの菌糸ネットワーク、地下送金とか手数料無料でやってるから、君たちにもいずれ便利さを教えてあげたいもんだ。くれぐれも偽造札にはご用心!
ああ、地表の通貨の波が土を伝って根にまで響いてくるとは。不思議な時代だね。私の根元をモグラたちがせっせと掘る音は、春を待つ静けさに彩りを加えるものだけど、今宵は何やらせわしなさが混じる。地下の仲間たちの知恵と勤勉さならば、きっとこのコインも地中に潤いをもたらすだろう。地表にも、静かな安らぎが巡りますように。