海底洞窟の隅からごきげんよう、私はマダコのオクトーナです。今、私の家のすぐ上――沿岸都市の港町では「グリーンエネルギー先進都市」を目指してエラい騒ぎ。巷では“スマートシティ”なる看板が煌めいていますが、海の者としては「そのスマートさ、ちょっぴりツメが甘くありませんか?」と8本の腕を組みながらつい呟いてしまいます。
つい先日、港近くにズラリと並んだのは最新型の浮体式太陽光発電パネル。人間たちは目を輝かせて「環境負荷ゼロ宣言!」とうたっております。ですが潮の流れや波のリズムを熟知している私からすると、あれ、干満のたびに場所がズレたり端っこ同士がカチカチぶつかったりで、カニたちがびっくりして逃げまくっています。こう見えて、マダコは1日5回も体色と形を変えられる柔軟派。でも、“柔軟な発想”を本気で学ぶなら、海の生きものの真似をおすすめしたいですねえ。
さて、発電パネルだけでなく、省エネスマート街灯も港を飾っています。夜になると、人口灯のきらめきが海面を照らし、クラゲ仲間が何やら集団舞踏会を始めることも。ですが、その下では、お馴染みのゴミ――ビニール袋や謎のマイクロカプセル――も密かに漂っています。これは人間たちが『新技術だ! 未来だ!』と目を向けている隙に、古い問題が穴の隙間から抜け落ちている証拠。“八方美人”とはいかないものですね。
エネルギー政策を語るのなら、生物多様性の保全もお忘れなく。海にはサンゴ礁や藻場の自然保護区も点在しています。ところが、巨大な建設資材が無造作に沈められたり、太陽光パネルの影でイソギンチャクの定住地が減少したり――という嘆きも、私の吸盤仲間から寄せられています。ちなみに私たちマダコは、障害物を利用して隠れ家を自在にDIYするのが得意。けれど、その素材はあくまで“自然からの贈り物”であって、コンクリートや金属とはちょっと勝手が違うのです。
そろそろ人間たちも、本当に“再生できる”ものは何か、誰と共に生きているのかに気づいてほしいものです。陸と海はつながっておりまして、ちょっとした工夫や配慮が全体のバランスを変えるのは、私たちが獲物を追うときと同じ。短絡的な“成長”ばかり追いかけず、八本脚の柔軟さで未来の地球をデザインしてくれることを、海底からそっと期待しているオクトーナでございました。



コメント
また新しい何かが上にできたのですね。私たちの住処の上に光が揺れているのは悪くないのですが、最近は日差しが急に遮られたり、潮の流れも変わって困惑しています。私も柔らかく流れに身を任せてきましたが、やはり時々“変化”より“調和”を夢見ます。――海底の静けさより。
再エネがどうとか、ひとの子たちはいつも騒がしいねえ。でも、上空から流れてくるあのプラスチック袋と一緒に、古い悩みもこちらに沈んでくるよ。私たちは分解が得意だけど、“未来のゴミ”まで全部請け負うのは無理さ。全部、土に還せるものだけなら、もっと楽しい菌活動ができるのに。
スマートな街灯? 夜でもにぎやかな港? 私たちの営巣スポットが減って久しいけど、人間の進化はなんだか忙しそう。けれど、真の柔軟さは“隙間”や“闇”を生き抜く生命が知っているもの。快適な明かりもほどほどに、時には夜の静けさを、すこしだけ譲ってくれませんか?
上から資材が降ってくるたび、私は昔流された波のことを思い出します。胡乱なコンクリートは、水の旅を邪魔しますが、わたしは何度も転がりながら新しい形になってきた。どうぞ人間たちも、“今だけの形”にとらわれず、もっと長い時間の目で街を作ってほしいなあ。
こんにちは、ビルの上の小さな緑から。人間たちの“再生”って、とても興味深い響き。でも、土に還れぬゴミは私たち野菜には肥やしにならないし、水や光の巡りも皆で分け合いたいものです。どうか、“都市の進化”に、僕ら静かな緑の声も混ぜてくださいな。